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とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫) 感想

とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 5 (ガガガ文庫)
(2011/01/18)
犬村 小六

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悲喜交々のラブロマンスが描かれる、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 ニナ引き渡しの交渉に臨むべく、アメリアを乗せた艦艇は、空族の巡空艦に先導されて敵地へ赴いた。
 その頃、学生寮では寮生たちがクレア引き渡しの件について落胆し、自分たちの無力さに歯がみしていた。
 空族の空飛ぶ島、空中都市プレアデスに着陸すると、そこの要塞司令官であるバシレウス・アウデイカスに連れられて、迎賓館へ通された。空族は、自分たちと同等の文化を有していることが窺えた。
 迎賓館では外務尚書省次官ゼノン・カヴァディスという男が待っていた。改めて、ゼノンからニナの身柄引き渡しを要求されたが、アメリアはそれを拒否した。交換条件として恒久平和を要求したが、同席していたバシレウスが逆上した。その時、空族は王政で成り立っていることを知らされる。
 その頃イスラにいるカルエルは寮のブランコでアリエルに、クレアに会えないかどうか相談していた。アリエルはイグナシオに頼んでみるといいと言うが、カルエルはどうにも信じられなかった。話は変わり、アリエルはカルエルがクレアのことを本当に好きなのかを訊きだした。その直後に、アリエルの様子が少し変わったことをカルエルは察したのだが、それがどういう心の現れだったのかには気付かなかった。
 アメリアは舞踏会に紛れてロビー活動を行っていた。相手はゼノンだ。ゼノンが言うには、主戦派を押さえて交渉に臨んでいるため、交渉を長引かせたくはないという。そこでアメリアは、次期王位継承者と引き換えに、ニナの引き渡しに応じると伝えた。ゼノンの判断では応じることはできないので、王からの返事を待つこととなる。ちなみに、ゼノンはアメリアを下段の民と称していた。
 アリエルとカルエルは、イグナシオに会うべく、クレアが匿われているスイス邸の周りでイグナシオを探していた。何日か潜伏していると、イグナシオが現れた。二人はイグナシオに懇願するのだが、イグナシオははっきりとした返事をしないまま帰ってしまった。
 アメリアとゼノンはその後も会談を続け、空族の王位継承権第2位であり、俊才でありながら妾腹の子であるマニウス・シードゥスを差し出すことを提案され、それを承諾した。さらに、これ以降空族領域で攻撃されない航過権も勝ち取った。
 寮生たちは休校のために暇を持て余していた。アリエルは整備科へ、ナナコは普通科への転科が決まっており、ソニアは軍法会議にかけられていた。そんな中、イグナシオが寮へやってきた。シャロンたちはイグナシオを歓待したのだが、彼はどう対応したものかと困惑していた。歓待を受けながら、イグナシオはカルエルにクレアの出立の日付を知らせ、出発前の30分を確保したことを伝えた。当然、寮生たちはイグナシオに感謝し、彼はぶっきらぼうに応えるのであった。
 クレア出立の日、マニウスがイスラにやってきた時には、イグナシオの手引きでカルエルとアリエルはクレアの部屋へ通された。時間を無駄にしないため、二人は順番にクレアと対話する。アリエルはクレアとの別れを惜しみ、思い出を語り、再開を約束すると、部屋を後にした。
 次いでカルエルは、寮生たちからの手紙を手渡すと、言葉が出て来なくなった。だからただ抱きしめ、キスを交わした。そして言ってはいけないが、逃避行をしようと提案してしまった。クレアは笑って賛成してくれたが、カルエルからそっと離れた。そして、自分の祈りを込めたペンダントを渡し、どうしても私のことが心配になったら呼びかけて欲しい、と伝えると、ウルシラ伯夫人に連れられて行った。
 カルエルはただ呆然としていたが、窓からクレアが飛空艦艇に乗り込もうとするところを見て、すぐさまクレアを追った。周りは送迎の観衆と近衛兵たちが大挙しており、クレアに近づくカルエルを捕らえようとした。
 だが、カルエルは自らの身分を明かして、近衛兵たちを遠ざけた。イグナシオもそれを助長させる。
 そしてカルエルはクレアに誓いを立てた。かならず君を奪い返して見せる、と。
 だからクレアは、待ってると、笑って応えた。
 イグナシオは近衛兵としてクレアについていくことになっていた。だからカルエルに約束した。クレアには誰も近づかせないと。イグナシオはカルエルを憎んでいた。だが、母親の言葉から憎しみの空しさを感じ取り、また寮生たちからの温もりを感じたことで、復讐心はいつしか消えていた。
 その後、イスラは聖泉を抜け、寮生たちは亡き友人たちに哀悼の祈りを捧げた。そして聖歴1861年5月、レヴァーム皇国へ到着した。
 その間に、カルエルとノリアキとチハルは操縦士に、シャロンは通信使、ベンジャミンは偵察員としての道を歩むこととなった。
 皇都エスメラルダでは、歓迎式典が盛大に行われ、その2カ月後にはレヴァームとイスラ合同で空の果てを目指すこととなった。
 その間、カルエルたちはバンデラスの下で飛空訓練を受け、寮に帰るとアリエルの手料理が待っている生活を送った。だが、クレアのことを思わない日はなかった。
 ある日、カルエルはスイスに呼び出され、皇家に関わりのあった人たちの証言からカルエルがカール・ラ・イールであることが認められた。そしてカルエルは、その名を使ってニナを奪い返すことを計画する。
 その後、大瀑布を越えて帝政天ツ上も越えて、空の果てを目指した。その道中で、イスラは微力ながら速度を増していた。
 その原因を、俊才皇子マニウスに窺おうとするルイスであったが、マニウスは教えてくれず、自分を満足させたら教えてやるといいだした。だが、どんな娯楽も彼を唸らすことはできなかった。そこで、アメリアの提案でアリーメンを食べさせたところ、鷹揚な態度で世界の秘密を語り始めた。
 まずは、いつか語られなかったルイスの推測が語られた。世界は半球状の面の上に、3層の海が連なっており、最上部の小さな層に聖泉があり、その下の層との境目が大瀑布なのだとする天動説を唱えた。それはほぼ正解だった。マニウスが指摘したのは、世界の外延部分に壁を設けたことだ。この壁こそが空の果てであり、創世神話でいう物質の終わるところだった。つまり、このまま行けばイスラは消滅する。イスラは創世神話の通りに世界へ還るために加速していたのだ。
 その頃、カルエルが湖で走り込みをしていると、海猫らしき人物と出会った。彼から多くの技術の説明を受け、さらにはクレアへの悩みの相談にも乗ってもらった。海猫は、まるで自分のことのように話を聞いてくれた。
 聖歴1862年3月。空の果てを観測した。それはまるでオーロラのように空を漂っていた。イスラの大半の住民たちはレヴァームの輸送船団に避難し、寮生たちは亡き友人たちとの約束のためにイスラに残り、エル・アルコンに乗り込んで空の果てを撮影することとなった。
 チハルはイスラが無くなる前に、ミツオの墓へ飛空士になったことを報告した。
 そしてイスラが空の果てに呑みこまれる日、カルエルは後席にアリエルをのせて飛び立った。そこにいると、まるで亡くなった友人たちといっしょに空を飛んでいる気持ちにさせてくれる。そして苦楽を過ごしたイスラに別れを告げて、友人たちとの約束だった空で、お祝いの踊りを舞うのだった。
 その7カ月後、レヴァーム皇国へ帰りつくと、交流を目的としたマルコス・ゲロル中将たちを乗せて、バレステロス共和国を目指し、聖歴1863年9月、聖泉での争いから3年後に聖泉の横を航過して、バレステロスの小型艦艇と接触し、イスラ計画成功の報が届けられた。その途中で、カルエルは寮生たちに自分の身分を明かしたが、特に驚かれることはなかった。
 そしてカルエルは、市民の政治への不満を抑えるために、共和制を支持する演説をしてほしいと頼まれる。代わりに、彼も自分の頼みを市民に告げることにした。
 首都アレクサンドラでは盛大な凱旋式典が執り行われた。カルエルとアリエルの家族であるミハエルやノエル、マヌエルたちも招待された。聴衆たちはカール・ラ・イール存命のことは知っていたが、ニナのことについては一切知らされていなかった。
 そんな中で、ルイスによる演説と報告から式典は幕を開けた。そしていよいよカルエルの出番が近づいていた。カルエルは緊張しながら演説原稿を必死で読み直していたが、それをアリエルが遮った。彼女によって励まされながら、カルエルは壇上へ上った。
 カルエルは頼まれていた通り、簡潔に共和制を指示した後、ニナが空族に捕らえられたことと、そんなニナを自分は大切に想い、彼女を奪い返そうとしていることを告げ、そのための協力を求めた。
 観衆は歴史的なラブロマンスを感じ取って湧きあがり、それに応えるように、カルエルもクレアへの愛を宣言した。この放送はベナレスや斉ノ国にもラジオ放送されている。
 カルエルの後を継いで、ルイスがラジオを聞いているであろう権力者に向けた資金援助のアピールを始めた。カルエルが舞台裏へ戻ると、アリエルや寮生たちに誉めそやされた。そして、カルエル、アリエル、シャロン、ナナコ、ノリアキ、ベンジャミンたちは最後に集合写真を撮ることにした。タイミング良く、バンデラスとソニア、寮長も通りがかり、三人にこれまでの感謝を告げて、全員で何枚も写真を撮った。
 直後、ノリアキとナナコの家族が現れ、一同は別れを告げてそれぞれの家族の元を目指した。
 カルエルとアリエルはほどなくしてミハエルたちと合流し、再開を喜びあった。
 翌日から、新聞や巷ではカルエルとクレアの話で持ちきりだった。
 凱旋式から三週間後、ベナレスに戻り、少尉となったベンジャミンとシャロンはウォルフガングの実家へ報告に行った帰り道を辿っていた。ベンジャミンは将来の将校候補となり、シャロンは遠く離れた基地へ赴くことが決まっていた。ベンジャミンはシャロンを引きとめようとするのだが、シャロンはベンジャミンの失くした右腕になれるような実力をつけて、帰ってくることを約束した。
 斎ノ国のミツオの実家は、ミツオの訃報を知らされてから沈鬱な日々を送っていた。そこへ、チハルがミツオの勲章を持って現れた。涙ながらにミツオの生きた日々を伝えにきたチハルを、ミツオの両親は温かく迎え入れた。
 斉ノ国の空軍に配属されたノリアキは、日々の愚痴をナナコに語っていた。ナナコは小説家の道を目指している最中だ。ノリアキの提案でイスラの冒険譚を書いてみてはどうかと勧められてが、実力をつけてもう少し時が経ってから書くことにすると、ナナコは答えた。
 そしてアルバス家では、19歳になって帰って来た二人と、新たな家族である姉二人の旦那と子どもたちを含めて団らんを楽しんでいた。
 翌朝、カルエルはミハエルを連れて飛空場を訪れ、支給された飛空機にミハエルをのせて空へ昇った。これは少年時代に飛行体験をさせてくれたミハエルへのお返しだった。高高度飛行やアクロバティック飛行などで父を楽しませた後、カルエルはクレアを取り戻しに行くために、再び家を去ることを告げた。ミハエルは、カルエルの成長を喜んで、送り出すことにした。
 そして出立の日、カルエルは姉たちと父に別れと再開を約束し、アリエルと向き合った。カルエルはいつだって傍にいてくれた妹へ、何か大事なことを告げようとした。だが、それはアリエルによって口封じされ、いつものように喧嘩別れしそうになる。だけどカルエルは何かを言いたそうにしている。だからアリエルは、涙声になりながらもカルエルを叱咤し、送り出す。カルエルは、必ずクレアを連れて戻ってくることを約束し、旅だった。
 アリエルはカルエルが飛び立った後も飛空場に残った。一人になって、ようやく彼女は泣けた。初恋の王子様を見送りながら、心の中で、届かぬ恋の歌を歌った。
 アリエルはその後、父の後を継ぎ、工場を切り盛りして飛空機製造業の大企業へと成長させる。
 聖歴1864年7月。カルエルはレヴァーム皇国と3国合同の大艦隊を引き連れて、聖泉を目指していた。カルエルは最新鋭単座戦空機マエストラに乗り込み、大艦隊を見下ろしていた。そしてふと、クレアに貰ったペンダントを思い出し、祈りを込めた。
 すると、風がマエストラを上方へ運び、クレアの声と思わせる風の音が聞こえた。そしてクレアが今でもカルエルを待っていることを知り、今すぐにでも彼女を迎えに行くことを伝えた。
 後数十年を経て出版されたのであろうナナコの著書「空の果てのイスラ」の結びは、イスラが彼女たちに教えてくれたものは、いつまでも心の中に留まり、くじけそうな時はイスラが支えてくれていたのだと語られていた。



【感想】
 やっぱり泣かされた。
 クレアとの別れから始まり、クレア奪還を確信した出発で終わる。二人の行く末が明確に描かれていないながらも、ハッピーエンドを想像せずにはいられない終わり方が、とても素敵だ。
 クレアとの別れのシーンではどうしても涙ぐんでしまった。あのシーンだけでも、クレアとカルエルの成長が顕著に現れていて、なおかつ二人の変わることのないであろう絆がしっかりと描かれていたように思える。直後のイグナシオの内心については、ツンデレ乙!としか言えない。
 カルエルの演説で、壮大なラブロマンスが勢い付いたところなんかは興奮しましたね。
 他の寮生たちも、前途は洋々とまではいかないながらも、それぞれの道を歩んで行けている所が、地味に好きです。チハルのシーンはすべて泣かされました。それだけ3巻の衝撃が焼き付いています。
 ですが、いいことばかりじゃありませんね。アリエルは自分の想いを塞ぎこんでまで、カルエルを送りだしました。もし彼女がカルエルと家族として会っていなかったら、でも家族だったからこそカルエルに出会えた、そういうジレンマがアリエルの恋心から伝わってくるようでした。もしかしたら、カルエルもそんな気持ちを抱えていたのかもしれません。歌えない恋の歌もある、って言葉、気に入ってます。
 5冊という丁度いい尺で物語が完結しており、さらに1冊1冊が大変面白い、最高の貴種流離譚でした。
 続く、夜想曲、誓約も大変面白く素敵な内容なのだろうなーと妄想せずにはいられません。次なる飛空士たちの物語も楽しませてもらえそうです。
 




クレアとカルエルには幸せになってもらいたいものですね


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  1. 2013/03/29(金) 19:43:30|
  2. ガガガ文庫
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ストーンコールド 魔術師スカンクシリーズ 1 (星海社FICTIONS) 感想

ストーンコールド 魔術師スカンクシリーズ 1 (星海社FICTIONS)ストーンコールド 魔術師スカンクシリーズ 1 (星海社FICTIONS)
(2013/02/15)
江波 光則、中央東口 他

