経験値がほしい

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

ベン・トー 9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー~ (集英社スーパーダッシュ文庫) 感想

ベン・トー 9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー~ (集英社スーパーダッシュ文庫)ベン・トー 9.5 箸休め~濃厚味わいベン・トー~ (集英社スーパーダッシュ文庫)
(2012/10/25)
アサウラ

商品詳細を見る


幕の内弁当のように色んな話がぶっこまれている、お話



【簡略ネタバレストーリー】
○ボーダーをブレイク
 前巻の合宿から帰って来た佐藤は、その間に入手したエロ本などを男子寮のルールにより寮長へ献上したり、合宿中に白梅にネットで監視されていたことが誤解されて白梅と恋人だと勘違いされたり、石岡君との痛い昔話を白粉に語ったりした。
 そんな新学期の始業式。その日は半ドンのため、半値証印時刻まで部室の掃除をすることになった。そこで、佐藤は槍水のパンチラを拝もうとするのだが、あえなく失敗する。しかし、無理な体勢で掃除をしていた槍水は足をつってしまい、佐藤はそのマッサージをすることになる。黒ストと槍水の美脚をマッサージできたことで、彼のボルテージはMAXとなった。
 半値証印時刻になるとスーパーへ赴き、夕餉も済ませた帰り道、佐藤は再び槍水の足をマッサージしようとするのだが、それは叶わなかった。代わりに、槍水と手袋を分け合って、手袋を付けてない手をつないで帰るという、超リア充下校を果たしたのだった。
 しかし、そんな幸せな時間は続かない。佐藤が男子寮に帰ると、槍水と佐藤が手を繋いで帰って来ていたところを目撃していた矢部君の証言により、佐藤は拷問を受けることとなった。その最も過酷な所業が、槍水の足をマッサージした手で、パンストを履いた男の足を揉むと言う鬼畜な行いであり、佐藤はあえなく槍水のおみ足の感覚を上書きされてしまったのだった。


○簡単な質問
 ある日、沢桔梗がクラスメートからラブレターをもらった。相手は高清水というなかなかの好青年であった。そのことはすぐさま姉の鏡にバレ、彼女によって高清水は生徒会室に呼び出された。
 とはいえ、その場は鏡のすとんきょうな質問や彼女の行いで告白らしい雰囲気にはならなかった。さらに、警備のおっちゃんもその場を監視していた。他にも、姉妹が同じ格好をして、どちらが梗か選択を迫ったりした。高清水は残念ながら失敗したのだが、そこは梗のフォローで特段注目されることはなかった。しかし、そんなことよりも場を険悪なものにしたのは、高清水が半額弁当をみすぼらしいものだと称したからだ。話に齟齬があったからそのような言葉が出てしまったのだと梗にはわかるのだが、梗は高清水に返事をすることなくスーパーへ向かってしまう。
 高清水はそんな彼女たちを追ってくるのだが、そこで梗が高清水をフった。理由は、高清水が鏡と同じベクトルの人間だからだ。鏡一人で大変なのに、それがもう一人増えるなんてとても彼女には耐えられないのだ。そういわれても諦められない高清水は、その後おっちゃんに連れ去られてしまうのだった。
 もし、梗は自分とお付き合いしてくれるような男性を選ぶとしたら、自分の負担を軽くしてくれるような男性がいいな、と考えていた。そんなことを考えている内に、スーパーへ着き、そこには二階堂や佐藤たちがいた。そこで、二階堂にも本当の梗はどちらなのか問いかけてみた。二階堂は狼なら誰でもわかると言い、見事に二人の違いを言い当てた。高清水に当てられなかった時、内心で少し残念がっていた梗にとって、それはとても嬉しくなるできごとだった。


○有明の狼たち
 白粉は冬の大規模同人誌即売会へ一般参加していた。準備に余念はなく、完璧な装備と言えただろう。そんな彼女が待機列にいると、顎鬚や坊主に茶髪に見つかり、「早瀬の狼」だと気付かれたことで、参加する上でのアドバイスをねだられた。白粉は以前自分にもアドバイスをしてくれたことのある狼を思い出しながら、彼らにアドバイスをしていった。
 そして会場の時間となり、顎鬚たちが人波にもまれる中、白粉は人波のすき間を縫うように移動し、目的のブツを次々と手に入れて行った。しかし、ある場所で長蛇の列に進行方向を塞がれてしまい、途方に暮れていた。そこへ、氷結の魔女らしき人物が、列を突破し、自分に向けてほほ笑みかけてきたのだ。その姿を見た白粉は、列の中に活路を見出し、無事に目的地へと辿りつくことができた。
 閉会後、駅へ行くと茶髪たちと出会った。そこで坊主が目当ての同人誌を手に入れられずに凹んでいることを知り、白粉はちょうどその同人誌を持っていたことから、坊主に読ませてあげることにする。そして、どうせ読むなら個室のある飯屋にしようということになり、4人は水上バスを使って、御徒町を目指す。
 白粉は、今回も素晴らしい愛の溢れる同人誌を手に入れられたこと、そしてこんな仲間に出会えたことを、大規模同人誌即売会に感謝した。
 ……というのはすべて夢だ。夢の中にリアル知人を登場させたことや、えらぶってた自分に悶え苦しむ白粉だった。

○間食版「4」『その、存在価値』
 槍水が1年生の頃の話。ある日のスーパーに来た槍水と烏頭は、二つの酢豚弁当に出会った。片方はパイナップルが入っており、片方は肉厚な弁当。槍水はどちらにしようか迷うのだが、先に烏頭が肉厚な弁当に決めてしまう。先を越されたことを悔しがった槍水だが、パイナップルがある方が肉が柔らかくなると言うのだが、それは間違いだと指摘される。しかし、知識が間違っていようと、今までパイナップル入りの酢豚を食べてマズイと思ったことはない。だから今回の酢豚もおいしいはずだと自信を持ちながら、二人は争奪戦に臨む。