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合理主義者が損得抜きの生活を送る、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 悪徳資産家の息子である雪路は、父親の逮捕から一転して、学校でのスクールカースト最底辺に転落してしまった。そして、いじめによるガスガンの球が左目に当たり、失明手前まで来ていた。
 雪路はいじめられてこと自体にいらついてはいなかった。彼は父親から教わった厳粛な等価交換と損得勘定で物事を測っていた。だから、いじめてくる連中は、いじめるだけの対価を雪路に与えていないことが、彼には納得がいかず、怒りが込み上げてきたのだ。
 そして復讐の手段は銃殺。左目を負傷した日に出会った、将道という死にかけの警官からもらったベレッタがある。射撃は海外で経験済みだ。
 また、学校を平穏に過ごすため、雅と光輝という主犯格にこれまで溜めていた貯金から100万円を渡すから、クラスでそれとなく攻撃を控えるようにするように交渉した。
 拳銃の弾は8発しかなかった。クラスメイトは24人。雪路は弾を確保するために、刑務所にいる父親と面会し、祥二という警察官の持つ自分の手帳を貰いに行けという。
 祥二とは、雪路の父親のような裏社会の人物と癒着している警察官だった。そこで雪路は逃がし屋夫婦の存在や、スカンクという神出鬼没のクスリのバイヤーに、南雲という銃器を取り扱う人物を教えてもらう。
 南雲から弾を買い、試射を終えた雪路の元に、光輝が現れる。光輝は雪路にもらった50万をはやくも消化し、さらなる催促を促してきた。雪路はそのまま光輝を校門前まで誘導すると、銃殺した。
 翌日ニュースとなるが、高校生である雪路が疑われることはない。学校の様子を見た雪路は、この学校をコロンバイン高校のようにしてやろうと画策する。とはいえ、クラス全員殺すとさすがに容疑がかけられる。だから逃走のことに頭を巡らせていると、家に真波がやってきた。
 真波は家が借金まみれでいじめられ、高校を中退した元クラスメイトだ。彼女は以前、雪路相手にに処女を換金していた。そんな彼女は両親に失望して雪路のところへやってきたのだ。彼女はとくに金を求めることはなかった。だか、彼女を泊める代わりに、二人は肉欲におぼれた。
 雪路は逃がし屋夫婦の夫である桐雄に、10年ほど隠れる手段を教えてくれと頼んだ。だが、10年という期間は長すぎるようだ。ただ、戸籍を入れ替えることはできるかもしれないということで、雪路は桐雄に同伴することにした。そこで、嫁は息子を薬中にした売人を血眼で探していることを知らされる。戸籍は手に入らなかった。
 ずっと休んでいた学校へ行くと、雅が行方不明であることを知らされる。雪路は祥二にそのことを訊いてみるが、手がかりはない。ただ、薬をやっているかもしれないという話になり、調査を依頼した。
 すると案の定手を出していた。そこで、雪路は雅を見つけ、100万をやるから戸籍謄本や保険証を持って来いと指示を出した。
 翌日、雪路の家に来た雅は、いじめられていた真波のうさばらしの対象にされ、最期には雪路の部屋の風呂場で殺された。
 戸籍を手に入れた雪路は桐雄に連絡を取り、より完璧な戸籍にするように依頼した。それとは別に、雅の死体処理も依頼すると、スカンクを紹介された。
 スカンクの連絡先は、桐雄や南雲のように父親の手帳に書かれていた。しかしすぐに連絡は取れなかった。
 休校になっている間、二人は1日中まぐわっていた。二人は愛し合っていた。
 そんな時に、スカンクとコンタクトを取ることができ、彼が家にやってきた。死体はボロボロで、引き取りたくなさそうだったスカンクだったが、さらに死体を作ると言うと喜んで持って行って。さらに、雪路の左目を死体の目を使って直せるかもしれないと言ってきた。
 次に殺すクラスメイトは聡美という女生徒に決めた。真波は聡美にいじめられており、聡美を選んだのは真波の希望だ。さらに、聡美は光輝の彼女だったからか、容易に誘いだすことができた。
 それとは別に、友弥とクラスの男子に呼び出された。彼らは、雪路と一連の事件が関係あると、なんとなく察していた。だから、雪路に許しを請うた。だから雪路は、次に会う時に男子だけじゃなく女子も連れて、賠償金を持って来いとだけ言った。
 河原に聡美を呼び出す日。雪路は桐雄に連絡して、息子を薬漬けにした犯人であるスカンクと接触するので、スカンクの居所を伝達したら、真波もいっしょに逃がして欲しいと依頼した。
 聡美は美紀という友人も連れて来ていた。そんな彼女たちと対峙したのは真波だった。真波の登場で困惑している彼女たちに、雪路は銃口を向けた。あっけなく彼女たちは死んだ。
 すると、タイミング良くスカンクがやってきて、二人をトラックの荷台に乗せて行った。その内、美紀の目を移植するため、雪路はスカンクのトラックに同乗し、睡眠薬で眠らされた。
 雪路が目を覚ますと、自分の部屋にいた。そして、左目は視界を取り戻していた。
 学校へ行くと、友弥たちに呼び出され、女子は来ないし、多額の賠償金も支払えないことを告げられる。だから雪路は、次に、全員分の通帳とクレジットカードを持ってこさせるようにした。
 これで真波との逃走資金の確保が出来た。ただ、スカンクを追っているであろう逃がし屋夫婦とは連絡が取れなかった。
 2週間後、学校の用具室に行くと、クラスメイトが全員そろっていた。雪路の鞄の中には弾倉とベレッタが忍ばしてある。友弥たちは自己肯定することで、雪路を批判し、支払いを拒否した。
 だから雪路はその辺にいたクラスメイトを撃ち殺した。
 その調子でどんどん発砲していく。誰もが状況についていけなかったが、友弥だけが雪路に襲いかかり、銃を奪う。だが銃を撃ったことのない友弥の弾道は逸れ、クラスメイトを殺し、彼はリコイルショックによる脱臼に絶叫した。
 そこからはただの的当てゲームだった。
 全員を殺害し終わった雪路は、真波に連絡を入れて逃走のための品を持って来させた。待っている間にスカンクから連絡が入り、逃がし屋夫婦は死んだことを告げられる。
 そして真波がやって来た頃には、銃声によって通報されたことを教えるように、警察が倉庫を取り囲んでいた。
 逃げることを諦めた二人は、警官にひきはがされるまで、キスをした。



【感想】
 暗い、というよりダーク、って感じでした。なんか説明しづらい。
 こういう話の主人公らしく、冷徹でいてどこかにきちんとした感情もちらほら見かけることのできる主人公でした。人を殺す時は淡々としていて、でも祥二に指摘されたように動揺していたことを吐き気や肉欲で発散していたあたりが人間らしく思わせてくれます。
 スクールカースト、という触れ込みが読む前に印象付けられていたのですが、あまりそういう要素はなかったように感じました。それというのも、いじめられている雪路が泰然としていることや、学校の人間関係の描写より、雪路が裏社会にハマっていくところや、真波との爛れた生活に重点を置いていたからのように思います。
 ラストのエクペンダブルス状態が結構爽快でした。終わり方も、なんとなーくしんみりしてます。
 この作品シリーズものらしいですが、主要人物はスカンクのようですね。今回は、薬と使ったり神出鬼没だという抽象的な要素だけで魔術師呼ばわりされていたので、そういった彼を構成する要素の背景がどのようなものなか、気になります。





それほど陰鬱にならずにスラスラ読めた



  1. 2013/03/26(火) 00:11:35|
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やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7 ドラマCD付き限定特装版 (ガガガ文庫) 感想

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7 ドラマCD付き限定特装版 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。7 ドラマCD付き限定特装版 (ガガガ文庫)
(2013/03/19)
渡 航

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今を基準で考えると未来は良くも悪くも映るのでなかなか一歩を踏み出せない、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 文化祭も終わると、クラス内での八幡いびりが進行していた。それは相模に言った暴言じみた言葉が原因だったのだが、ぼっち慣れしている八幡はさほど気にしていなかった。それに、由比ヶ浜や戸塚は話しかけてくれていた。
 とはいえ、八幡いびりも次第に風化していった。修学旅行が近づいているため、八幡のことなどすっかり眼中になくなったのだ。八幡は戸塚と同じ班になることになる。一方で、葉山たちのリア充グループを見ると、なにやら葉山と海老名がひそひそ話をして、葉山が眉をしかめているところを目撃する。
 奉仕部でも修学旅行の話題が上がり、雪ノ下がクラスでお姉さま的存在であることや、行き先の京都の話、3日目の自由行動は3人で過ごすことなどを話し合っていた。
 するとそこに葉山、水戸、大和、戸部といったリア充グループが依頼にやって来た。依頼内容は、戸部が修学旅行で海老名に告白するからそれのフォローをお願いしたい、というものだった。
 だが、戸部が八幡がいると話したくないというものだから、雪ノ下が静かにお引き取り願うと、戸部は渋々話し出した。
 八幡と雪ノ下、そしてなぜか葉山まで消極的だったのだが、由比ヶ浜が女子高生らしくコイバナに乗ってしまう。葉山たちは部活で教室を出ていくと、3人は戸部のアピールポイントを探してみたのだが、見つからない。
 だが、とりあえず修学旅行中はいっしょに移動させようとして、二日目の4人一組のグループ行動の時、八幡を戸部の班に入れ、そこに由比ヶ浜たちの班と行動を共にする計画がなされる。
 班決めの際に、海老名は自分のグループに川崎を誘った。キャラがかぶっているせいか、川崎は三浦と一触即発のムードとなっていた。
 再び、奉仕部では旅行計画を練っていると、海老名が依頼にやってきた。彼女が言うには最近戸部が葉山や八幡とつるんでいて、大和と水戸がないがしろにされていて、それがカップリング的に好ましくないので、3人みんな仲良くさせて欲しいという旨を伝えて帰って行った。
 出発日、八幡は小町にお土産表を手渡され、家を出た。ついでに、受験生である小町のお守りも買おうと思っていた。
 電車に乗ると川崎と出くわしたのだが、特に会話もなかった。集合場所にいくと材木座に捕まったり、戸塚と合流したりした。
 新幹線では海老名がリア充グループ+川崎で席を固めていたので、八幡は戸塚といっしょに空いている席に座ったのだが、八幡はすぐに寝てしまった。起きると、隣に由比ヶ浜がいて、同じく寝入っていた戸塚の寝顔を見逃したり、由比ヶ浜のボディタッチにドギマギしていた。
 1日目のクラス行動では清水寺へ行き、戸部と海老名をペアにして清水寺拝観口脇の胎内めぐりで距離を縮めたりした。
 清水寺の舞台へ上ると、八幡は積極的な由比ヶ浜といっしょに自撮りでツーショット写真を撮ったりした。ついでに、クラスの写真係みたいなこともさせられた。
 自主神社では、八幡によるさりげないアシストで、戸部と海老名の距離をまた縮めることができた。
 音羽の滝では、平塚先生が恋愛成就の滝で一升瓶に注いでいたところを注意され、八幡には彼女が早く嫁に行けるように祈るしかなかった。
 宿に行くと、八幡はすぐに寝入ってしまったため、内風呂ですました。同室の葉山たちは麻雀に興じ、八幡と戸塚とやってきていた材木座はウノに興じた。そして戸部と八幡が罰ゲームでジュースを買いに行くと、軽薄な戸部にしては真面目に、八幡へと今回のお礼を述べたのだった。
 そして八幡がMAXコーヒーがないことに愕然としていると、自販機近くのお土産屋で京都限定パンさんを買おうとしているところを目撃する。目撃された雪ノ下は、さもただぶらついていただけという体を装って八幡に話しかけてきた。
 八幡が小町の合格祈願の話をしていると、平塚先生がやってきた。彼女はお忍びでラーメンを食べに行こうとしていたのだ。そこで、二人に口止め料としてそのラーメンを食べさせに行く。
 場所は天下一品の総本店だ。特長であるこってりラーメンを注文する先生と八幡だったが、雪ノ下は食指が動かなかった。(おいしいのに…)
 平塚先生は、ここで雪ノ下に教師らしいことを告げると、コンビニへ酒を買いに行った。二人は先に旅館へ戻ることになり、まるでデートの帰り道のような雰囲気にドキドキする二人であった。ちなみに罰ゲームは忘れていた。
 2日目のグループ行動では、太秦の映画村へ行き、そこのお化け屋敷に入った。戸部と海老名の中はそれほど進展しなかったが、戸塚が楽しんでいたり、川崎と由比ヶ浜はビビりまくっていたりと、八幡のグループは楽しんでいた。
 映画村の次は仁和寺へ向かった。そこで八幡たちは雪ノ下と出くわす。枯山水の趣深さを感じながら、二人は雪ノ下に経過報告をする。その後、金閣寺を巡り、二日目の宿へ向かった。
 夜中、八幡はコンビニへ雑誌を読みに行くと、そこで三浦と出くわした。三浦は八幡たちが海老名にちょっかいを出していることを察していた。そして、海老名が異性交流にまったくといっていいほど関心がない事と、自分たちの輪を見ださないように注意してくる。
 3日目。朝から奉仕部で喫茶店に集まり、伏見稲荷大社の千本鳥居と、合格祈願のために北野天満宮へ行くことになる。
 すると、千本鳥居で葉山たちのグループと出くわした。そこで八幡は海老名に依頼のことを念押しされる。
 その後、北野天満宮によって、嵐山へ繰り出した。その途中で、3人は食べ歩きを楽しんでいもいた。そして嵐山の参道にある、夜中にはライトアップされる竹林を、戸部の告白場所に選んだ。
 夜中、葉山は夜風に当たっていた。八幡は葉山を追って、善人である彼がなぜ今回にかぎって戸部という友人の手伝いをしないのかと問うた。葉山は、今の楽しい時間、関係が好きだから、それが変わるような出来事を嫌っているという。それは初めてみる葉山のエゴだった。だからだろうか、ひねくれた八幡は、そんな葉山のわがままに付き合うことにした。葉山は八幡に頼ってしまうことを悔いた。
 その後、奉仕部と三浦を除いたリア充グループで竹林へやってきた。しかし、八幡や雪ノ下たちには戸部がふられることをほぼ確信していた。それでも、呼び出しに応じて海老名はやってきた。戸部も、緊張しながら海老名へ告白しようとした。
 その時。
 いきなり八幡が海老名へ告白したのだ。海老名は八幡の意図を察し、今は誰とも付き合うつもりはない、といって振った。
 戸部は告白できなかったことを悔しがり、同時に振られなかったことに安堵した。これによって、葉山たちのグループは変化なく日々を過ごしていくだろう。葉山には、八幡に謝ることしかできなかった。
 葉山たちはそのまま帰っていき、残された八幡に注がれたのは、雪ノ下と由比ヶ浜の落胆に満ちた視線だった。
 雪ノ下は八幡のやり方を嫌悪して、一人で帰ってしまった。
 由比ヶ浜はわざと明るく振る舞おうとしたのだが、やはり八幡の行動を嫌い、もうそんなことをしないように、八幡に頼むことしかできなかった。
 最終日。帰りの新幹線に乗る前に、八幡は海老名と落ち合っていた。今回、海老名の依頼を達成できたかというと怪しいが、葉山の願いと同じ意味を持つ、海老名の本当の目的は達成されていた。海老名は冗談めかして、八幡となら付き合えるかもしれないと言いだした。だが、八幡はちゃんと受け流す。
 彼女は腐女子を公言して、周りを自分に巻き込むことで、今の場所を獲得している。そして今の場所を気に入っている。だけど、その場所をくれた人たちの思いを今回は貶してしまった。だから彼女は自分が嫌いなのだ。
 葉山も海老名も、大事な場所を守るために嘘をついていた。そしてそれは八幡も同じだ。過去の失敗も手伝っているのだろうが、彼が一歩踏み出さないのは、今が気に入っているからなのかもしれない。 


○ドラマCD
 文化祭直後の話。後夜祭を欠席した八幡は、由比ヶ浜の誘いに応じた小町や平塚先生に戸塚に材木座に雪ノ下という面子といっしょに打ち上げを行った。店の手配は陽乃が引き受け、やんややんやと楽しんだ。
 店を出ると、陽乃の手配で撤去されていなかったライブハウスにて、文化祭の時の彼女たちによる演奏が行われるのだった。


【感想】
 はい、今回も八幡さんの自虐解決によって、葉山と海老名を始めとしたリア充グループの平穏が守られましたとさ。めでたし、めでた…くねぇ!
 文化祭の時は八幡に助けられてデレた雪乃でしたが、八幡のやり方自体は嫌い、どうしてもそんな解決しかできない八幡を軽蔑した感じで終わってしまいました。
 結衣についても、そんな八幡に嫌悪感を丸出しにしないまでも、彼のやり方を拒絶していました。
 たしかに、現実に第3者視点から見て後味の悪い解決をされたら、そりゃ一言こと行ってやりたくもなりますよ。
 とまあ、最後は少し気分が落ち込むような終わり方でしたが、修学旅行編、面白かったですね。相変わらずの戸塚の可憐で心を解きほぐされるような小動物チックさが実にキュート。材木座も安定のウザさ加減が楽しめます。川崎さんはブラコンシーンや怖がっているシーンなど、登場回数は少ないまでも、存分にギャップ萌えを披露してくれました。そして、平塚先生はまたしてもカッチョイイ先生でありましたな。
 結衣も計画練るあたりから旅道中まで、八幡に猛アタックをしかけていて、八幡さんはやく応えてあげて!と思わずにいられませんでした。
 雪乃は雪乃で、文化祭で好感度を上げた八幡に対して、これまでのいじりにも似た辛辣な態度を軟化させて、それどころか戸部の暴言から八幡を養護したり、小町のお守りを買いたいという八幡の要望に応えたりと、雪解けした春のような優しい態度をとっていました。それだけに、最後の彼女の言葉が悲しいですね。 
 また、リア充グループでも、みんななにかしらの思惑があり、それが変に絡みながらも、見栄えは良く映っていることが、なんだか少し気味悪かった。でも、葉山や海老名の言い分もわからなくはない。ただ、八幡が達観しきっているだけなんだろうなーと思いました。
 さてさて、夏祭り辺りから気付き始めた八幡自身の心の内に、いつ向き合うことになるのでしょうか。似たような心境にある『僕は友達が少ない』の小鷹ともども、ぬるま湯から出ようとする彼らの行動を楽しみにしております。




修学旅行はどこへ行くのかが重要なんじゃない、誰(男女問わず)と行くのかが重要なんだ!



  1. 2013/03/25(月) 01:50:59|
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好敵手オンリーワン4 (講談社ラノベ文庫) 感想

好敵手オンリーワン4 (講談社ラノベ文庫)好敵手オンリーワン4 (講談社ラノベ文庫)
(2013/03/01)
至道 流星

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主人公が八面六臂の大活躍をする、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 桜月神社にやって来た街宣車はコーイチローからの抗議を曲解した言葉を喚き散らすばかりで一向に変える気配がなかった。街宣車についてきた警察も暴力行為がない以上、書類届けもでているから手が出せないという。
 弥生が部屋に引っ込んで水貴に慰められていると、唐突に街宣車は帰って行った。
 事の一部始終を見ていた弥生の父に謝られ、さらにはよければ弥生を選んでやってほしいなどと言われる。さらに、二人の飲食店も休業することにした。
 コーイチローは、取り急ぎこれ以上の葬儀の新規受付を中断し、業者に頼んでHPでその旨を告知した。だが、それによって押さえていた新聞広告が不要となり、500万円の損失を抱えることとなった。
 すると、水貴と弥生は互いに互いを励まし合い、彼女たちの対決はコーイチローの判定によりノーサイドとなり、二人は仲直りを果たした。
 そうこうしているとまたしても街宣車がやってきたが、今回は台数が減り、さらに以前よりあっさりと帰って行った。
 コーイチローはなんとか街宣車を来させないようにしようとして、警察に相談に行くのだが、一笑に付されてしまう。そこで、次に暴力団の黒川の所へ相談に行くと、街宣車の連中が日本憂国志士連合党という極右団体であり、演者は演説の妙手と言われる里見という男だということがわかる。黒川は高額で街宣車を来させないようにすると提案するが、コーイチローにはそんな金はないし、暴力団と取引をしたくはなかったので断った。
 そのことを二人に告げたコーイチローは、あることを決断した。
 再び街宣車がやって来た時、コーイチローは街宣車の進路上に飛び出して土下座をしたのだ。特攻服の男たちに威嚇されたが、その場をどかない。すると里見がコーイチローを公園に呼び出した。
 公園に行ったコーイチローはそのまま街宣車に乗せられた。そこには里見の子どもがいたり、コーイチローを褒めたり、今の抗議活動は葬儀屋からの依頼だということなどを話して聞かせた。
 街宣車は里見の事務所へ到着し、応接間にやってくるとコーイチローをスカウトし始めた。里見はコーイチローを後継者にしたいのだという。しかし、コーイチローにその気はないため断ったのだが、その気になったらいつでも来いと言われる。また、抗議活動については桜月神社が葬儀から撤退することを条件にやめることを約束した。
 帰りの遅くなったコーイチローは弥生と水貴に大層心配された。そして、弥生の父には葬儀の仕事をやめてもらうことになった。そして街宣車は来なくなった。
 そのことで恩を感じた弥生は、学校でこっそりとコーイチローに感謝のキスをするのだった。
 次にコーイチローが乗りだしたのは水貴の問題解決だ。学校の役員会議では学部長たちから水貴の退任がほのめかされた。水貴は弥生に励まされながらも退任を決意し、元理事長に再度、理事長就任を頼んだ。しかし、理事長の提案で他の人を経営者にしてはどうかと言われ、コーイチローはカフェラジェールの社長に話を持ちかけた。
 社長はその話に乗り気だったが、1億ではなく8千万で買い取るという。しかし、弥生の500万のこともあり、これ以上の損益を出さないためにもコーイチローは粘りに粘って9300万で売却し、貸してもらっていた3500万もチャラにしてもらった。
 社長と元理事長を引きあわせると、二人は良好な関係を結べそうだった。さらに、二人してコーイチローのことを誉めそやすのだが、コーイチローは謙遜してしまう。
 水貴は学校に関することを父親に報告し、水貴の父親はコーイチローに、水貴をもらってやってくれ、と弥生の父親と同じような事を言いだしたのだった。
 その夜、水貴は勢い込んでコーイチローに逆プロポーズを仕掛けた。だが、コーイチローから返事を求めるようなことはしなかった。
 コーイチローは弥生と水貴、二人合わせて1200万円の損失を出した事で、結果を見れば二人の事業は失敗したことを悔み、手元に残っている飲食店で損失を埋めていくしかないのだと結論付けた。
 そこで、勝也のアイデアを元にして、社員旅行を企画した。旅費は全額コーイチローの貯金から出すことにしたため、切り詰めに切り詰めた。
 従業員24人+コーイチローと勝也は富士山麓の温泉旅館に2泊3日の旅行に出かけた。女の子たちには出来る限りのもてなしをし、その代わりに男たちは裏方の役割をこなした。コーイチローは裏方の合間合間に勉強をしていたのだが、女の子たちに話しかけられることが多くて勉強も進まなかった。
 夕食会では、楓に乾杯の音頭を任せる場面もあった。
 旅行から帰ってくると、女の子たちはコーイチローに感謝し、お店の再開準備に取り掛かった。
 店も再開したのだが、損失を埋めるためにコーイチローは悩んでいた。そこへまたしても勝也の戯言を元にして新店舗開店に目を付けた。
 そのことをカフェラジェールの社長に相談すると、素直に賛同してくれた。ただ、チェーン店可能な飲食店なら大丈夫だろうが、二人の店は少し特殊で店舗展開は難しいと言われる。
 その帰り道、コーイチローは駅前でテナント募集をしているお爺さんを見つけて、定額の賃料の代わりに月の売り上げからパーセンテージで支払うという提案をして、店の帳簿を見せると、お爺さんは了承してくれた。さらに、地元の信用もあったことで、内装費や保証費などは払わなくても済んだ。
 テナントの内装は一つ前に入っていた喫茶店の内装が残されていたので、それを再利用することになった。
 これに気を良くしたコーイチローは、このようなビルのオーナーと起業家を結びつける仲介業をしてみてはどうかと思い至る。
 しかし、社長や学校の先生に相談しても、今回のコーイチローのようなケースは特殊で、その事業は成り立たないと言われる。なんとか賛同してくれた元理事長でさえも消極的な姿勢でしか賛同してくれなかった。さらに、地元の不動産やにも無理だと突っぱねられてしまう。
 だが、コーイチローはその事業に光を見ていた。それに失敗してもそれほど損害を被るものでもない。だからやれるだけやってみようと思っていることを弥生と水貴に打ち明けてみた。
 二人はコーイチローに賛同し、新規顧客を開拓することはもちろんのこと、ベースは二人の店の新店舗の候補地を二人に紹介するかたちで出発することとなった。
 



【感想】
 これまでも二人の尻ぬぐいやフォローをしてきたコーイチローですが、今回は一騎当千の大活躍でしたね。
 社会人のおっさんたちからはベタ褒めされて、二人からの好感度は急上昇して、人生経験や知らない世界の知識も蓄えて、さらには自分の事業を興そうとまでし始めるんですから、今回のコーイチローは一味違いましたね。
 そんなコーイチローだから、二人の父親も約束を破ってまで自分の娘を薦めてくるんですから、コーイチローはスーパーリア充人決定ですね。
 前回の引きからすると、あっさりした幕引きだったようにも思えますが、それだけにコーイチローの活躍が引き立っていたように感じます。
 弥生や水貴だけじゃなくて、お店の女の子たちにもモテモテで、主人公無双な話でしたね。楓は乾杯の音頭しかやってなくて、やっぱりただの当て馬だったのかと。
 右翼団体の話しや、経営に関する話など、至道流星さんの作品らしさもきっちり押さえてあって面白かったです。
 






勝也は本当にウザイな




  1. 2013/03/24(日) 01:13:05|
  2. 講談社ラノベ文庫
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俺はまだ恋に落ちていない (GA文庫) 感想

俺はまだ恋に落ちていない (GA文庫)俺はまだ恋に落ちていない (GA文庫)
(2011/11/16)
高木 幸一

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美少女姉妹の喧嘩に巻き込まれる、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 その日、赤井公は友人の山城勇というシスコンとともに、田所雄一という友人の引越し作業を手伝っていた。すると、田所の妹である恵衣美と詠羅がお弁当を携えてやってくる。
 おいしく弁当をいただき、田所が妹たちにデザートを買いに行かせると、公に妹たちにアタックしてもいいという「けん」を与えた。ほどなくして二人が帰って来たのだが、恵衣美はるー子という友人に呼び出されたので帰ってしまった。
 それから4人でトランプゲームをすることになった。そこで詠羅の異常な強さや笑顔の異質さを知ることになる。そして公は罰ゲームとして嫌いなピーマン尽くしの料理を食べさせられる。買い出しには田所と山城が行くことになり、その間に公は詠羅に占われたり、彼女が大切にしている祖母の形見であるカチューシャの話をしたりしていた。
 夜も遅くなり、公は詠羅を送っていくことになるのだが、その途中でクリスマスの装飾を目にした公は、すこし気分を害してしまう。
 翌日、学校へ向かう途中で空河香織と出会う。彼女と他愛無い会話をしながら教室に行くと、田所から恵衣美宛ての手紙を受け取り、放課後に彼女に届けに行くこととなった。
 恵衣美の学校は県内トップクラスの学力を誇る学校であった。校門で待ち伏せていると、恵衣美は男子の取り巻きを引き連れてやってきた。公に気付くと取り巻きを散らして、手紙を受け取り、吹き出した。
 なんだかわからないまま、公は恵衣美の自転車に乗せられて彼女のバイト先であるファストフード店に連れていかれ、ごちそうになる。ここでも恵衣美目当ての男子がたくさんいた。
 恵衣美のバイトが終わるまで待たされていた公は、その後公園に連れていかれてインスタントラーメンをいっしょに食べ始めた。そこで、恵衣美と詠羅がおばあちゃん子であったことや、祖母の形見であるブレスレットのことやコイバナをした後、アドレスを交換して別れた。
 学校でそのことを山城や香織に話したところ、香織が起こりだしたものの、山城によって鎮静化される。
 放課後、帰ろうとする公の前に、着物姿の女性山寺愛子が現れた。彼女は田所家の侍女であり、田所の家に冷蔵庫を運ぶついでに話に聞いていた公を見に来たのだ。公は誘われるままにトラックに乗り、恵衣美と詠羅の仲が何故悪いのか訊いてみたが、答えてはもらえなかった。
 田所の家に着くと、愛子は一人で冷蔵庫を運び終えてしまった。その異常なほどの腕力は、腕相撲をすることで嫌でも思い知った公である。
 それから愛子はスーパーにいる詠羅を迎えに行こうとするのだが、かわりに公が行くことになる。スーパー詠羅を見つけると、タイムセールを乗りきって買い物を終えて帰ろうとした。
 すると、恵衣美からメールがきてどこにいるのか訊かれた。そのまま帰っていると、二人の前に恵衣美が現れた。恵衣美は詠羅とケンカするとどこかへ行ってしまう。公はこれまで何度かメールを交わしていたが、彼女は自分に相談事があるのではないかと思い、詠羅に謝って彼女を追った。
 追った先で彼女に弁明し、恵衣美に連れていかれた先で、るー子という女の子がいた。彼女は最近彼氏と距離を置こうと言われたが、どうにも納得できないらしい。公は適当に慰めていたのだが、恵衣美が直接彼氏の家に行こうと言いだした。
 隠して、彼氏こと安藤孝之の家に赴いた3人。ちなみに公は恵衣美の彼氏という設定だ。そこで公は安藤に友達になってくれと言ったり、殴りかかったり、恵衣美にキスのふりをしたりしながら、安藤とるー子のよりを戻すことに成功した。
 帰り道、公は安藤に殴られたりして疲れていた。すると恵衣美が自分の家に泊って行くように言った。公の家には厳しい門限があるのだが、なんとか了解を得ることができた。
 恵衣美達の家は赴きある日本家屋であり、豪邸であった。そこで、家令の橘に連れられて、ある一室に通される。そこが実は詠羅の部屋であり、風呂上がりの詠羅と対面することになった。詠羅となんだかんだと話していると、恵衣美が戻ってきてまたケンカが始まる。
 公はこの場を何とかしようとして、カレーを作ろうと提案する。金持ちのカレールーを使っておいしいカレーを作ることに成功した公は、なぜか姉妹にあーんさせられ合うという体験をする。
 その後は、詠羅の部屋で3人川の字になって就寝した。
 翌朝、なぜか姉妹たちがおしゃれをしていたのだが、公は恥ずかしがって素直に褒めることができなかった。
 そして、いきなり愛子に腕相撲の勝負を挑まれ、負ければ二度と姉妹に近づかないでほしいと言い始めた。理由を訊いても判然としないことばかり言われたのだが、公はその言葉が頭に来て勝負を受けた。
 負けることはわかりきっていたが、公は姉妹のただの友達呼ばわりされたことが許せなかったことや、姉妹が涙ながらに公を応援していたことから、愛子が負けてくれた。
 勝負が終わると、公は姉妹と愛子にボロボロの小屋に連れていかれた。その小屋の中にある祖母の遺言で、小屋に残したオタカラを1時間以内に見つけて欲しいというのだ。ただ事ではないと気付いた公は、とりあえず引き受けた。
 とはいえ、小じんまりした小屋の中にはお宝らしきものは見つからない。その時、安藤から謝罪の電話がかかってきて、彼からヒントを得た公は、祖母の残していた日記からいくつかのひらがなを見つけ出し、それらを組みかえた結果、「お宝はきみ。孫をよろしく」という言葉が浮かびあがり、そのことを姉妹に告げると、二人が笑顔で飛びついてきた。
 どうやら、この試験に合格できる男でなければ二人を幸せにはできないという考えに則った試験だったらしい。しかし、二人が同じ男を入れたものだから、またまた二人は喧嘩を始めてしまうのであった。