○白粉花の年末
 いつもは一般参加している大規模同人誌即売会に、今回はサークル参加することになった白粉。HPに載せていた小説の傑作選と、完全新作の「獣道」を携えて、会場に乗り込んだ。
 昼ごろまでは人は来ないだろうと高をくくっていた白粉だったが、以外にも会場すぐに初めてのお客さんがやって来て、本を買って行った。自分が作者だということは公表しないことにしているものの、そのことが彼女にはとても嬉しい出来事だった。さらに、ネット上で交流のあった壁配置されている人にも出会い、苦労してまで来てよかったと思っていた。
 そんな彼女の前に、意外な人物たちがやってくる。一組目は、ナックラヴィーとそのパートナーのアンだ。実はアンは熱狂的な白粉の小説のファンだということが判明。世の中は狭いものだと実感する白粉だった。
 そして次の意外な訪問者は白梅だ。白梅に今日のことを伝えていなかった白粉だが、白梅が白粉のメモを見つけて追ってきたのだ。白梅に自分の本がバレてはマズイと思った白粉は、残り数冊となっていた本を勢いに乗って完売したのだった。その様子を見ていた白梅は、ほほ笑みながら昼食を差し出してくれた。その昼食は、サンドイッチやシーザーサラダといった、その場にあるまじき料理の数々だったのだが、二人はおいしくいただいたとさ。
 会場からの帰りの電車で、疲れていた白粉は白梅に寄りかかりながら眠ってしまう。彼女は眠りながら、白梅が転校してきて、周囲から浮いていた自分と親しくしてくれたことを思い出していた。こんなに自分に優しくしてくれる白梅に自分の趣味を隠している事に罪悪感を覚えながらも、白梅に嫌われたくないゆえに趣味を隠している事のもどかしさを感じながら、眠りについて行った。


○だいたいいつもそんな感じ
 佐藤と著莪は、おこづかいをくれると言う祖父の電話を受けて祖父の家に赴くのだが、祖父は友達と飲みに出かけてしまったようで、二人は翌日まで祖父の家で祖父の帰りを待つことになった。
 そんな二人は、残されている食材でタコさんウインナーを作ったりしながら飢えをしのぎ、最終的には今は海外旅行に行っている祖母秘蔵のりんごジュースを飲んでいた。しかし、そのりんごジュースが自然にアルコールを含んでしまっていたからか、飲んだ佐藤は酔ってしまう。そんな佐藤を看護しながら、著莪は佐藤といっしょの時間を楽しんだのだった。


○間食版「5」『弁当』
 槍水が1年生で、金城の腰巾着と言われていることを不満に思い、厚底のブーツを履き始めた頃のある日。その日の夕餉の話題に、弁当が挙がった。
 弁当は日本独自の文化であり、海外ではあまり見られない文化だと言う話だった。そんなこんなで、今日もHP部は平和に続いていた。


○やっぱりいつもこんな感じ
 クリスマスに著莪の約束を反故してしまった佐藤は、彼女の憂さ晴らしに付き合わされていた。そしてその帰り道、彼女の家に連れて行かれ、著莪に女の子の要素を感じ取りつつも、いつもどおりのバカ騒ぎを繰り返したのだった。


○間食版「特別編」『いい塩梅』
 槍水が1年生だった頃のある日。槍水と烏頭は部室で残りの部員の帰りを待っていた。そこへ秋鹿に担がれてボロボロの金城が部室に帰って来た。その日のスーパーはアラシや大猪の出現で弁当が取れたのは秋鹿だけだった。金城は意識もまばらだったのだが、秋鹿は特に金城を気に掛けることはない。そのかわり、烏頭が健気に金城を看ていた。そんな金城も、半額弁当の臭いをかいだり、半額弁当を食べさせてもらうと、急に元気になっていた。
 そんな時に秋鹿が話してくれたのが、レンジの使い方から塩梅の由来などだ。槍水は秋鹿の豊富な知識に感心しながら、彼らと楽しい夕餉を送るのだった。


○ANの5時の読書会
 白粉の書いた「獣道」について、熱狂的ファンで個人的に白粉のファンサイトまで作ってしまったアンが熱を込めて語っている。


○波の音
 初詣にやって来た佐藤と著莪は、初物についての話をしたり、幼少期に著莪が日本語をうまく喋れていなかったことから今のような性格じゃなかったことなどを語り合っていた。そんな中で、初物の話題からファーストキスの話題になり、二人か過去に何回もしていたことを思い出す。そして著莪は、初物の意味とは少し違うが、初物を食べると七十五日寿命が延びるのだと言いながら、佐藤に顔を近づけたのだった。


○白梅梅
 白梅は厳格な家庭で育った。そんな彼女は、男性よりも女性に魅力を感じてしまう世間とはズレた感覚を持っていた。そのことは当然親に相談することはできなかった。しかし、母親の書架で自分と同じような境遇が題材に描かれている小説を見つけた。その本の著者の本を読みつくした白梅は、著者にファンレターを送り、さらにファンレターの返事もやって来た。
 そして、そのファンレターの内容を知った編集者によって、彼女は読者の声の代弁者として雑誌に載ることになった。その編集者の名字は白粉といった。そして撮影の日。彼女は撮影所の隅っこでうずくまっている女の子を見つけた。一目ぼれだった。白梅は早速その女の子と話をしようとするのだが、一向に目を合わしてもらえず、会話も二言三言しかできなかった。しかし、彼女が白粉の娘である白粉花だということを知った白梅は、家に帰ってから彼女がどこに住んでいるのかを調べ上げ、親を説得して花の小学校へ転校してきたのだ。
 それから現在まで、白梅は白粉といっしょに学生生活を過ごしてきた。しかし最近の白粉は積極的に人と関わるようになっている。それが普段の行動や、今回行った大規模同人誌即売会で実感した。白粉のことが好きだけど、彼女にその気持ちを打ち明けても受け入れてもらえないかもしれない。しかし優しい白粉のことだから受け入れてくれるかもしれないが、心の底から受け入れてくれるわけではないだろう。だから、白梅は友達としていつまでも白粉の傍にいようと思っているのだ。だけど、白粉に隠しごとをしている現状が心苦しい。いつか打ち明けて、彼女にきちんと受け入れられる日を、白梅は夢見るのだった。





【感想】
 今回もボリューム満点の内容でしたね。ただ、短編集だからか、切ない話もあれば、作者さんが言うようにオチもなにもない話もありました。
 ですが、槍水先輩のストッキングや、石岡君の武勇伝、白粉の即売会に、白梅と白粉の切ない過去話など、見どころも満載でした。
 特に白粉と白梅の話が読みどころですね。二人とも世間から白い目で見られるような秘密を抱えているから、自分に優しくしてくれる親友に本当のことを告げられなくて苦しんでいる。でも、いつの日か、彼女ならわかってくれると夢見ながら、仲良く寄り添って行く。かー!なんとも悩ましい二人の心情に胸を締め付けられる思いです。まさかベン・トーでこんな話を読むことができるとは思いもしませんでした。
 その他にも、なんだか著莪がすごく優遇されている短編もけっこうありました。著莪好きなら悶えるような内容だと思うのですが、自分は槍水先輩派なので、彼女の一年生時代が描かれている間食版や、足マッサージの話が好みでした。
 
 

 


弁当って、今ではフランスでちょっとしたブームになったり、辞書に載ったりしているのだという話を聞いたことがある



スポンサーサイト
  1. 2013/01/29(火) 23:56:54|
  2. 集英社スーパーダッシュ文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫) 感想

ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)
(2012/03/31)
河野 裕

商品詳細を見る


循環する生命の、お話



【簡略ネタバレストーリー】
○A life-size lie
 その少年は病死するはずだった。だけど少年は、少女の姿をした死神に3日分だけ生かされた。死神には月々に回収するべき魂のノルマがあるらしい。そして、少年が死ぬはずだった月のノルマは達成し、翌月のノルマは達成できそうになかった。だから、今月の余剰分の魂である少年が3日後の翌月まで生きられるようにしたのだと言う。
 少年は生かされたことに喜びはしなかった。少年は生きることに興味がなくなっていた。
 生き延びても、少年はこれまでとかわらずに小説を読む入院生活を続けた。そしてこれまでと変わらず、佐伯という少女がお見舞いにやって来た。少年は彼女に小説の内容を語った。人々のよわい心が寄り集まってできた怪物に、世界で一番残酷な言葉を詰め込んだミサイルを発射するお話だ。でも少年はその小説を読み切っていなかった。佐伯は少年と他愛ない会話を交わし、退室していった。
 ずっと病室にいた死神は少年に問いかけた。佐伯が嫌いなのかと。死神は魂の綺麗さを重視する。佐伯と話していた時の少年の魂は濁っていた。だから佐伯のことが嫌いなのかと問うたのだ。しかし少年は否定した。まだ少年が幼かった頃に、片親であると言う同じ境遇に同調し、いっしょに泣いてくれ、いっしょに悩みを共有してくれた彼女を嫌いになるはずがないのだと。
 翌日も佐伯はやって来た。少年は読み終わった小説の結末を彼女に聞かせた。小説の結末は、ミサイルは怪物を通り越して宇宙に発射され、世界は怪物に覆われ、世界は変わることなく続いて行った。ミサイルを発射した人が、よわい心を壊すことを躊躇したからだ。よくわからないけど、ちょっといい話だと、佐伯と少年は思った。
 実は、佐伯は翌日には引っ越しをすることになっていた。新しい家族の家へ行くのだ。だから彼女は引っ越しても少年に会いに来ると言った。だけど少年はその言葉を強く拒絶した。拒絶された彼女は涙を堪えながら帰って行った。
 そこで改めて、死神は少年に死は怖くないのかと問いかけた。少年は、本当は死ぬのは怖いと打ち明けた。
 嘘をついていたのは佐伯に嫉妬していたからだ。自分と同じはずの彼女は、健康体で学校へ行き、友達を作り、朗らかな性格で、新しい家族も見つけた。でも大好きな彼女を恨みたくはなかった。だから自分のすべてに嘘をついた。正直になった少年は自分の嘘に押しつぶされそうになった。その時、死神が、きちんと死と向き合ってほしいと言った。
 翌日も佐伯はやって来た。少年は昨日のことを佐伯に謝り、二人は仲直りをし、明るい未来について話し合った。その日死ぬとわかっていながらも、少年は佐伯といっしょに未来を語った。少年はそれでよかったと思った。よわい心の小説を読み返しながら、彼は世界が優しい言葉で包まれることを願った。
 そしてゆっくりと苦しみながら死んでいく中で、佐伯との明るい未来を夢想していた。


○ジョニー・トーカーの『僕が死ぬ本』
 ジョニー・トーカーというペンネームの作家は、数々の名作児童書を世に送り出していた。よわい心の本を書いたのも彼だ。だが、『僕が死ぬ本』という本を最後に3年ほど本を出してはいなかった。「僕が死ぬ本」は、ジョニー・トーカーが死んでいく様を描いただけの本だ。作家はそれを期に、ジョニー・トーカーであることをやめたかったのだ。
 彼は、商業作家としてテンプレートの物語を描き、多くの人に感動を与える小説を書くことに飽き飽きしていた。彼は夏目漱石の『草枕』のような、彼が感動できる小説を描きたかった。
 彼はアイデアを出すために水族館へ出掛けた。そこで、少女の姿をした死神に出会い、郵便物を受け取った。中身は彼の書いた『僕が死ぬ本』だった。死神はその本を読んだ方がいいと言い、それと同時に、彼に死の宣告をしたのだが、彼はまともに取り合わず、水族館をでて、公園でアイデアがやってくるのを待った。
 その時、女性の担当編集から電話がかかって来た。本を送ったのは彼女だ。正確には、読者から贈られた本を彼女が送ったのだ。そして彼女は作家にまた小説を書いてほしいと言った。だが、彼はいっこうに取り合おうとはしなかった。ジョニー・トーカーとして小説を書きたくはなかったのだ。最後には担当が折れて、電話は切られた。だが最後に彼女は、送った本を読んで気が変わったら連絡がほしいと言った。
 彼女や死神が読めといったことに興味を惹かれ、彼は本を読んだ。予想通り、本の中でジョニー・トーカーは死んでいた。しかし、最後のページに、読者であろう子どもの書いた文が載っていた。ジョニー・トーカーは復活し、これからも楽しい物語描いていくのだと。
 彼は、これまで書いた作品は、本当の意味で誰の心にも届いていないのだと思っていた。しかし、その文章を書いた子どもには、確かに届いていたのだ。その子供の文章は彼を感動させた。そしてこの感動させてくれた誰かのために、ジョニー・トーカーの物語を描こうと思い、携帯で文章を打ち込みながら家路を急いだ。
 そしてその帰路で、彼は事故にあった。傍らには死神がいた。物語を描きたい彼の望みを、死神はすげなく断った。だから、彼は書きあげたメールを、担当編集に送ってほしいとだけ頼んだ。
 そして担当編集の元に、メールは届いた。
 自分を蘇らせてくれた誰かへの感謝と、これからもジョニー・トーカーとして物語を描いていこうと思うといった、希望に満ちた文章が、そこにはあった。