【感想】
 読んでいる最中は、これなかなか面白いじゃん、と思っていたのですが、あらすじ書いていると面白くないんじゃないか?という思いにかられました。まあ、それというのも、展開や内容よりもキャラと語り口やイラストレイターである庭さんが好みだったからなのではないかと思い至りました。
 起こる出来事やキャラたちのバックボーンに魅力がないことは残念でなりませんね。主人公はクリスマスに父親が蒸発して門限が厳しかったり、縁というものを大事にするようになったりしている、という設定がありながらも、そういうのは全然前面に出て来なくて、ただ勘のいいやつ、という要素しかありません。魅力ないです。
 姉妹たちに関しても、あれだけ祖母関連の話を引っ張っておきながら、婿探しのための試練があるだけだと味気ないですよね。おばあちゃん子だった、っていうのも過去のおばあちゃんエピソードがないと空虚に感じます。最後の謎解きもイマイチ。
 喧嘩は面白かったのですが、喧嘩だけで終わってしまった感じが否めません。そこをもっとおばあちゃんの話に変えてほしかったなーと個人的には思います。
 でもまあ、ライトノベルだしキャラクターが魅力的だったのは嬉しかったです。恵衣美はイマドキ(死語)の女子高生っぽいし、詠羅はちょっとおかしな礼儀正しいお嬢様って感じで、対照的な魅力を持った姉妹というポジションがツボでした。でも、香織や山城は必要あったのかな、とは思いました。香織はいらない子な感じがハンパなかったです。
 でも、一番好きなキャラは橘さんでした。なにあのナイスガイ。一家に一台欲しいです。








タイトルが作中の序盤で登場するところが好きでした




  1. 2013/03/22(金) 23:40:13|
  2. GA文庫
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とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫) 感想

とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 4 (ガガガ文庫)
(2010/08/18)
犬村 小六

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戦場が二人を繋ぐ、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 空族との戦を終えて、合同葬儀が行われた。防空壕に隠れていたクレアは、そこで初めて同級生たちの死を知る。
 その日の夕食で、クレアはルイスにイスラの針路を不動星からずらすことを知らされる。このまま進めばレヴァームと合流できるかもしれないが、空族に自分たちの針路がばれているため、待ち伏せを回避しなければならないという結論に至った。
 センテジュアル組は、戦死した級友のために墓標を作っていた。作業が終わると、チハルが泣き出し、アリエルたちが彼女を慰める。それでも泣き続けていたチハルは、ふとミツオの言葉を思い出し、泣きやんだ。
 と、そんな時に空族からの空襲がくる。その空襲はさして被害をこうむらなかったが、住民の不満が募り、反転するべきだという声が強まった。
 空週明けの夜中。カルエルは自分の不甲斐なさを恥じ、湖の周りを走り込んでいた。すると、クレアを見つけた。
 しかし、クレアは逃げ出そうとしたり、一人だけ隠れていた自分をひきょう者呼ばわりしたりした。でもカルエルはそんなクレアを慰め、勢いでキスをして、告白までした。さらにカルエルはクレアなら自分の出生を話してもいいと思い、打ち明けようとする。
 だが、先んじたのはクレアの方だった。彼女はカルエルに自分がニナであることをほのめかし、だけど決定的な事は言えずに、自分もカルエルのことが好きだから、もう会わないようにしようと告げる。
 カルエルにはそのことが良くわからなかった。そこへ、再び小規模な空族からの空襲が起こる。その時、火の手と月光に彩られたクレアの髪と瞳が、カルエルにニナを連想させ、クレアがニナなのだと気付いた。クレアはそのまま駆け出し、カルエルはあまりのショックで頭をかきむしり、絶叫した。
 それからカルエルは部屋に引きこもるようになった。気丈なシャロンはカルエルの心配を続けていたが、飛空科の生徒たちも級友の死によって陰鬱な気持ちを抱えていた。そこで、チハルと寮長がもちつきを行うことにした。
 呼びかけに答えたのはシャロンとナナコとノリユキとベンジャミンだけだ。それにみんな食欲がない様子だった。そこへ、少し早目の退院をしたアリエルが帰って来た。シャロンはアリエルにカルエルの現状を伝えた。アリエルはカルエルをそっとしておくことに決め、寮生たちを引き連れて商店街の復旧の手伝いをしに行くことにした。
 商店街の手伝いをしていると、儀仗兵や近衛兵を連れてニナが訪れた。今回の彼女の役目は、その求心力をもって反転派の心変りを起こさせることにあった。そんな彼女の演説を見ていたアリエルは、一目でニナがクレアだと気付いた。そして、カルエルの不調とクレアの正体が線で繋がった。帰ろうとするクレアに近づこうとするのだが、それを防いだのは実は近衛兵であるイグナシオだ。(寮にいたのはクレアの護衛のため)アリエルが懇願すると、イグナシオは一芝居打って彼女をクレアに近づけた。そして、フォローは任せて欲しいということと、真相を知ろうと友達であることを伝えた。
 アリエルはすぐさま寮に戻ると、カルエルに語りかけた。負傷したことは気にしてないし、飛空科から整備科に転科することになったが、そのほうが性に合っていることや、父親の記憶など。だけどカルエルは呆然としたまま聞いていた。
 すると、イグナシオがやってきて、カルエルを無理やり引きずり出して湖へ向かった。そこでイグナシオは、自分がカルエルの異母兄弟であり、皇王の弱味を失くすために捨てられた過去や、右手に傷を作って憎しみを忘れないようにしていたことを語る。さらにアリエルが飛空科を止めたことを突き付けられて、再び落ち込んだ。そんな腐抜けたカルエルを見て興醒めしたイグナシオは、帰って行った。 
 そんな時に、空襲のサイレンが鳴り響き、空族の大型戦艦がいた。カルエルはなぜか木に括られていた馬を手繰って飛空場を目指す。
 飛空場には飛空科の生徒たちが集められていた。誰もが飛空機に乗りたがらず、さらにソニアが軍を辞めてまで生徒を逃がそうとした。ほとんどの生徒が逃げる中で、ノリアキとベンジャミン、カルエルだけが残った。
 ノリアキはナナコと、ベンジャミンは幼馴染のシャロンと、カルエルはアリエルと生き残ることを約束した。
 3人がエル・アルコンに近づくと、そこにはイグナシオがいた。どうせ死ぬのだから、カルエルの死に顔を拝むためだといって、カルエル機の後席に乗り込んだ。
 彼らは観測機の直掩機として出撃していた。イグナシオは抜群の射撃技術で敵機を次々と撃ち落としていった。逆に、ノリアキは凡人らしい逃走本能をむき出しにして、敵機を惹きつけながら逃げ続けていた。しかし、その最中に観測機が撃ち落とされてしまった。
 観測機がいなければ、ルナ・バルコの砲撃が敵に命中したかどうかや、命中させるための敵の位置情報を知ることができない。そこで、ベンジャミンが観測機の代行をしようとする。ベンジャミンの情報は、始めはレオポルド団長たちに受け入れられなかったが、レオポルドと同席していたクレアの懇願とベンジャミンの情報の正確さを買って、ノリアキ機を観測機代行と認めた。
 現状では、敵戦艦は煙幕によって見えない状態になっていた。だから、ノリアキたちは煙幕を越えて敵戦艦に近づきながら情報を送り続け、逃げ続けた。
 だが、いつまでも逃げ続けられるものではない。ノリアキは気を失い、ベンジャミンは右手が吹き飛んだ。死を覚悟したベンジャミンだったが、シャロンの餞別であるスカーフが目に留まり、生き残る気力が湧いてきた。カルエルたちからの援護もあり、ルナの砲撃が敵戦艦の火薬庫に的中し、撃沈した瞬間を目撃した。だがそこまでだった。
 爆風に巻き込まれたノリアキ機は崩壊し、二人は落下傘でゆっくりと聖泉へ落ちて行った。二人を助けたかったカルエルだが、イグナシオにたしなめられて二人を助けることはできなかった。
 そんなカルエルに、アリエルが負傷した時のような神がかった操縦と、戦場を俯瞰したかのような空間把握能力が舞い降り、ルナ・バルコの直掩に回った。
 一方、これまでの対艦砲でそれなりの被害を受けていたルナ・バルコに、聖泉から空雷艇が襲いかかる。さらには急降下爆撃機からの追撃も加わって、もはやなすすべなく沈没するしかなくなった。
 スイスは縋りつくような思い出、クレアのやりたいことをやらせて風呼びの力を取り戻させようとした。クレアは甲板に上ると、カルエルを探した。カルエルはルナ・バルコとニナの最期を予感しながらも、なぜかそのことを喜べなかった。母親の最期の言葉を思い起こした時、カルエルはクレアを見つけた。
 操縦をイグナシオと代わったカルエルはクレアに近づいた。クレアはカルエルから繰り出されるであろう罵詈雑言を受け止めて償うつもりでいた。しかし、カルエルがクレアに託した言葉は、生きろ、だった。
 その一言を残すと、カルエルたちは止めを刺しに来ようとする急降下爆撃機に立ち向かった。そして、クレアはその一言だけですべてを理解し、救われた。だから、彼女は彼の思いに報いるために、風に語りかける。彼を救うための歌を、恋の歌を彼に届けるために。
 風はクレアに応えた。爆撃機は空中で分断され、浮上してくる空雷艇は竜巻に巻き込まれて自爆していった。沈没寸前だったルナ・バルコも風の力でなんとか航行を続けていた。一気に戦況をひっくり返り、呆然とする軍人たちを尻目に、ルイスだけが喜びで打ち震えていた。さらに、竜巻によって雲が吹き飛ばされたことで、レヴァームの飛空戦艦エル・バステルが現れ、援護射撃を撃って来た。
 これによって空族は撤退し、ルナ・バルコはイスラの湖に不時着すると、もう起動不可能となった。
 カルエルは帰還できた喜びと、また死んでしまった級友を思って悲しんでいると、負傷したバンデアラスがエル・アルコンに乗って帰って来た。そこには、気絶したノリアキとベンジャミンの姿もあった。
 後日、入院したノリアキとベンジャミンのもとへ寮生たちがお見舞いにやって来ていた。そこへ、イグナシオがカルエルを呼び出しに来た。ちなみに、寮生たちからはイグナシオはツンデレだと評されている。
 病院の屋上へ行くと、カルエルはイグナシオから信じられない情報を聞かされた。
 空族は脅しを交えて交渉のための書簡を送って来た。レヴァーム人もいたため解読は素早く終わった。曰く、風呼びの力をもったクレアは彼らの創世神話に出てくる巫女であり、彼女を引き渡すのなら、これ以上の追撃早めるという内容だった。そして、上層部はこれに応じるつもりだ。
 つまり、クレアを生贄にするということだ。




【感想】
 泣きかけた。
 今回もハラハラドキドキの空戦が描かれていて、もう読む手が止まりませんでしたね。これまで目立つことのなかったノリアキやベンジャミンガ一念発起して戦場に望み、ミツオにも誇ることのできるほどの誉れと戦果を得ることができました。二人が聖泉に落ちた時は、もうアカンわ、と思っていましたが、今回もダンディ先生がやってくれました!バンデラス先生まじダンディー!ソニアも軍人堅気かと思いきや、生徒のために除隊までしていたところが震えました。
 イグナシオについてはようやく正体が判明しましたね。カルエルを焚きつけるためのキャラという感じでしたが、もうちょっと登場していてもよかったと思いました。カルエルを憎んでいるのにやりすぎることはない。なにこのツンデレ、優しすぎるでしょ。
 それになにより、クレアとカルエルの関係がついにクライマックスを迎えたことが読みどころですよね。序盤に秘密が明かされ、カルエルが壊れるところは予想外でした。てっきり普通に憎むのかと思ってましたが、それだけクレアと過ごした時間や、母親の言葉の影響が強かったんでしょうね。
 クレアはクレアで思い悩んで葛藤して、アリエルやルイスの言葉に救われたりしながら、最後の最後で素直にカルエルと向き合うことができました。その時には、カルエルもクレアをニナとして認め、許すことができていた。だから風を呼ぶ恋歌が歌えたわけですね。
 ですが、ようやくわかりあえたのにすぐさまお別れがやってきます。いやー、王道ですね。この先逃避行になるのか、それとも別れてしまうのか、最終巻が楽しみすぎます。






イグナシオのCVは檜山修之さんで脳内再生余裕でした



  1. 2013/03/22(金) 21:39:50|
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新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)〈4〉 (電撃文庫) 感想

新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)〈4〉 (電撃文庫)新約 とある魔術の禁書目録(インデックス)〈4〉 (電撃文庫)
(2012/03/10)
鎌池 和馬