○八月の雨が降らない場所
 ヒカリは死ぬつもりだった。彼女は小さい頃から父親という存在がいなかった。周囲はそのことに同情したが、父親がいない事が当たり前なヒカリにとって、同情は不愉快だった。彼女には優しい母親がいた。ある年のヒカリの誕生日には、彼女の名前の由来となった朝陽を見せてくれたこともあった。その朝陽を見てからは、毎年の誕生日は朝陽を見ることにしていた。そして、母親が亡くなるまで、彼女の誕生日に雨が降ることはなかった。しかし、母親が死んだ年の誕生日には雨が降った。そして母親が死んでからというもの、再び周囲からの同情に囲まれることとなり、そんな生活に彼女は疲れていた。だから、もし今年の誕生日―明日のことだ―に朝陽を見ることができなければ、死のうとする。そして今年の誕生日の天気予報は雨だ。
 そんな彼女の前に、原田という男が現れる。彼は本来ならば数日前に死ぬはずだった。そこを、少女のような死神に、ヒカリを助けることができるなら10日だけ延命させてあげると言われ、これを承諾した。原田はヒカリにネズミ講を使って世の中を良い人で埋め尽くす理想である幸福の連鎖を語った。もちろんそんなことは不可能だとわかっていた。だが、ヒカリの興味を引くためにこの話題を使った。そして、この連鎖の会員になってくれとヒカリに頼んだ。ヒカリは、明日この街で朝陽を見せてくれるのなら会員になると言い、原田はヒカリに朝陽を見せることになる。
 翌日の早朝。天気予報の通り、外は大荒れとなっていた。ヒカリは原田の車に乗せられ、彼が努める航空会社へ連れて行かれる。原田はヘリコプターの免許を持っており、ヒカリに雲の上から朝陽を見せようとしたのだ。大荒れの雲の中を突っ切って、陽が昇るちょうどの時間に、二人は朝陽を目にした。
 その時、原田はヒカリに、どうして朝陽が見たかったのかと問うた。ヒカリ自身、どうしてかわからない、自殺しようとした明確な理由も、でも、彼女は答えた。それは、自分の誕生日だからだと。
 こうして彼女が自殺することはなくなった。それと同時に、彼女は幸福の連鎖の会員となった。
 死神は原田に、これからどうするのかと訊いた。原田は、ネズミ講のために必要なもう一人の会員を探すのだと答えた。彼の小さい頃の夢である、教科書に載れるような人物になるため。未来の教科書で、世界を平和にした幸せの連鎖の始まりは、自分だと記されるような、夢物語を追うために。


○クラウン、泣かないで
 佐伯春香は新しくできた母親の実家で暮らしていた。そこには、クラウンをやっていたというお祖父さんがいた。これからは佐伯にとってのお祖父さんになるのだが、彼女にはどうにも実感できず、心の中ではクラウンと呼んでいた。引っ越し前にクラウンと会っていた佐伯は、彼の話しやジャグリングを楽しんでいた。
 佐伯は引っ越してきてから、以前まで仲の良かった少年が死んだことを知らされ、落ち込んでいた。父親は仕事で忙しく、母親は出産のために入院していた。だから、家には佐伯とクラウンしかいない。しかし、クラウンは以前のようにジャグリングもできなければ、佐伯を自分の子どもと間違えるようになっていた。それでも彼女には、クラウン以外の話相手がいなかった。
 そんな時、クラウンが少女のような死神とまともに話している所を盗み聞きしてしまう。その話の中には、彼はクラウンではなくピエロということや、自分のせいでクラウンは痴呆のようなマネをしているのだということを知る。
 すると、今度は佐伯の前に死神が現れ、クラウンを死なせるために、佐伯がかけた未練を解消してほしいとだけ言って消えてしまった。
 クラウンの未練とは何かを、佐伯はピエロとクラウンの違いから探り、彼女は以前見たクラウンの写真から、彼が実はピエロだったことを突き止めた。
 そのことを知らされたクラウンは白状した。佐伯は仲の良かった大切な友人を最近失くし落ち込んでいた。そこへ、現状で彼女の支えとなっている自分がこれ以上仲良くなっては、数日もせずに死んでしまうことで、再び彼女を落ち込ませてしまう。だから、これ以上彼女と深く関わろうとはしなかったのだと。
 そのことを知った佐伯は、当然悲しんだ。だけど、クラウンは佐伯こそが本当のクラウンだと言い、クラウンには泣かずに笑ってほしいのだと言った。そんな祖父のために、佐伯はこれまで祖父といっしょに食べることができなかった食事を、いっしょに食べてほしいのだとお願いした。
 その夜、彼女の元へ死神がお礼を言いにやって来た。そこで佐伯はクラウンを死なせないでほしいと言う。しかし、それは叶えられるはずもなかった。死神は、命は循環するものだと言った。佐伯の大切な人だった少年と、作家、ヘリコプターのパイロット、そしてクラウンの魂を使って、新たな魂を作るのだと。そしてその魂は、これから生まれてくる佐伯の新たな家族になるだろうと。
 

○プロローグ/再びプロローグ
 これから生まれてくる予定の生命が、様々な設問に答えていた。だけど答えはいつもわからない。そんな彼を突き動かす4つの光があった。4つの光は彼を前へ外へと押し出していく。彼はわけもわからず、ただ苦しみから逃げ出すように外へと生まれ出た。