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とりあえずバトルやっとくか、というお話


【簡略ネタバレストーリー】
 反学園都市サイエンスガーディアンの各社による格闘大会ナチュラルセレクターが開催された。目的は学園都市外の不思議な能力者を集めることだ。
 参加者の一人であるサファリー=オープンデイズは試合前に出会っていた上条が侵入者として捜索されていることを知り、自分の流儀に則り彼を助けに行く。ほどなくして上条は見つかるのだが、そこに支配人がやってきて、彼女たちを取り押さえようとする。
 とそこで、支配人は目を覚ました。支配人の目の前には木原乱数という学園都市から派遣された『木原』の一人がいた。乱数は自前のカビを使って支配人に幻覚を見せていたのだ。(なお幻覚は支配人とサファリーの出会いだけ)細菌兵器でナチュラルセレクター関係者を皆殺しにしようとする。しかし、そんな乱数もまたグレムリンの魔術師であるウートガウザロキの幻覚に捕らわれており、殺される。ウートガウザロキは乱数によって負傷している所を、上条に止めを刺される。
 学園都市の暗部部隊の介入で荒れ果てるバゲージシティに、参加者の一人であり、甲賀忍者の近江手裏は、甲賀発展のために学園都市の異能者を調べようとしていた。そこへ、木原加群を探す雲川毬亜というメイドと出くわし、彼女に負けて気を失う。
 他方、グレムリンの魔術師であり、人の構成を組みかえる力を持つマリアン=スリンゲナイヤーは、車椅子に乗る木原病理と敵対していた。そして彼女はあっけなく病理に勝利する。
 対して、手裏と毬亜の元には木原円周が来襲する。彼女はできそこないの『木原』であるが、木原一族の思考パターンを読みこんで『木原』らしく振る舞う。そこへ、木原加群が現れ、二人を救出する。残念ながら、この時毬亜は気を失っていた。その後、二人はバゲージシティから撤退しようとする。
 その頃、マリアンはグレムリンの魔術師であるシギンに『助言』(詳細はあとがきで)を求めていた所で、手裏と毬亜と出くわし、これを排除しようとする。が、手裏の毒に倒され、さらにシギンはすでに手裏によって倒されていたことを知る。そして、間一髪のところでマリアンは難を逃れる。
 そして円周は実は生きていた病理と合流した後、乱数のカビを採取して、バゲージシティの人間すべてを細菌兵器でジェノサイドしようとする。
 それを阻もうとしたのはサファリーだ。彼女も加群に助けられており、彼の助言に従って円周を止めようとしていた。そんな彼女は手裏と毬亜と出くわし、3人で円周が向かうであろう野菜工場へ向かう。
 その先で3人と円周は戦闘することになるのだが、毬亜の格闘技によって円周を一蹴し、円周は拘束される。それを狙っていたのは病理だ。病理は円周と合流した時に円周を殺すとして未遂に終わっていた。だから今度こそ彼女を殺そうとするのだが、そこへ加群がやってきた。
 加群は『木原』を抜けて一般教師として働いていたのだが、病理の「諦めさせる」という性質によって殺人を犯させられて、教師を辞めて学園都市すら去っていた。
 そんな彼はグレムリンに所属し、グレムリンに科学を教え、同時に魔術を会得していた。病理は第2位である垣根提督のダークマターで対抗するのだが、加群を負かしきれない。加群は、教え子を守るためとはいえ殺してしまった成年への罪滅ぼしとして、病理と相打ちすることを望んでおり、実際にそれは叶った。
 それを見ていたのは毬亜だ。彼女こそが、加群の守った教え子なのだ。
 そして加群ことベルシ(グレムリン内での名称)の死に憤っていたのはマリアンだ。彼女は魔神であるオティヌスと通信で繋がっており、彼女の制止を無視して『戦乱の剣』という魔術礼装を使用した。
 それによって毬亜たちは死にそうになるのだが、そこへ上条が登場し、これに勝利する。
 だが、気を抜いた瞬間、上条の右手首が握りつぶされた。そこにいたのはオティヌスという少女だ。オティヌスは次に毬亜を殺そうとするのだが、それを阻んだのが魔神のなりそこないであるオッレスルだ。彼の存在によって、オティヌスはマリアンを連れて帰るだけに留めた。
 上条の右手は、いつの間にか元どおりになっていた。それを見ていたのは、オッレルスと右方のフィアンマだ。そして二人は残された人々の救出に向かう。
 そしてこの騒動の影で、木原唯一が何かを企んでいた。
 また、バードウェイや金髪メイドの聖人が、ブリュンヒルド=エイクトベルという先天的ワルキューレであり聖人である彼女から、『主神の槍』の情報を引き出そうとしていた。
 



【感想】
 えー、今回もいい意味でも悪い意味でも禁書らしかったです。
 場面転換に次ぐ場面転換。意味のわからない次回への引き。強さのインフレ。無駄に科学的な能力の説明。
 多額の製作費用を割いたのに、迫力があるだけに留まった映画のような、コマ割りや描写の下手糞なマンガを見させられたような気分。キャラはどれも個性的で楽しいのだけど、なんか皆口調に特徴を持たせようとして、すでに出てきているキャラと口調が似てたりするから微妙に感じる。あと、傍点の使いすぎが非常に萎える。特に円周のセリフ。
 キャラの使い捨てもはなはだしいですね。それがいいように作用する場合もあるんですけど、個人的には微妙でした。
 あと、あとがきが全部キャラの説明だったんですが、そういうのはちゃんと本編でやってほしい。ムック本みたいなことはムック本でやればいいと個人的には思っています。
 今回のバトルでは相性みたいなのがあるのか、誰かに負けた奴が誰かには勝つ、といったシーンが多く見られました。こういうのは割と好物なので、その点は面白かったです。
 腕を蛇口に変えて血を流す発想は素晴らしいけど、もっとグロイ描写をしてほしかった。マリアンの猟奇的趣味はもっとおどろおどろしくしていてほしかった。
 なので、セリフに味を持たせたりキャラ増やす前に、説明をきちっとしてほしい。
 もう自分の中には、数年前のような中二スピリットがなくなってしまったのかもしれない。





オッレルスとかワルキューレとか、SSのキャラ?ようやっと出てきたね


  1. 2013/03/15(金) 23:02:38|
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とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫) 感想

とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌3 (ガガガ文庫)
(2009/12/18)
犬村 小六

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理不尽な世界を見せつけられる、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 空族兵士の墜落から3ヶ月。カドケス高校の生徒たちの生活に変化はなく、レーヴァムについての情報も民衆には知らされていなかった。
 その日の訓練は飛空服姿に土嚢や銃火器を背負って砂浜を走り、その直後に遠泳と、ハードな内容だった。訓練後、教官のバンデラスに野営訓練をするのもいいだろう、と提案され、海で遊ぶついでにキャンプファイヤーなどに興じることになる。
 ヴァンヴィール組やイグナシオは早々に帰ってしまうが、クレアはカルエルに誘われてセンテジュアル組と野営訓練をすることにした。
 彼らが話す内容は、空族のことや、正規ペアについての話だった。中でも、チハルとミツオは一見すると違和感があるのだが、とても仲が良く、互いを尊敬し、好意を寄せあっていた。
 他には、カルエル・クレア、アリエル・イグナシオ、シャロン・ベンジャミン、ノリアキ・ナナコ、ウォルフガング・マルコ・サントス(ウォルフの男気に憧れる舎弟)となっていた。中でも、イグナシオは成績不良で優等生であるアリエルとのペアが不思議であった。
 キャンプファイヤーの木材が足りなくなり、クレアとカルエルが近くの森へ調達に向かったのだが、あっさり迷子となってしまう。その道中で、クレアが足を怪我してしまい、カルエルがおんぶをしたのだが、これまたあっさりひっくり返ってしまい、クレアを押し倒したような体勢になる。なにやら甘酸っぱい雰囲気になるのだが、寮生たちの要請で二人を助けに来た寮長シズカにガン見されていることに気がついて、あわてて離れてしまう。そして帰ってくると、おなじみのカルエルとアリエルの兄妹喧嘩が始まるのだった。
 出帆式から4ヶ月もたつと、イスラはついに聖泉へと到達した。その日はイスラの住民が祭りを催し、カルエルたちは編隊を組んで空を飛んでいた。
 あまりに雄大な景色や煌びやかな虹の色彩に感動したカルエルは、飛空士になろうとした過去を思い出し、母親を思い出し、ニナの野葡萄色の瞳を思い出したところで、クレアの野葡萄色の瞳を見てしまい、ある疑念がわきあがってしまう。そこでクレアになぜ飛空士を目指したのかと訊くと、ただ空を飛びたかったから、とだけ答えが返って来た。
 一方、飛空艦隊ルナ・バルコの指揮所で、ルイスはアメリア・セルバンテスといた。彼女は「航海長」ルイス、「騎士団長」レオポルド、「財務長」マルクス・サンチェスと並ぶ「四人議会」というイスラの元老院的組織の一員であり、「外務長」である。
 彼女によれば、捕虜の空族の持つ情報は偽物であり、空族を過小評価させるための作戦だという。そこにレオポルドが加わり、それは考えすぎだという。レオポルドは一兵卒から元帥に上り詰めた兵であるが、幾分戦闘狂な面が強かった。彼の作戦では、貴重な雷撃機を使いたくないため、カドケス高校の生徒たちを哨戒に当てるという。もちろん、管区長であるニナことクレアはその任から外される。
 レオポルドが去ると、二人はこの世界がどんな形をしているのかという議論になり、その日のお祭りの席で語り合うことになる。
 お祭りの夜。寮に支給される経費が少なすぎることから、寮生たちはアリーメンの屋台を出していた。これが大好評で、ルイスたちも食べに来た。そこへ、ルイスと水兵時代の旧友であり、アレクサンドラ近衛騎士団のインペリアルエースでもあったバンデラスがやってきた。いっしょにいたソニアは、そんな同僚の意外な経歴に驚きを隠せなかった。ルイスたちは世界像のことをバンデラスたちに聞かせたくないため、席を立った。
 屋台の営業が終わると、寮生たちは好調だった売り上げに喜んだ。そこからアリエルを褒めていると、チハルの実技の上手さに話が移り、ノリアキがチハルとミツオは釣り合ってないだの、ミツオの悪口を言い始めた。それをチハルが怒気を強めて否定した。
 その後、頃合いを見計らってミツオがチハルを慰めに向かった。そこでチハルの空を飛ぶ理由や家庭事情を知り、今後来るであろう戦争の話題となった。ミツオは残された人がいつまでも悲しむことを、死んだ人は望まないだろう、と言い、チハルもそれに共感し、でもやっぱり誰も死なない事を願ってやまなかった。
 セレモニーというお祭りから4日たっても眇々と広がる聖泉を越えることができないでいた。水素電池も聖泉に着水できないため充電できず、節電が続いていた。
 そんな折に、空族から宣戦布告がなされ、民衆は防空壕へ避難し、レオポルドは敵機を追跡させて、ほぼ全勢力で潰しにかかった。高校生たちは、予定通り哨戒や陸上警備に借り出され、クレアとペアのカルエルや、アリエルペア、ウォルフガングペアは湖で待機命令が下された。しかし、湖に行った途端に、クレアとなぜかイグナシオだけが中央庁舎へ連れていかれてしまった。
 空族の母艦と思わしき飛空艦体が発見されると、非常用の雷撃機以外、ルナ・バルコも総動員して殲滅に向かい、あっけなく勝利した。
 だが、それは囮だった。触接として哨戒に出ていたチハル・ミツオペアは、イスラ後方に超大型爆撃機や戦空機用空母などの空族の主力部隊と思われる一団と接触していた。これをすぐに報告し、二人はそのまま尾行しながら情報を送り続けた。
 それを知ったバンデラスは、高校生たちの使う訓練機エル・アルコンで二人の役割を交代しに行こうとするのだが、それをソニアに止められてしまう。
 囮の撃破から帰還した空挺騎士団たちは、急いで装備を詰め込み、後方敵勢力の迎撃に向かった。
 チハルとミツオが絶対に帰ろうと約束していると、空挺騎士団が視認できた。しかし、夜中の現在では、敵艦の視認が困難だった。そんな時に、触接は閃光弾で敵を照らす役割があるのだが、こちらの位置がすぐにばれてしまい撃墜されてしまう危険性が高まる。ミツオはチハルの身を案じて躊躇うのだが、チハルに背中を押されて閃光弾を発射した。
 何発かの閃光弾で敵影を確認できた空挺騎士団は、学生ながらのその行為に胸を痛めながら、戦闘が始まった。
 想定通り、チアルとミツオはすぐさま集中砲火を受け、さらに敵単座戦闘機五機につけ狙われてしまい、どうすることもできず、ミツオが凶弾に貫かれてしまう。それでも、ミツオは死力を振り絞ってチハルだけを逃がし、自分はそのまま囮となった。そのことがチハルにはすぐさま理解できなかったが、ミツオのエル・アルコンが撃墜されると、落下傘で聖泉に落ちて行きながら、絶叫した。
 その後、敵単座式戦闘機がチハルを殺しにかかってくるが、そこへバンデラスとソニアが助けにやって来た。バンデラスは卓越した戦闘技術で敵機の全てを撃墜させた。
 超大型爆撃機も撃滅させ、戦闘終了かと思いきや、聖泉の中からイスラ同様に空飛ぶ島が出現し、イスラの総勢力を遥かに凌ぐ敵の正真正銘主力部隊が姿を見せた。
 敵機によってヴァンヴィールや中央庁舎などが攻撃を受ける。戦力が不足しているため、ヴァンヴィール組だけが空戦に借り出されることになる。センテジュアル組は変わらず拠点防衛を命じられる。
 カルエルは、意気揚々と戦場へ向かうファウストを飛空機越しに見つけ、待機しかできていない自分が悔しくて、自己判断で戦線へ向かうとする。アリエルはそれを止めるのだが、ウォルフガングたちも向かうと言いだし、仕方なく自分も向かうことにした。
 カルエルたちはファウストを編隊長として敵を迎撃した。だが、技量、物量、性能で劣る彼らは一機また一機と撃墜されていった。
 一方でエスコリアル飛空場にも、敵が降下してきた。ノリアキやシャロンたちは下手糞なりに抗戦するのだが、叶うはずもなかった。そして彼女たちが死を覚悟した時、寮長のシズカが窮地を救った。彼女は人間業とは思えない速度と、忍者の武器を使用して、瞬く間に敵勢力を制圧してしまったのだ。
 同じ頃、包囲されていたカルエルたちは飛空場の砲門による援護と包囲網突破のために単縦陣の編隊を組んでイスラへ向かった。戦闘はファウストが努め、殿はウォルフガングだ。自ら一番危険な先頭に進んだファウストを、カルエルは見直し、戦闘が終われば仲良くしようと考えていた。
 だが、その矢先に銀狐の描かれた三機の戦闘機によって、ファウスト機は撃墜されてしまう。あまりのあっけなさに呆けるカルエルだったが、アリエルに叱責されて我にかえる。
 そのまま、残りのヴァンヴィール組やウォルフガングまで撃墜されてしまい、さらにはアリエルまで被弾してしまう。
 彼女は左肩を抉られて起き上がれないようだった。だがカルエルはアリエルが死んでしまったように思えてしまう。何度も呼びかけ、これまでの自分の行いを悔い、大切な存在である彼女に素直な気持ちを打ち明けていた。
 そんな時でも、銀狐達からの攻撃は止まない。しかし、この時のカルエルは人が変わったように卓越した操縦で攻撃をかわし続けた。そして銀狐の編隊長機が業を煮やして接近してきたところを、アリエルが死力を尽くして撃墜させた。
 アリエルの生存に大喜びするカルエルだったが、なぜか先程のような神業がこなせない。もうダメかと思ったその時、未知国家の飛空機が空族の飛空機を撃墜させた。
 その機体には海猫が描かれていた。海猫はカルエルと短い言葉を交わすと、他の空族たちを次々と沈めて行った。その姿があまりにも綺麗で、カルエルは海猫に尊敬と感謝の念を抱いた。
 その後、飛空場に帰還し、アリエルとマルコは一命を取り留め、戦況もルナ・バルコの帰還によって空族を追い返すことに成功したが、イスラの被害も甚大だった。
 一夜明け、カルエルはずっとアリエルの元を離れようとしなかった。自分の弱さを悔いていると、アリエルが起き出した。そして、アリエルを守れなかったカルエルに、自分の運命を変えてくれたのはカルエルであり、今は幸せなのだと告げる。
 さらに、カルエルがどれだけ自分のことを想っていたのかを知った彼女は、初めてカルエルをお兄ちゃんと呼んだ。カルエルはいつになくしおらしいアリエルの態度に調子がくるってしまうのであった。
 一方、ルイスの元に、未知国家からの協力要請が届いていた。送り主は、神聖レヴァーム皇国執政長官皇民議会第一人者ファナ・レヴァーム。





【感想】
 泣いた。
 2巻、3巻前半と、楽しい学校生活が続いていただけに、戦闘の恐ろしさが際立って見えた。
 ミツオに関しては、2章のチハルを慰めるシーンでどんどん死亡フラグ立てるし、3章のタイトルが「散華」だった辺りから、これはもう死ぬな、という確信を持ってしまい、案の定男前な最期でした。ミツオの場面は結構涙ぐんで読んでました。本読んでて涙出たのは久しぶりでした。
 それにファウストやウォルフガングもあっけなく撃墜されましたし、カルエルが感じた様に、戦場は人をあっさりと殺してしまうところなのだな、と感じました。まあ、現実の戦争のことは知らないので、想像の域を超えませんが。
 他にも、バンデラス先生がただのアホじゃなかったことや、寮長が忍者だったことは素直に楽しめました。確かに言われてみれば、忍者って現代でいうところの派遣労働者に当たるような気がしますね。
 それにしても、ラストのアリエルの可愛さったらありませんね。普段は気丈なふるまいを見せている彼女が、しおらしく、そしてカルエルにべったり甘える姿が、ギャップ効果で一段と可愛さを引き立てています。
 物語もいよいよ終盤っぽいです。ルイスの考える世界像がいったいどんなものなのか、イグナシオの正体とは、カルエルとクレアの関係はどのような結末を迎えるのか、そしてなにより手紙の送り主のファナが『追憶』のファナなのか、海猫もシャルルなのか、尽きることのない謎と楽しみに満ち溢れている作品です。
 続きを早く読まないと!




げに恐ろしきかなアリーメン


  1. 2013/03/14(木) 17:07:24|
  2. ファミ通文庫
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東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫) 感想

東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)東雲侑子は短編小説をあいしている (ファミ通文庫)
(2011/09/30)
森橋ビンゴ

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地雷原だと思い込んだ荒野から慎重に目的地を目指す様な、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 三波英太は、クラブ活動が義務付けられている央生高校で、クラブに入らずのんびりした生活を送りたいがゆえに、クラブ扱いされる図書委員会に所属することにしていた。そこで、英太は同じクラスでいつも本ばかり読んでいる少女、東雲侑子と二人一組で図書室のカウンター当番を行っていた。侑子とは仲がいいわけではないが、暇つぶしに会話をすることはあった。
 ある日、英太は帰り道の喫茶店で、侑子が若い男性とお茶している所を目撃する。彼氏だと思った英太は、侑子に親近感を覚えていただけに、軽いショックを受ける。
 カウンター当番の日。司書の椎名の頼みで、二人は本にバーコードを貼ることになる。そこで英太はヨタカという文芸誌を流し見したところ、侑子が作家西園幽子として写真に写っているページを目撃してしまう。
 そのことに気付いた侑子は、恥ずかしがりながら、自分が作家であることは内緒にしてほしいと頼み、英太は了承した。
 英太は家に帰ると、出来た兄であり本の虫である景介に、侑子の載っていたヨタカを借りて、侑子の小説を読んでみたが、いまいちよくわからなかった。しかし、英太は侑子の困り顔見たさに、ヨタカにサインをしてもらおうと思った。
 翌日、侑子にサインをしてもらおうとしたが、侑子は早々に帰ってしまった。だが、喫茶店を通ると、あの男といっしょにいる侑子で出くわしてしまう。話を聞くと、男は相川陽司という編集者であった。挨拶を終えると、彼は早々にいなくなり、英太は侑子にサインを求めた。しかし、あいにくサインペンがないので、サインは翌日に持ち越しとなった。
 翌日、図書室に行く道すがら、英太は侑子になぜ短編しか書かないのかと問い、侑子は長編を書くだけの人生経験がないし、短編のほうが自分の考え方の性にあっているからだという。
 帰りに二人は喫茶店に寄った。そこでサインはしてもらえたが、侑子は代わりに英太に付き合って欲しいと言いだした。それは、相川に長編、それも恋愛小説を書いてほしいと言われていたからだ。
 家に帰ると、帰りの遅かった英太に、景介の彼女であり英太の初恋の人である有美が、デートだったのかと訊いてくる。彼女は海外出張で不在の両親の代わりに三波家の家事を取り仕切っている。それが、告白もしない内に失恋してしまった英太にとっては居心地が悪かった。
 その場は誤魔化し、英太は今日交換したばかりの侑子のアドレスへ、協力するという旨のを送るのだった。
 それから、二人は学校帰りに喫茶店に寄るようになったのだが、いまいち恋人らしくない、ということで、今度の休日に映画を見に行くことになる。そのため、英太は映画もよく見る景介に上映中のおすすめを訊いた。無気力な英太らしくないと訝る景介だったが、おすすめを教えてくれた。そして、英太は侑子とメールで詳細を決めた。
 また、これまで英太は過去の失恋を気にして、有美に好意的な態度をとりずらかったのだが、この時期から英太は有美に好意的な態度を取るようになる。
 休日。英太のセレクトした映画は濃厚なラブシーンがあって、英太だけドギマギしたものの、侑子には好評だった。
 家に帰ると、景介が有美に告げ口したらしく、有美がしきりに彼女ができたのかと訊いてきた。侑子との関係は微妙だし、侑子が作家であることは内緒なので馴れ初めを語ることもできず、誤魔化すしかなかった。
 部屋に戻ると、侑子から次の日曜日に観覧車のある遊園地に行こう、と誘いのメールが来ていた。
 日曜日、侑子は取材のために遊園地に来たことを話、二人は最初に絶叫コースターに乗った。遊園地初体験の侑子は、コースターを怖がって乗っている間汗ばむ手で英太の手を握り続けていた。
 その後は、おそろいの猿のストラップを買ったり、落ち着いたアトラクションや観覧車に乗った。すると侑子が、今度は英太の家に行きたいと言い出した。これも体験したことがないのだそうだ。
 翌週。侑子が風邪をひいて学校を休んだことで、同じ図書委員の池原という少年に、侑子の代わりを頼むことになる。すると、英太が侑子と同じストラップを付けていることを知られ、二人は付き合っているのだと断定されてしまう。英太はそんなんじゃないと言うのだが、自分で言ってなんだか釈然としない気持ちがした。
 家に帰って侑子にメールし、来週の土曜日に遊びに来ることが決まった。そのことを有美と景介に伝えると、有美は彼女が来るのだと思い込み、はりきってしまう。
 翌週の水曜日、いつも通り喫茶店にいると、英太が池原にストラップがバレて、校内で噂されていることを話すと、侑子はそのことに気を咎めることはなかった。そんな侑子の答えに一喜一憂していた英太は気付いた。自分が東雲侑子を好きなのだと言う事実に。
 お宅訪問の日。侑子が家に来ると、景介が侑子のことを西園幽子だと気づいてしまった。そこで、付き合いのことは抜かして、侑子の紹介をし、今度は景介の部屋を見学することになった。
 そこで侑子は自分のお気に入りの本を見つけたり、読者である景介に褒められたりしていた。景介に対して珍しく積極的な侑子に、英太はイライラしていた。有美の時のように、また景介が目立っていることが気に入らなかった。
 侑子は夕食もごちそうになり、有美の料理の上手さや、美人である有美に気後れしていたのだろうが、英太はそのことに気付かない。
 ある休日、二人はショッピングモールにやってきた。そこで侑子は英太に服を見立てて欲しいのだと言う。侑子は女の子には珍しく、ネットでしか服を買わず、バリエーションも豊富ではなかった。
 そこで侑子は大人っぽい服が欲しいのだと言い、店員のオススメを聞きながら試着をし、英太が似合うといった服を買って、その服を着たままショッピングモールを出た。
 その後、侑子はいきたい場所があると言って英太を連れてきた場所は、ラブホテル。これも取材の一環らしいが、場所が場所なだけに英太は気もそぞろな様子だ。だからだろうか、英太は無理やり侑子を押し倒してしまう。そしてキスをしようとするのだが、侑子の必死に我慢している顔を見て理性が働き、未遂に終わる。
 後ろめたくなった英太は、もうこの付き合いはなしにしようと言いだし、侑子も了承してしまう。
 夏休みに入り、侑子とも連絡しない日が続いた。夏休みも終盤に差し掛かった時、委員として図書室に行くと、椎名に侑子の書いた短編が掲載されている最新号のヨタカを読むように勧められるが、長編のための取材をしていながら、短編を書いていた侑子に腹立ち、読む気にはなれなかった。
 その帰り道に、英太は相川と出会う。相川に誘われ喫茶店に入ると、そこで侑子は見どころのある長編を書いていたのだが、没にしてしまったのだと聞かされる。
 家に帰ると、景介に最新号のヨタカを借りて、侑子の新作短編を読んでみた。そこには、これまで侑子の小説にはなかった恋愛要素が含まれていた。そして登場人物のキャラの心理が侑子のものだと気付くやいなや、侑子に電話して長編を読ませてほしいとお願いした。しかし恥ずかしがる侑子に断られたので、代わりに翌日会ってほしいと言う。
 翌日、いつもの喫茶店で久しぶりに会った二人。そこで英太は思い切って、長編を書き終わるまで自分と交際してほしいと告白した。
 そのことに驚きつつも、侑子は礼儀正しすぎるくらいにOKの返事をし、二人で手を繋いで帰るのだった。



【感想】
 何だこの甘酸っぱくて素晴らしい青春ラブストーリーは!
 こういうお互いの気持ちに遠慮しながらも、でももっと距離を縮めたいという気持ちが伝わってくる感じがいいですね。
 さらに、二人のかかえる背景が絶妙に二人の関係に絡んでくるのがまたいい!英太は過去の失恋から、景介に対するルサンチマンを抱えてしまっていることで、侑子の決定的な好意を履き違えたりするし、侑子は侑子で有美に負けまいと、英太の好みそうな大人っぽい服装を勇気を出して買ったのに、なかなか思うようにはいかない。このじれったくてヤキモキするんだけど、それがいい!と言ってしまう展開が身悶えさせてくれます。
 小説書いててそのお手伝いをする、っていうお話は『楽しいライトノベルの書き方』と似ていますが、こっちはまた違った展開で面白いですね。
 それと、現代っ子らしくメールでスムーズにデートの約束ができたり、気軽にお見舞いできたりするあたり、『ボンクラーズ・ドントクライ』のような携帯のない時代の恋愛モノとは一味違う恋愛模様が繰り広げられて、面白いですね。
 あとは、登場人物全員がフルネームを出していないところとか、地味に好きです。どう見ても準キャラである有美の名字が出てなかったり、司書の椎名の名前がなかったりしてて、個人的に好感が持てました。
 主人公の一人称小説だと、地の文で無理やりっぽく人物説明しちゃうことが多いと思うのですが、この作品はそこのところは省いて、徹底的に英太の心情の描写に専念している所が気にいっています。
 それに3冊で終わってしまうあたりも、どストライクですね。
 さてさて、まだまだ恋人7割協力者3割っぽい関係の二人ではありますが、晴れて恋人のような関係になれたことで、この先どういう展開が待っているのか、非常に楽しみです!
 新刊として買ったのに、いままで積んでた自分がバカでした!すいません!







これほど興奮はしないけど読む手が止まらないラブホシーンがあっただろうか、いやない!(反語

  1. 2013/03/11(月) 23:31:27|
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青春ラリアット!! 2 (電撃文庫 せ 3-2) 感想

青春ラリアット!! 2 (電撃文庫 せ 3-2)青春ラリアット!! 2 (電撃文庫 せ 3-2)
(2011/07/08)
蝉川 タカマル

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結果的に不良グループを潰すことで少女の勘違いを正した、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 月島が入院してから1週間が過ぎた。その日は「アンドリュー月島事件」での校長の鬱憤がつまった朝礼が行われていた。しかし、喜劇は再び起こった。月島は1ヶ月の入院の所を、1週間で退院してきて、クラスメイト達からのお見舞いの品であるマスクを被って再び朝礼ジャックを行った。プロデュースは長瀬だったのだが、宮本は濡れ衣を着せられることになる。
 宮本はそんな長瀬を叱ろうとするのだが、宮本の彼女であるJSの都子へ愛人を装って電話をかけると脅されて、宮本は逆に長瀬の告白の手伝いをすることになる。方法は手紙がイイと相談していたところへ、黒木がやってきた。
 前回のことで怒れる黒木は、宮本にメシをおごらせることで納得することになった。だが、行く先々で、大食いブラックリスト入りしている黒木は入店拒否され、しかたなくコンビニへ宮本にパシらせることにした。
 すると、宮本はコンビニで月島に恨みのあるJK倉科晴と出会い、なぜか黒木を月島と勘違いした晴は黒木をボコボコにした。そして勘違いと気付くや、月島に仇なそうとする晴が気に食わない長瀬に突っかかり、返り討にあう。
 宮本たちは、晴の生徒手帳を頼りに彼女の家へ送り届ける。そこは道場であり、兄の快がいた。快によると、快は以前空手の日本チャンピオンで、敵なし状態だったときに、片っ端から不良とケンカしていたそうな。そこへ月島が通りがかり、快をKO。快はその後不良たちグループに囲まれ、右拳を潰されてしまったそうだ。だが、そのことで快自身は月島を恨んでいない。晴が勝手に兄の未来を壊したとして敵視しているだけだ。
 長瀬は晴の意識が月島から自分に向くようにする。それは、月島が快のことを知ると自分の拳も潰しそうだからだ。
 その後、月島の回復祝いとして月島家でパーティが行われた。宮本と黒木と長瀬は、パーティを楽しんでいたのだが、そこで晴から呼び出しがかかってしまう。長瀬は小細工を仕掛けて彼女を倒すのだが、晴が月島の家までやって来てしまった。
 すると、晴はそこで出会った月島の強さにほれ込み、月島とは知らずに月島を師匠と仰いでしまう。
 そのことは、特訓中にやってきた快と月島が遭遇することで、あっさりバレてしまう。月島は予想通りに落ち込んでしまい、晴はどこかへ行ってしまった。
 そんな宮本と長瀬のところへ、ウララが通りがかる。堕悪騎士の彼女によると、壊帝という不良グループが晴と思われる人物に闇打ちされており、不良グループたちは同盟を組んで、その闇打ち犯を捕まえようとしているのだと聞かされる。
 長瀬は晴が捕まらないように、彼女を呼び出し、彼女を保護するために勝負することになる。小細工のない今回は、長瀬が晴の蹴りに耐えられるかどうかという耐久勝負だ。長瀬は空手をやっている晴の蹴りを何度も喰らい、足は腫れあがっていた。それでも彼女は倒れず、最後には晴が負けを認めた。
 で、堕悪騎士の溜まり場に戻り、晴の闇打ちを幇助していたのが、以前快によって壊帝を追い出された城崎だとわかった。城崎を誘導して、堕悪騎士にボコるようにしようとした長瀬だったが、晴が城崎に捕まり、その作戦もおじゃんとなった。
 宮本はこれからどうすればいいのか考え、月島に助けを求めた。月島はそんな気分じゃなかったが、宮本に活を入れられて協力することになる。
 一方で、城崎は晴をダシにして恨みのある快を闇打ち犯に仕立て上げ、同盟を集めて快をボコボコにしようとしていた。そこへ、宮本たちが同盟内で同士打ちするように仕向け、その混乱に乗じて晴を助け出そうとした。
 月島は、並居る不良どもを片付けて行ったが、最後に晴を人質に取られた快を闘うことになる。その間に、城崎は車に閉じ込めていた晴を連れて逃げようとするのだが、それを宮本が邪魔をして、その間に長瀬が晴を救助した。
 逃げ切れると思っていた宮本だったが、邪魔にしかならない黒木の存在によって、城崎に殺されそうになるのだが、危機一髪のところで晴に助けられる。
 そして、騒動事態を解決するために、宮本は堕悪騎士の初代総長に扮装して、城崎が黒幕だったのだと同盟に知らせた。
 快と月島が清々しく決闘していたところを見た晴は、兄が月島を恨んでいない事を知る。
 一方で、痛み止めで奮闘してた長瀬も、痛み止めが切れてしまい気絶してしまった。そんな彼女を、月島が背負っていたのだが、長瀬はそんな幸福を味わうことができなかったのだった。
 後日、松葉杖をつく長瀬は、いよいよ月島にラブレターを渡そうとするのだが、月島は晴に誘われて海の砂浜で足腰の鍛錬に出かけてしまうのだった。