【感想】
 どれもこれも最高にハッピーではないものの、どこか晴れ晴れとした気持ちにさせてくれるお話ばかりでした。
 死が訪れた人の誰もが死ぬことを恐れていた。だけど、彼らはただ死んでいくことを恐れていただけかもしれない。
 病気の少年は世界に優しい嘘を残すことで、明るい未来を夢想しながら死んだ。作家は生涯で最高の文章を見つけて、希望を胸に抱きながら死んでいった。パイロットは、小さな頃の夢を夢見ることを思い出して死んでいった。クラウンは、完璧であるクラウンを目指しながらも必ず失敗することで人を笑わせる事のできるピエロであることを誇りに思いながら死んでいった。
 誰もが死を迎えた時に、晴れやかな気持ちを迎えていた。そしてその晴れやかな気持ちは、死神が言うように綺麗な魂だったのだろう。そしてその綺麗な魂は、新たな魂となるために融合し、生命として誕生する。その目を覚ました赤ん坊を、人々は祝福するのだ。ここに、タイトルの由来があることに、驚嘆しました。なんて喜びに満ちたタイトルなのだろうかと。『サクラダリセット』もそうでしたが、タイトルのセンスがとても素晴らしいですよね。
 死神の少女はすべての話に登場しながら、すべての話の脇役でしかありませんでした。話の主人公は、やはり話の中心の人で「人生を生きる人に脇役はいない」という話を表現しているような気がしたのですが、おそらく考えすぎでしょう。
 また、それぞれの話が、ところどころでリンクしているところも、特徴ですね。こういうちょっとした点でも、すべてのお話はどれも同じ世界で起こる普通のことなのだと言っているような気がしたのですが、おそらく考えすぎでしょう。
 とにかく、『サクラダリセット』にも劣らない、晴れやかなお話でした。大変面白かったです。

 



次回作をとても楽しみにしております!


  1. 2013/01/27(日) 21:06:51|
  2. 角川スニーカー文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

大日本サムライガール 4 (星海社FICTIONS) 感想

大日本サムライガール 4 (星海社FICTIONS)大日本サムライガール 4 (星海社FICTIONS)
(2013/01/16)
至道 流星、まごまご 他

商品詳細を見る


ピンチを救うのはいつだってライバルという存在なのだ、というお話



【簡略ネタバレストーリー】
 「ひまりんプロジェクト」という自分の政治系冠番組に、日毬は感動していた。これは政界進出の大きな一歩になると。しかし颯人は日毬ほど期待はしていなかった。これまで成功している政治討論番組は当たり障りのない着地点があるからこそ続いていた。しかし、日毬の強固な政治思想がはたして視聴者に受け入れられるのか心配なのだ。
 その一方で、凪紗が日毬の協力を得て撮影に臨んだり、黒谷が日毬を左翼と本質的には変わらないと評して日毬を怒らせたり、日毬と千歳のCD収録をこなしたりしていった。そんなこんなで順風満帆のひまりプロダクションは、経営会議にて今後の目標として、新たなアイドルの開拓と、Kaguraのようなブランドを独力で立ち上げる新規事業の模索、増えてきた日本大志会の資金で日本大志会の広報活動を進める、資金運用などの目標を立てた。
 そしていよいよ「ひまりんプロジェクト」の収録日を迎えた。現役議員や大学教授や自衛隊員など、各界から知識人を招き始まった番組は、予想よりも混沌としていた。その原因は日毬だ。日毬は司会者という立ち位置にもかかわらず、自らの主義主張を述べるばかりで、コメンテーター達から挙がる意見を一刀両断してしまい、議論の体をなさない状況を作り上げてしまったのだ。それでも日毬の政治番組ということで、1回目の放送は高視聴率を記録した。しかし、世間の声は困惑を露わにし、受け入れられることはなかった。日毬はショックを受け、落ち込んでします。
 そんな中で、颯人たちは経営会議で新規事業の話を進めていた。由佳里が「ひまりプロジェクト」に付随して、政治ポータルサイトの立ち上げという国家関連事業の提案をしたのだ。現行の公職選挙法ではネットでの選挙活動に関する言及話されていないものの、公職選挙法自体があやふやな法なため、政治家たちはなかなかネットでの活動に手が出ないのが現状である。そこで、一般社団法人を立ち上げ、ネットの公認選挙運動の場を設けようとしたのだ。自社の旨味は企業献金だ。資金は自社と蒼通などの財界から引っ張ることになる。
 この事業を確立するために、荘司が選んだ緒方という現職代議士の下を訪れる。緒方は元総務省の官僚だったことや、中央選挙管理委員の経歴を持つ。緒方はこの提案に同調してくれた。さらには、警察が避けては通れないことや、衆議院法制局へ話を持って行くべきだと言うアドバイス、立ち上げ後の天下りの調整や、政治献金のために法人に自身の部下を配することなどを取り決めた。
 それからは、蒼通やテレビ局や大企業へ営業に出向き、出資してもらうと同時に、緒方の紹介で警察庁のOBである原田に警察周りの協力を願い、緒方と同じように部下を引き受けることとなった。
 一方で、「ひまりんプロジェクト」は低迷し続け、杏奈などのアイドルを使ったテコ入れじみた実験放送もしてみたが、視聴率が上向くことはなく、日毬は自分のせいだと落ち込んでしまう。そこで、颯人は気分転換に、以前日毬と約束していたデートに誘う。デートでは日毬の好きそうな政治色の強いB級映画を鑑賞し、高級懐石料理に舌鼓を打ちながら、日毬のアメリカを敵に回しかねないような政治指針の話や、颯人の受けた帝王学に基づいた考え方などによる論議を交わした。日毬はこれに気を良くし、また時間がある時はデートをしようと約束するのだった。
 そんな悩みを抱える日毬と同じように、凪紗もモデル業をそつなくこなす方法を模索していた。凪紗が自然と穏やかな顔つきになれる方法として、脳内で剣道を絡めてカメラの前に立つようにする考え方が当たり、なんとか仕事をこなせるようになった。さらに、新しく立ち上げるサイトの案内音声も凪紗がすることになる。
 ある日、日毬は討論番組のゲストとして大阪に出張に出かけた。討論相手は槙野栞という若干18歳にして会計士の資格を持ち、コテコテの関西弁を喋る社会共産党員の少女だ。左翼を毛嫌いする日毬は栞と会う前から栞に嫌悪感を抱いており、栞の方も日毬と出会った瞬間から喧嘩を売るほど二人の仲は険悪であり、そんな中で番組は始まった。番組は予想通り荒れに荒れ、後半はただの口論になってしまっていたのだが、大阪のプロデューサーとしてはアリのようだった。
 収録後の控室でも二人の口論は絶えなかったのだが、そんな時に、ふと日毬が栞は「ひまりんプロジェクト」で使えるのではないかと颯人に提案した。颯人もそのアイデアを奨励し、タレントではない栞をひまりプロダクションに勧誘する。栞もすっかりその気になり、アイドルになることを承諾し、千歳や日毬の時のように親御さんに挨拶にうかがうことになる。
 栞の家はドヤ街である釜ヶ崎にあり、さらに栞の父親は社会共産党の元大物衆議院議員である槙野光造であった。しかし、光造は栞の育ての親であり、栞とは血のつながりはなく、妻はすでに他界している。栞は光造への義理のようなもので社会共産党に所属しているだけである。とはいえ、彼女自身がマルクス主義者で左翼を名乗っていることに違いはない。そんな父親であるためか、極右である日毬を見たとたんに激昂し、颯人は保護者の承諾を得ることができなかった。それでも東京へ行ってアイドルになろうとする栞は、勢いで親子の縁を切ると言いだし、光造も売り言葉に会言葉で承諾してしまう。
 これで保護者の承諾は必要ないと言う栞に困惑する颯人と日毬だったのだが、栞はそんな二人を気にも留めずに東京へ出発することを釜ヶ崎の住人に報告に回ることにした。栞の知り合いには浮浪者やブルーワーカーにお巡りさんにNPO団体の職員などがおり、その誰もが彼女の先行きを祝福していた。その後、颯人と日毬は栞の勧めるホテルに一泊した。
 翌日、颯人と日毬が栞を迎えに行くと、いまだに親子喧嘩は続いていて、その末に光造は家を出て行った。そして、栞は育ての母のいる仏壇にお参りを果たし、実家への未練を失くしたところで出発した。すると、最寄駅前に黒山の人だかりができていることに気づく。そこにいる人々は栞を送りだすために集まっており、激励の横断幕を掲げ、栞への声援とこれまでの思い出を語り続けた。彼らの心遣いに栞は涙した。
 彼らに別れを告げた栞と颯人たちは新大阪の新幹線に乗り込んだ。その時、栞に光造から電話がかかってきて、間もなくするとホームに光造が現れた。彼は丁寧に書きあげた保護者承諾書を颯人に渡し、栞へ少なくも貴重な財産を渡した。そしてこれまで素直になれなかった栞も、発車間際に光造へ向けて東京で一旗あげてくることを約束した。
 東京のオフィスへやってきた栞は、プロダクション関係者たちに歓迎された。そして、由佳里はさっそく栞をモデル、グラビア、「ひまりんプロジェクト」への参加などのスケジュール調整を行った。その中で、栞はなぜかグラビアにだけは難色を示していた。住むところも決めずにやってきた栞は、しばらくは千歳と同居することとなった。後日、颯人は千歳から栞が極度に着替えを覗かれることを嫌がっていることを知らされ、グラビアに好意的ではなかったことに関係があるのかと勘ぐる。
 そしてその真相は、日毬たちの撮影会見学で暴かれる。撮影後の控室に杏奈がやって来て、自己紹介をした栞の胸をもんだ杏奈が、栞の胸は偽物だと見抜いたのだ。栞は日毬に対抗するためにやったことで、なんとなく引っ込みがつかなかったのだそうな。そのことが微笑ましくて笑ってしまう颯人だが、栞に共感を抱いた比較的貧乳らしい由佳里に怒られてしまう。そいて貧優であることを気にする栞に、杏奈は気にすることはないと励まし、栞はその励ましを受けて、これからアイドルとして頑張っていこうと決意するのだった。





【感想】
 今回はこれまで以上に盛りだくさんの内容でした。
 ライバルの登場に、国家関連事業の着手、政治家とのパイプ形成に政治討論番組や日毬と颯人の濃い論議などなど、いれでもかとつっこんだ話が多かったです。そのせいか、知識の乏しい自分としては完全に理解することはできませんでした。ですが、政治や経済のことに疎くても、会話形式で話が進み、地の文で補足されるので、話の筋や内容ががそこそこ理解できるのがいいですね。
 栞の出番が後半からで、少ししか出ていないのですが、それを帳消しにするだけのバイタリティと個性を、彼女は持っていましたね。日毬との関係が予想以上に険悪で驚いたのですが、颯人が考えるように、ケンカするほど仲がいいってことなんでしょうね。日毬と栞の絡みは今回で十分すぎるほど披露されたので、次回から「ひまりんプロジェクト」やその他の場面で、栞がどう動いていくのか気になります。
 そして目立つことはありませんが、今回も由佳里の素晴らしさが随所で光っておりました。蒼通で見せた営業手腕や凪紗や栞への気遣い、超個性的なメンバーばかりのなかで、こういう庶民的感覚を持ち、かつ溌剌とした美人さんという彼女の存在が一服の清涼剤のようで和みます。颯人は早く由佳里に目を向けなさい。
 新規事業に政財界を絡めることで、この本の謳い文句である”政治・経済・芸能”に本腰を入れはじめた印象を受けます。『羽月莉音の帝国』のように、ここからどんどん話の展開を大規模な者にしていってもらいたいです!