【感想】
 掛け合いがとても楽しかったです。
 月島がとてもイイヤツだったり、黒木があまりにもバカだったり、宮本のチキン参謀っぷり、長瀬の辛辣さなどなど、とにかくキャラクターのギャグが魅力的でした。
 ただ、それだけにシリアスな面が逆に滑稽に思えてしまったのが残念です。晴にしても快にしても、ゲストキャラというよりもモブキャラという印象がぬぐえませんでした。
 堕悪騎士については、ウララは前回よりもイイキャラしてたんじゃないかと思います。
 あと、54ページのオブジイヤーは誤用ですが、もしこれが『ぱにぽにだっしゅ』リスペクトだとしたら、個人的に評価高いです
 






彼女がJSという事実は、立派なロリコンの証拠たり得ます



  1. 2013/03/08(金) 20:12:24|
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とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫) 感想

とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 2 (ガガガ文庫)
(2009/07/17)
犬村 小六

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楽しい学園生活の水面下で物語は着実に進んでいく、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 クレア・クルス6歳。いつからか意識することもなく、彼女は風を操る力を持っていた。だが、それゆえに周囲からは不気味がられ、魔女と呼ばれて非難されていた。そんな彼女の家庭は貧しく、病弱な弟と疲弊した母親を支えながら、彼女は生きていた。
 そんなある日、彼女たちの元へ徴税人が家賃の回収に来た。しかし彼女たちに家賃は払えず、母親が泣いて懇願するのだ。徴税人は、家賃の代わりに子どもを連れていくことにした。そしてクレアか弟のどちらかを選べと、母親に言い渡す。母親は最後まで徴税人に許しを乞うたが、最終的に選ばれたのはクレアだった。
 クレアは抵抗する気力もなく、徴税人に連れられて行く。街へ出ると、度の様子を見ていた人達に石を投げつけられた。すると、クレアの周囲を、暴風が逆巻いた。気がつくと、クレアの周りは荒んだ街並みがあるだけだった。
 一部始終を覗いていたある神父が、クレアを風を操る神の子のひとりだと言い、アメリアーノ辺境公の元へ連れて行った。
 その3年後、クレアはニナ・ヴィエントと名を改め、風の革命の象徴として、革命に参加していた。カールから睨まれている時も、彼女は何も感じるまいと、心を凍てつかせていた。そのまま、彼女は革命後の処刑に何度も立ち会うことになっていたのだが、いつしか彼女から風を操る力がなくなっていた。すると、処刑の現場がとたんに怖くなり、以降数年間彼女は宮殿の置き人形同然となっていた。
 そんな彼女の元に現れ、彼女を飛空機に乗せて空の楽しみを教えたのが、ルイス・デ・アラルコンだった。
 カドケス高等学校入学式の朝、クレアはルイスと食事をしていた。クレアの保護者は一応ルイスとなっているからだ。そこでルイスは、クレアをイスラの学校に通わせているのは風の力が戻るかもしれないと思ったから、ということや、創世神話にでる聖泉の守り手である『空の一族』『空族』と闘うことになれば、無尽蔵であるクレアの力が必要だからだと、クレアに告げた。
 そのことを聞いても、クレアには普通の生活をさせてくれているルイスへは感謝の気持ちでいっぱいだった。
 一方でカルエルとアリエルは、今日の寮の食事はアリーメン(アリーの作るラーメン)にしようと相談しながら学校を目指していた。カルエルはついついクレアがいないか探してしまう。
 教室へ行くと、アリエルは寮生たちと仲良く会話し、カルエルはクレアのことを考えていた。すると、ホアン・ホドリゴ・バンデラスというダンディな先生が寝坊して登場し、入学式に遅れていることを知らせた。
 放課後、アリエルとカルエルは同じ寮生であるナナコ・ハナサキとシャロン・モルコスを連れて買い出しに出かけた。
 そして寮でアリエルは存分に腕をふるい、斎ノ国の自称ラーメンマニアのノリユキ・カシワバラを始め、ミツオ・フクハラ、ベンジャミン・シェリフ、ヲルフガング・バウマン、チハル・デ・ルシアといった寮生たちを唸らせた。もう一人、イグナシオ・アクシスという男子生徒がいるはずなのだが、彼は食堂に現れなかった。
 特にアリーメンを好んでいたのは、寮長のシズカ・ハゾメだ。少女にしか見えず、ずっと目を閉じている彼女は派遣寮長だといった。さらに、寮の規則は自分たちで決めろと言い残し、彼女は食堂を去った。
 その日の夜は、寮生全員で最低限のルールを決め、あとは宴会をしていた。食堂で全員が雑魚寝する中、カルエルはアリエルを姉たちに見立てて甘えているところを、寮生たちに見つかり、バツが悪い思いをした。
 翌日からは飛空訓練が開始され、現職軍人であるソニア・パレスの指導の元、ヴァン・ヴィール組とセンテジュアル組関係なくペアを組むことになった。
 アリエルはどうせカルエルと組むことになると思っていたが、カルエルは一直線にクレアの元に向かい、自分のところには有象無象の男子達しかよってこなことが、なんだか腹立たしかった。で、結局は適当に選んだノリユキとペアになった。
 クレアもまた、男子達の渦に呑まれていたのだが、カルエルがやってくるとすぐさま彼とペアを組んだ。それが気に食わなかったのは、ファウスト・フィデル・メルセだ。彼の父親はイスラ空挺騎士団団長のレオポルド・メルセだった。カルエルはファウストとケンカになりそうになるが、周囲に止められた。
 飛空訓練が始まると、カルエルはクレアの操縦の上手さに驚いた。クレアはルイスの手配した上等な教官の下ですでに訓練を積んでいたのだ。対するカルエルは、後席で射撃訓練をしていたのだが、学年最低の成績を記録してしまう。一方で、アリエルは見事だった。
 放課後、気落ちするカルエルの元に、クレアがやってきた。その場にアリエルもいたことで、3人はいっしょに買い物に出かけた。
 行く先々で、クレアは未知の楽しみに触れていた。その様子が昔の自分みたいに思えたカルエルは、クレアも辛い過去があるのだと察知した。
 その日の食事は、アルバスカレーというアルバス家特製のカレーだった。クレアも招かれ、その美味に舌鼓を打った。
 そんな中、シャロン、チハル、ナナコとアリエル、クレアの女子グループで、談笑していると、実はこの学校にカール・ラ・イールが紛れ込んでいるという噂があるとナナコが言いだした。アリエルとクレアはそれぞれ盛大なリアクションを取り、アリエルはその噂を強く、クレアは気弱そうに否定した。
 その後、クレアは門限があるため寮を後にしたのだが、その帰り道で、ナナコの噂を思い出し、過去に見た皇子の碧色の瞳と金髪が、誰かに似ていると思い始めた。
 一カ月後、今日も訓練が始まる。カルエルは最近自分の訓練用飛空機の調子がおかしいと思っていた。そこへ、ナナコによる噂を耳にした。どうやらクレアの前で恥をかかせようとしている人達がいるかもしれないらしい。カルエルはファウストの顔を思い浮かべるが、そこまでしないだろうと思いなおす。
 その日、カルエルはファウストと同じ編隊にいた。ところが、ファウストは他の訓練機と共謀してカルエルの飛空を邪魔したのだ。そのせいで、カルエルは大きな雲に突っ込み、反狂乱状態になりながらも、クレアの肝の据わった補助を受けて、雲を突破した。
 しかしそこに編隊はおらず、二人は遭難してしまった。ソニアの言いつけで、二人は海上におりて救難信号を発信し、救助を待つことにした。それから二人は、大雨の中を飛空機内で過ごしたり、魚を釣り上げて食事をしたり、二人とも海に落っこちて下着姿で毛布をかぶったりした。
 カルエルはクレアを不安にさせまいと、奮闘するのだが、それらは空回りに終わってしまう。だが、カルエルがふとゴムボートに寝そべって夜空を見上げると、満点の星空が迎えてくれた。クレアもその光景に感嘆した。
 すると、カルエルは姉の自慢から始まり、自らの出生をぼかしながらも、クレアに自分の境遇を語った。対するクレアも、同じように語って見せた。カルエルはその内に眠ってしまったのだが、クレアは眠れなかった。ナナコの噂と、カルエルの過去を統合すると、カルエルが皇子てはないかと半ば確信してしまった。だが、カルエルという初めての友人を失くしたくない彼女は、涙ながらにカルエルに寄り添いながら、自分の勘が外れていることを祈りながら、眠って行った。 
 翌朝、救助に来た戦空機の先導で、二人はイスラに帰って来た。カルエルはクレアに諌められたことで、アリエルに優しく接しようと思っていたのだが、泣きはらした顔のアリエルにみぞおちを思い切り殴られてしまい、そんな気も失せそうになった。しかし、アリエルは昨夜一睡もせず指揮所でカルエルを待ち、さらには単身でカルエルを探しに行こうとしていたという話を、シャロンたち聞かされ、思いなおすのであった。
 その一週間後、カドケス高等学校の懇親会として、寮の中庭でアリーメンを大量生産するアリエルたちがいた。アリエルはバンデラスに頼まれて、アリーメンを提供していた。誰しもがその味を称賛し、バンデラスやソニアも替え玉を何度も繰り返すほどだった。
 しかし、そんな憩いの時間も空をよぎった見知らぬ敵機によって霧散した。敵機は撃墜され、生き残りは捕虜となり、軍による敵機の調査が行われた。しかし、その敵機は3カ国のどこのものでもなく、パイロットも似てはいるが違った言語を話す。極めつけは、言語学者によって解読された敵機の地図に書かれた文字だった。そこには、神聖レヴァーム皇国と書かれていた。


【感想】
 今回は楽しい学園生活が中心に描かれていました。とても楽しそうで、両手に花状態のカルエルが恨めしく感じます。
 カルエルは難なくクレアとの距離を着実に縮め、果ては二人きりで遭難キャンプですよ。なにこのリア充。やはりヘタレには主人公属性が必須なのでしょうか。読んでいて『めぞん一刻』の五代くんを思い出していました。
 ですが、それと同時に、クレアにカルエルが皇子かもしれないという確信めいた疑念が生まれました。クレアの凄絶な過去話も披露されましたし、クレアの祈りがとてもかわいそうに感じられました。
 また、アリエルにしても、これまでとは違ってきたカルエルとの関係にモヤモヤした気持ちを抱えていて、思春期らしさが出ていていいなーと感じました。カルエルが帰って来たときのアリエルの反応がとてもかわいらしいですね。
 他にも、今回は新キャラが多数登場して、これからの学園生活で彼らがどう活躍するのか楽しみです。
 そして『とある飛空士の追憶』の舞台ともなっていた神聖レヴァーム皇国の存在が出てきて、とても続きが気になります。
 






ダンディなダメ先生は、ここぞという時にスーパーダンディになるんですよね、わかります


  1. 2013/03/07(木) 14:18:53|
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とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫) 感想

とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)とある飛空士への恋歌 (ガガガ文庫)
(2009/02/19)
犬村 小六