 



数少ない挿絵でちゃんと千歳が描かれていることで、千歳が使い捨てキャラになっていなことに安心してる


  1. 2013/01/25(金) 23:02:13|
  2. 星海社FICTIONS
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! (富士見ファンタジア文庫) 感想

おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! (富士見ファンタジア文庫)おおコウスケよ、えらべないとはなさけない! (富士見ファンタジア文庫)
(2011/11/19)
竹岡 葉月

商品詳細を見る


本と恋に目覚めたのに肝心の想い人がいなくなってしまう、お話



【簡略ネタバレストーリー】
 中学2年生の津賀昂介は、顧問の誘いで半ば強引に入部していたのだが、ケガによる入院を期に野球部を退部していた。そして空いた時間に、イケメンな友人の沖原良夜と図書室でなんとなく時間を潰していた。
 そんな時、天野井螢と殿村クララ・アーベントロートという二人の少女と出会う。螢は本の素晴らしさを広める気持ちで、暇そうにしている昂介に読書を勧める。しかし読書に興味がない昂介は断り続けるので、螢は「抱擁の道程」という本を貸し、それを読み終えたらラストシーンの再現を自分がしてあげるという約束をする。昂介はラストシーンがちょっとエッチなことだと期待して読み始めるのだが、本の内容は予想とは全く違っていた。それでも、読み進める内に昂介は「抱擁の道程」に引き込まれていき、ついに読み切った。
 それからは、昂介は螢からお勧めされる本をどんどん読破していった。中には螢の友人であるクララの本も勧められることもあった。クララの本は、本人の引っ込み思案な性格からは想像もつかないグロテスクな小説もあり、驚かされることがあった。
 昂介、良夜、螢、クララは図書館でよく集まるようになり、螢はそんな集まりを「東中図書室友の会」と命名した。
 テストが近づくと、この4人でテスト勉強をすることになった。場所は螢の家。螢の家はいわゆる旧家であり、日本庭園があるほどの豪邸に住んでいた。4人は順調に勉強を勧めていたのだが、突然螢の祖父母の客が来ることになり、お開きとなった。
 その帰り道、螢は客用にお茶菓子を買うために途中まで昂介といっしょに歩いていた。そこで昂介は、姉が女の子はみんな恋愛が好きだと言っていたことを思い出し、螢は恋愛小説を読まないのかと訊いてみた。すると螢は豹変したように恋愛について侮蔑の感情をあらわにした。
 後日、仲良しである図書委員の物集月穂のお願いで、教室へ彼女の荷物を取りに行った昂介は、教室でキスをする男女を発見した。昂介は教室に入りづらそうにしていたのだが、昂介を追ってきた螢は何の気なく教室から荷物を取って来た。その時も、螢は恋愛について否定するのだが、試しにキスをしてみないかと昂介に提案する。しかし、ハプニングが重なり、昂介はキスをすることができなかった。それでも、この時昂介は自分が螢に恋をしていることを自覚した。
 ある日、月穂から星南高校の文化祭へ行ってみるといいと言われた4人は、文化祭へ出掛ける。そこで、おかしな高校生に捕まり、旧校舎にある図書室へ連れて行かれた。その図書室が実に魅力的で、螢はすっかり気に入ってしまい、4人で星南高校へ進学しようと約束したのだ。しかし、星南高校は進学校で、昂介には難関であった。
 それでも螢と離れたくない昂介は、星南高校を目指す決意をし、さらには螢に告白しようとした。告白は文化発表会の後にすることにした。
 そして文化発表会の日。昂介は螢がコッソリ電話をしているところを見つける。しかし、螢にそのことには触れないでほしいと言われる。さらに、螢は文化発表会をサボろうと提案してきた。昂介はその提案に乗ってしまい、二人は学校へやってきた。誰もいない体育館で、螢がピアノを弾きながら歌うはずだった曲を二人で歌う。そこへ校長が現れ、二人は逃げ出した。しかし、なかなか逃げ切れず、昂介は螢だけを逃がした。
 その翌日から、螢は学校を無断欠席するようになった。噂では一家で夜逃げしたなんていう話が出回っていた。教室では螢を中傷する輩が出てきて、そんな連中を昂介は殴り、暴力沙汰を起こすようになってしまう。
 2年後、昂介たちは見事に星南高校進学を果たした。しかし、そこに螢の姿はない。しかし、そこで螢に瓜二つの姿をした宮沢彗と出会う。昂介は入学式の日に彗を助けたことから、彼女に懐かれてしまう。さらには、彗を助けたことで入学式に出られなかったことや、ケンカしていた日々がバレて、クラスメイトから恐れられてしまう。
 そんな中、工事中だった旧館が復活し、かつて魅了された図書室を訪れた昂介たち。しかし、螢がいない寂しさも同時に味わってしまう。そこへ、昂介を尾行していた彗がやってきて、彗に付きまとわれて辟易としていた昂介はつい怒鳴ってしまう。
 この一件でぎくしゃくしてしまう二人は、バスハイクのレク係に任命される。しかし昂介は彗を避けてしまい、レク係の仕事もやらずに当日を迎えた。
 当日、昂介はクラスメイトの輪の中にも入れず、一人で読書をしていた。しかし、そこへクラスメイトがやってきて、昂介もレクリエーションに混ぜたり、彗がした仕事が昂介の手柄になっていることなどを知らせる。さらに、良夜の忠告で、彗に謝ったほうがいいとも言われていたことから、昂介は彗を探して謝ろうとする。しかし、なかなかタイミングが合わず、さらには彗が行方不明になってしまう。このことが、昂介に螢が突如失踪したことを思い出させ、彗も消えてしまうのではないか恐怖させた。
 雨が降りしきる中、昂介は必至に彗を探し、なんとか彼女を見つけ、謝った。それでも、昂介は彗のことを好きにはなれない。
 バスハイクから家に帰ると、家の前でクララが昂介を待っていた。彼女は昂介に「まちがえないでね」とだけ言って、帰って行ってしまった。



【感想】
 今時の長文タイトルのせいで偏見を持っていましたが、この作品はそこらへんの萌え重視の長文タイトルとはわけが違いました!良い意味でのタイトル詐欺です。
 中学生時代は、螢とクララ両方とも引っ込み思案な感じだったので退屈でしたが、その分主人公が読書に目覚めていく様や、螢を気にしていく過程がとても素敵に描かれていたので一気に引き込まれました。出てくる本も実在するもので、でも「抱擁の道程」は架空のものだったりするところがちょっとしたポイントに感じます。
 高校になると彗が現れ、そのことで混乱する昂介たちが、どう彗と関わっていくか悩んでいるところも面白かったです。今のところは昂介の混乱が強く描かれていますが、最後の引きを見るあたり、同じく混乱していたであろうクララが次回どうするのか楽しみです。また、残された謎の解明も期待しています!
 その他に、サブキャラが魅力的ですよね。ランガナタンの勧誘員の長老だったり、マスカラ唱子やパシリ勅使河原君などなど。こういった脇固めがされている作品は大好きです。
 読書メーターで見かけた感想にもあったんですが、「わたしたちの田村くん」に似てますよね。ダブルヒロインだったり、ヒロインが交互に出てきたり、中高で物語が進んだり。「わたしたいの田村くん」は好きだったので、この作品も好きになりそうです。
 次回でこの作品は完結ということで、この点も似てますね。数巻で終わる作品はなぜか好きな作品が多い身としては、次回が期待大であります。