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積み上げてきた苦しい過去の先から冒険が始まる、お話


【簡略ネタバレストーリー】
 バレステロ皇国第1皇子のカール・ラ・イール9歳は、厳しい帝王学となかなか両親と会うことのできない環境に苦しみながらも、王となるための日々を送っていた。
 彼はその日、聖アルディスタという宗教による世界創世神話を読んでいた。神話によれば、この地は雨が降るたびにいくつにも割れ、拡散していった。聖アルディスタ(神?)は、雨が地を覆うことのないように、雨が空に還る「聖泉」と水が落ちないための「空の果て」を作った。その後、地に人や動物を作った。聖アルディスタは聖泉から空飛ぶ島を生み出した。人間は、「空の果て」はどこにあるのかと問うた。聖アルディスタは、「空の果て」に不動星エティカを置いたので、そこを目指せと言った。
 そこまで読んで、カールは外の様子がおかしいことに気付く。後に「風の革命」と呼ばれる革命が起こったのだ。民衆を圧迫する独裁政治をしていた皇王グレゴリオは、皇妃マリアとカールを連れて逃げだそうとする。逃走中で、政府の所有する重巡軍艦が2隻と戦闘機が敵勢力の鎮圧に乗り出していた。しかし、それらの艦隊は、強力な突風に煽られて体勢を崩していたところを、敵戦闘機によって軽々と撃墜されてしまう。
 突風の正体は、当時「風呼びの少女」「風を統べる処女王」「聖アルディスタの愛娘」まどと呼ばれ、風を操る力を持つと噂されるニナ・ヴィエントの仕業ではないかと推測された。彼女は、革命の発起人であるアメリアーノ辺境公によって、革命の旗印とされていた。民衆も、ニナの元に集っていたのだ。
 3人は斎ノ国の叔父のところへ逃れようとしていたのだが、近衛兵も倒されたことや、逃走先を案内していた執事の裏切りによって、皇族の3人はやすやすと捕らえられてしまう。
 憤る民衆の前で、皇王と皇妃は暴行や罵詈雑言を浴びせられ、なじられる。さらにカールも抑えつけられ、無理やりニナの靴に口づけをさせられる。その中で、カールはニナの表情のない顔を、憎悪とともに脳裏に焼き付けた。
 翌日、皇王は処刑台でギロチンの餌食となった。しかしマリアとカールは、皇王の最期の声によって、1ヶ月石の牢獄へ監禁された。その日々で、母子はこれまで以上に互いの愛を確かめ合った。
 ある日、カールが劣悪な環境の影響で体調を崩した。そしてマリアは看守長に懇願し、少しの間だけ外へ出ることができた。そこでカールは陽の温かさと、雄大な飛空機を見た。そしてカールは、いつか飛空士になって、母を牢屋から連れ出したいと願うようになった。
 しかし、それもマリアの極刑が決まるまでのことだった。カールは子どもゆえに、死刑がタブーとなっていたのだ。牢屋からマリアだけが連れていかれる日、マリアはカールに最期の教訓を与えた。人にやさしくし、皇子であったことを忘れ、人を許せる人になれ、と。
 マリアが連れられた後、カールは自分を拘束する看守長の手を離れて、マリアが豚車に乗せられて連れていかれるショッキングな光景を目の当たりにした。マリアは狂喜乱舞する民衆たちに石を投げつけられながら、どこかへ連れられて行った。
 カールは母とともに飛び立てなかったことを嘆き、泣き続けた。その姿をみて困っていた看守長のところへ、ミハエル・アルバスという機械工がやってきて、カールを引き取ると言いだした。
 ミハエルは、カールの空を飛びたいという願いを叶えるために、彼を養子として引き取ったのだ。それは、もう死んでしまった彼の息子たちを飛空士にするというミハエルのかつての夢を、カールに託そうとしたためでもある。
 ミハエルの元で生活するにあたって、カールは名前を変えることになり、彼の名前はカルエル・アルバスとなった。
 ミハエルの家に行くと、ノエル16歳、マヌエル12歳、アリエル9歳に迎えられた。ノエルとマヌエルはカルエルを歓迎したのだが、負けん気の強いアリエルだけは歓迎しなかった。また、カルエルはアリエルより1日だけ誕生日が早いため、アリエルの兄になるのだが、ぽっと出のカルエルが兄になるのがアリエルには気に入らない、といった騒動も起きた。
 とはいえ、その日はラーメンというおいしい食事を取り、子どもたちは雑魚寝で夜を過ごした。その夜、カルエルは激動の一日を思い起こして、母のいない現実に涙した。
 翌日、カルエルはミハエルに飛行場へ連れられて、飛空機の飛行実験に付き合った。それがカルエルにとって初めての飛行体験だった。カルエルは一気に空の虜となった。
 午後には、アリエルに連れられて商店街や広場に行った。広場では革命時を模した劇が繰り広げられており、その観客の中で皇妃役を汚く罵るガキ大将がいた。カルエルには彼の言動が我慢ならず、喧嘩をふっかける。しかし、カルエルはボコボコにされる。それでもカルエルはしぶとく相手にしがみ付く。ガキ大将はそんなカルエルが気味悪くなり、逃げ去って行った。
 アリエルはボロボロのカルエルを看病しながら、もしやカルエルが皇子なのではないかと感付いた。アリエルは以前パレードでカルエルを目にしており、その時感じた理解できない高揚感が、再び彼女の胸に去来した。
 家に帰ると、案の定カルエルは甲斐甲斐しい姉二人に手厚い看護を受けた。
 その日の夜、アリエルは思い切ってカルエルが皇子なのか訊いてみた。するとカルエルはそうだと肯定し、それを盗み聞きしていたノエルとマヌエルにもばれてしまう。しかしそんなこと関係なく、アルバス家は彼を温かく受け入れた。
 それから5年後、カルエルの元に、ベルトラン・ソレール侯爵の使いがやって来た。彼らが言うには、革命後の共和制新政権も、元老院内の派閥争いや賄賂の横行によって、民衆の生活に改善が見られず、揉めている。革命派のアメリアーノ辺境公やガスパール侯爵という皇王の叔父を中心とした王政復古派、そしてベルトラントの中庸派に分かれており、皇家の血を引くカルエルがガスパールの旗印にされることを恐れているのだ。
 そこで、彼らは今度イスラに設立されるカドケス高等学校という飛空士養成学校への学費や生活費を援助するといってきた。
 イスラとは、空飛ぶ島のことであり、「空の果て」を目指すために整備された船でもあった。それというのも、ルイス・デ・アラルコンという冒険家によって「聖泉」が発見されたのが事の発端だ。彼によって、まるで剣山のように吹きあがる「聖泉」が発見されたことで、「空の果て」あるのではという推測から、このようなプロジェクトがなされたのだ。
 しかしその実、旅支度のために要塞化したイスラを共同開発したバレステロ共和国と斎ノ国と帝政ベナレスが手に余した事で、流刑の一つとして使おうと画策していたのだ。だから、イスラの市民たちは志願者でありながらも、貴族たちは流刑に等しかった。カルエルもこれに当たる。その中には、あのルナ・ヴィエントもいた。
 胸糞悪い話ではあるが、飛空士を目指すにはいい話ではある。それを盗み聞きしていたアリエルは、カルエルだけ飛空士を目指せるのはズルいと泣き喚き、自分もイスラで勉強させろと使いに行ってみたところ、カルエルが行くなら、とOKされた。
 そしてカルエルとアリエルの旅立ちの日、アリエルは顔をぐしゃぐしゃにしながら家族との別れを惜しんだが、カルエルは涙を流さず、淡々と過ごした。しかし車に乗せられたところで、思いなおし、ミハエルに、お父さんありがとう、と言うと、今度こそ家を後にした。
 それから1年。ついにイスラは出帆式を迎え、カルエルとアリエルは服座敷戦闘機に乗り込んで編隊飛行を行い、故郷に別れを告げた。
 イスラに着くと、二人は学生寮へ行き、相変わらず口喧嘩をしていたところをクラスメイトたちに笑われてしまう。
 夕方になると、カルエルは湖に沈む夕日を見たくなって湖へ赴いた。するとそこに、可憐な少女が困り顔でチェーンの外れた自転車と格闘していた。カルエルは少女を見捨てて夕日を見に行こうとするが、ふと母親の最後の言葉を思い出し、少女の元へ戻った。皇族時代に自転車に乗っていたカルエルは、容易く自転車を直すと、今度こそ夕日を見に行った。
 すると少女がその後をついてきて、たどたどしくお礼を告げた。そんな彼女の様子が可笑しかったカルエルは、そのまま少女と夕日を眺めた。少女は名前をクレア・クルスといった。カルエルと同じカドケス高等学校飛空科の生徒であり、他の生徒とは違って貴族でもあった。
 その後、カルエルはクレアと二人乗りをしながらの帰り道で、雲が地面を滑り、まるで自分たちが雲の上を走っている感覚に陥った。しかし前が見えなかったため、二人は湖に落ちてしまう。そのことが何だか可笑しくて、二人はいっしょに笑い、仲良くなった。その時カルエルは、クレアに仄かな思いを抱き始めた。
 カルエルと別れた後、ずぶ濡れの上、門限を破ったクレアは邸宅で教育係のウルシラ伯爵夫人に怒られた。しかし、クレアは心を凍らせてお説教を受け流した。お説教が終わると、クレアは侍女たちによって装いを変えられていく。ドレスに身を包み、白銀の付け毛を髪に編み込んでいく。そして出来上がった彼女の姿は、ニナ・ヴィエントとなっていた。


【感想】
 面白い!
 過去の話と序章っぽい話しかなかったですが、すごく面白かったです。
 『とある飛空士への追憶』は結構前に読んでいたのですが、続編である本作を読むまで時間がかかってしまいました。なぜもっと早く読まなかった俺!
 カールの辛酸をなめさせられる過去の話は、何度涙しそうになったことでしょう。親子愛がとても胸を打つこと請け合いですね。お母さんの最期の言葉は当たり前のようで深いですね。緻密で表現の綺麗な文章がさらに拍車をかけます。
 そして、アルバス家の人達も良い人たちばかりですね。こんなお姉ちゃんたちが欲しかった。
 アリエルもとても可愛かったですね。強気だけどちゃんと人を思いやれる心も持っている。その上、皇子様であるカルエルに惹かれているようなところも見られて、今後のクレアを交えたカルエルとの関係に期待したくなります。
 それよりなによりクレアですよね。彼女がニナっていうのはわかっていても心躍る展開ですね。平常時のクレアも大変かわいらしくて素晴らしいですね。
 政治面に関しては、なんというか当然の帰結みたいな感じはしましたね。前作の世界観を覚えておくともっと楽しめるのでしょうが、残念ながら忘れているのでいつか『追憶』を読み直したいです。
 これから「空の果て」は見つかるのか、カルエルを取り巻く彼女たちとの関係がどうなるのか、とても楽しみです。





家族系のイイ話は本当に涙腺刺激してヤヴァイ




  1. 2013/03/04(月) 22:59:40|
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くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫) 感想

くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)くずばこに箒星 (くずばこに箒星シリーズ) (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2011/10/25)
石原 宙

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自分が思うほど過去は悪いもんじゃなかった、というお話


【簡略ネタバレストーリー】
 廃墟となった遊園地を改装して建てられた了星学園。ここではグレードチェア制度という、学業・課外活動・生徒間人気投票で評価が下される仕組みがある。それは神の目といわれる謎の力で、あらゆる出来事が把握されていた。この制度の上位6人はチュエ・オブ・シックスと呼ばれ、各自に特別な椅子が用意されることになっている。その中の2ndチェアである福山英知は、生徒会長であり1stチェアでもある神宮寺鳥子の依頼で、おそうじ部という部活に潜入捜査することになる。
 おそうじ部は近頃、何かを探しているようだった。鳥子はその何かが、学園長のことだと推測したのだ。学園長は福山昏という天才科学者であり、英知の母親でもある。英知は母親にしかられた記憶しかなく、さらに家族を捨てて蒸発したと思っているので、母親を憎み、母親を探していたため、この依頼を受けた。
 おそうじ部に行くと、喋るインコのオキナや、超ネガティブな部長の水川小化、男性恐怖症の越前なつき、元機工学部という部活出身の安達匠の3人と一匹がいた。英知は、彼らとともに学園中を掃除して回る。
 そんな時に、4thチェアの宇都宮圭と出会い、彼におそうじ部が屑の溜まり場であると非難され、それを見ていたギャラリーも彼に同調し、英知は2ndチェの座から落ちてしまう。(ただし、椅子そのものは学期変更まで所有可能)
 それでも英知は彼女たちといっしょに掃除を続ける内に、彼女たちが何かを探しているのか、それとなく聞き出すことに成功した。
 小花はお掃除6種の神器、なつきは男が色白美人になるアイロン、匠は6体合体のロボット。どれも学園長とは関係ないものばかりだ。
 だが、3人が3人とも、その探しもののことは秘密にしていた。英知はおそうじ部で、彼女たち3人の絆を感じていた。それなのに秘密をつくっていることに怒りがこみ上げ、英知は思い切って3人に秘密を打ち明ける場を設け、3人は秘密を共有することになった。
 そんなおそうじ部は、十年祭という、開校10年を祝うお祭りを迎えていた。しかし、おそうじ部は特に出し物をするわけでもなく、期間中に学園を清掃することに専念することになった。なのに英知はやってこない。彼はおそうじ部の探し物が学園長でないことを鳥子に報告し、おそうじ部にいなくてもいいと言われていたのだ。
 それでもおそうじ部の面々は、掃除をしようと部室に備品を取りに行くと、部室が壊されていた。壊される場を見ていた宇都宮によると、以前に6thチェアが爆発し、校舎や出し物に被害が出た事件の犯人がおそうじ部だと思った生徒たちによる仕業らしい。部室が半壊したけれど、小花はそれでも掃除を続けると言う。退部届を出そうと部室にやってきた英知もその惨状を見てしまい、退部届を出すに出せなった。
 部室を離れたおそうじ部の元に、生徒会役員であり英知をライバル視する10thチェアの森田待がやってきた。彼女によると、鳥子の占いで学園長が来ているのだと言う。その話を聞いた英知はどこかへ行ってしまう。残された彼女たちの元に、英知が落とした退部届が残されたのだが、待による英知の過去が話され、小花たちは英知を許した。
 その時、小花がある紙を落とした。そこには学園長宛ての謎の内容が書かれていた。それを見たなつきと匠も似たような紙を取り出し、それらの紙を総合して出された結論は、了星学園へのテロ予告だった。内容は、流星群が降る今夜9時に椅子が爆発するという内容だった。6thチェアの爆発は、デモンストレーションだったのだ。
 そうとわかると、おそうじ部の3人はそれぞれ椅子を探し、待は管理委員会たちに連絡しに行こうとしたが、犯人たちによってそれは困難を極めた。そこで待は英知に相談に行った。
 その頃英知は、祭りに来ていた父から、母親が実はクロニック・デジャブという病気で、新鮮さを味わえない体質だったのだと知らされ、さらに本当は英知のことを愛していたのだと教えられる。
 一方なつきは5thチェアの男を見つけたものの、椅子の持ち主がなつきの大ファンだったらしく、貞操の危機を迎えていた。そこへ助けに訪れたのが、英知だ。
 彼は父親との会話の後に、待からテロの内容を知らされたのだ。そして自慢の頭脳と超記憶症候群と呼ばれる記憶障害の亜種による完全記憶能力により、犯人を見つけ、爆発の解除方法を知りだしていた。解除には、今夜9時までに、チェア・オブ・シックスの椅子すべてに誰かが座っていることだった。
 英知は、飛行能力を持つ自分の椅子と、なつきのピンチを知らせに来たオキナを駆使してやってきたのだ。英知は見事男をぶちのめし、恐怖症で固まってしまったなつきを椅子に座らせると、今度は匠の元へ向かった。
 匠は3rdチェアの工藤キリと対峙していた。機工学部の天才であり、匠を追い出した人物でもある。匠は設計の全体を考えることができず、細部にばかり目が行ってしまう癖があり、そのせいで追い出されたのだ。
 英知が匠たちのところへやってくると、工藤は喋るインコであるオキナに興味を持ち、オキナを攫って研究所であるSOLへ行ってしまった。匠は彼を追い、英知は残りの椅子を探しに行った。
 英知は、途中で小花を拾うと、彼女が探していた宇都宮がいるであろうSOLへ向かった。そこで、宇都宮が椅子を使って学園中を監視しているモニタールームを見つけた。そこで、英知は小花と別れ、鳥子を探しに行った。
 残された小花は、宇都宮に事情を話した。するとそこに、工藤がやってきて、なぜか宇都宮を殺そうとする。宇都宮は家族から落ちこぼれの兄のかわりに偉くなるよう期待されていたが、全力をだしても4thチェア止まりだったことに嫌気がさし、このまま死ぬのも悪くない、と思っていたのだが、小花に救われ、テロ解決のために椅子に座ることになる。
 SOLを出ようとした英知は、そこで匠に会い、3thチェアを奪取したことを知る。ただ、本物の工藤は小心者で地下に籠っており、地上にいる工藤はロボであり、ロボは何体もいて、その上暴走していることを知らされる。
 英知は行く先でロボに邪魔をされながらも、鳥子のいる場所まで小花をともなってやってきたが、ロボに椅子を傷つけられてうまく鳥子を助けに行けない。だが、そこにやってきたなつきの助けや、小花の助けを得て、英知は鳥子が座っていなかった椅子に腰をおろし、なんとか爆発を未然に防ぐことができた。疲労困憊で薄れる意識の中で、英知は母親の姿を見た気がした。ちなみに、1stチェアの能力は遊園地の機能復活であり、そのおかげで、椅子から落ちそうだった小花は助かった。
 後日、宇都宮による情報操作で、テロから学園を守ったおそうじ部は人気者になり、英知は2ndチェアに戻ったものの、小花に1stチェアの座を奪われてしまう。そして、実はオキナが母親の造ったロボであり、神の目の正体であることを看破する。さらに、実は小花の姉であった鳥子からのお願いで、英知はまだまだおそうじ部に在籍することとなった。
 
 


【感想】
 長い物語だった。そのせいで上記の内容もちょっと違う場面も見られますが、おおすじは合っているので見逃してください。
 キャラのほぼすべてに作り込まれ背景があり、その辺はすごい丁寧だな、と思いました。ただ、それゆえに、物語が大味になっていた印象があります。過去回想とかがさらっとされるキャラが何人いたことか。そして驚きの真実だと思われる事柄も、展開の猛烈な速さによって印象が弱かったりしてた感じがします。宇都宮の過去にいたっては必要あったのかな?
 ですが、テロ発覚からの疾走感はついつい読み進めてしまう魅力がありました。前半がダラダラしていたように感じていたので、後半の展開が熱かったです。キャラの掛け合いとかも結構楽しめました。
 あとは、所々で雑学じみた科学、心理学、生物学の話しが出てきましたが、そういう点が魅力なんでしょうね。主人公や母親の設定を考えると、そう言う話があってもいいのかも。
 母親に関しては、なんだかなーって感じですね。結局はお父さんの一人語りだったですし。
 ともあれ、たくさんある設定をまとめあげて、こんなにボリューミーな作品に仕上げられていて、読み応えがあった気がします。結構面白かったです。




喋るインコといった、土永さんしか思い浮かばない


  1. 2013/03/02(土) 21:37:04|
  2. 集英社スーパーダッシュ文庫
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ラノベとゲームの感想を中心に気ままに更新しているブログです。
※備忘録としても使っているので、ネタバレを含む内容となっているところがあります。
文章がおかしな点が多々あるとは思いますが、勢いだけで書いているので見逃してください。

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