自分もこんな歳のころに面白い本やかわいい女の子と出会いたかった


  1. 2013/01/24(木) 20:49:04|
  2. 富士見ファンタジア文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (ガガガ文庫) 感想

下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (ガガガ文庫)下ネタという概念が存在しない退屈な世界 (ガガガ文庫)
(2012/07/18)
赤城 大空

商品詳細を見る


健全過ぎて不健全な世界に飛び交う流言卑語の、お話



【簡略ネタバレストーリー】
 政府による情報規制によって、性に関する一切の情報、情報物が規制された時代。PMと呼ばれる超小型携帯端末による監視システムと、それを容認する「公序良俗健全育成法」によって徹底的に規制されていた。
 そんな時代において、かつて正しい性知識を広めるために活動したことでテロリスト認定された父を持つ奥間狸吉は、風紀不良校から風紀優良校である時岡学園へ進学してきた。その入学式の朝。狸吉は、電車で痴漢の濡れ衣を着せられた時岡学園生を助けたのだが、逆に自分が痴漢扱いされてしまった。性に関する事件専門の警察組織である善導課に追われる狸吉だったが、そこへ、ペロリストを名乗り、頭にパンツを被り全身をタオルで覆った変態こと「雪原の青」が現れ、規制されているはずの淫語をまき散らしながら善導課を引き付けたのだ。狸吉はそのおかげで、なんとかその場を切る抜け学校へ向かった。
 入学式では、憧れの先輩であるアンナ・錦ノ宮の演説を聞いて気合いをいれた。しかし、その後に教室で出会った不和氷菓に、性知識を教えろと言う尋問を受けて辟易としていた。狸吉は風紀最底辺校にいたことや父親が父親だっただけに、性知識は豊富であり、PTA会長でありアンナの母親であるソフィア・錦ノ宮や理事長からそういう知識の流布に関して釘を刺されていた。
 そんな氷菓と狸吉のところへ、華城綾女という女生徒が狸吉を生徒会へ勧誘にやって来た。すると、氷菓も狸吉への手出しを中止した。
 放課後、狸吉は綾女に連れられて生徒会室に行くと、アンナと今朝痴漢扱いされていた男である轟力雷樹がいた。轟力は狸吉の経歴から彼を信用していなかったが、アンナは狸吉を歓迎した。実は、「雪原の青」は時岡学園にも現れる。だが、「雪原の青」の何がテロ行為なのかわからない生徒会にとって、性知識がある人材は貴重なのだった。結局その日の会議は自己紹介で終了した。
 会議終了後、狸吉は綾女に連れられて、喫茶店を訪れた。そこで綾女は時分が「雪原の青」だということを明かし、さらには普段からは想像もできないような饒舌ぶりで下ネタを連発していた。彼女がPMの規制に引っ掛からないのは、彼女の親である元大物政治家が裏で手を回していた携帯電話によって、1日3分間だけPMの機能を無効化できるからだ。しかし、彼女は狸吉その経歴から自分の味方だと思って正体を明かしたのだが、狸吉にその気はなかった。そこで綾女は、協力しなければアンナに害が及ぶという脅迫と、アンナとの恋路の援助をすることを約束に、狸吉を味方に引き入れ、反社会テロ組織SOXを立ち上げた。
 綾女の目的は性知識の流布。それは、ソフィアの出す「エイチ禁止法」というPMのGPS機能を無条件で使用できるようにすることと、そのための機能を股間につけるというバカげた法の成立をなくすためだ。そのために、狸吉は今となっては貴重なエロ本のコピーを学校のいたる所に隠して回った。しかし、それらのエロ本に本番シーンは描かれていなかった。もとより性知識のない生徒たちに性知識を植え付けるには本番シーンが必要となってくる。そこで、綾女はある方法を思いつく。
 全校集会が行われる日。全校集会でエロ本のコピーをばらまくテロを敢行し、二人は教員や生徒会メンバーを外におびき出した。そして狸吉は女装して囮となり彼らを引き付けていた。しかし、アンナの超人的な身体能力の前に捕まりそうになる。そこへ、全校集会でハエのドッキングシーンを事細かに実況した綾女から連絡が入り、生徒会メンバーとして、狸吉はアンナを体育館へ誘導した。結果、テロは大成功を収めた。
 テロ後、アンナはこれまで以上に風紀取り締まりに力を入れ始めた。一方で、狸吉の元に3年の早乙女乙女という画家が訪れる。乙女は綾女がエロ作家として目をつけていた人物である。彼女は囮をしていたのが狸吉だと気付いていた。そして彼女はそれを公表されたくなければ、自分のコイ路を手伝えと言ってきた。しかし、相手はアンナだという。それは恋愛ではないと思うものの、健全過ぎる教育によって歪な感情となってしまっていたのだ。時を同じくして、アンナはストーカーに付きまとわれていることが判明し、乙女が犯人ではないかと疑われるものの、狸吉はそれをなんとなく否定した。
 後日、ストーカーをおびき出すために綾女とアンナが出かけたところを、乙女と女装した狸吉、それと轟力で警護していたところ、ストーカーが現れた。そこで、狸吉はアンナを守ることに成功したのだが、入院してしまう。さらには、アンナから避けられるようになり、アンナを守ったことから轟力からは認められることとなった。一方、綾女は乙女に正体を明かし、エロ絵を書かせるために性知識を教えていた。乙女は、あれからアンナに感謝され、アンナをモデルに絵を描けたことで満足していた。
 狸吉が退院したある日、綾女はドッキングシーンの描かれたエロ本が眠る場所があるという情報を、同志から入手した。しかしその場所は現在、善導課から守るために入場規制されていた。規制が解けても善導課がいるからテロリストには取りに行けない。そこで、時岡学園の生徒たちに取りに行かせようと画策するのだった。
 その後、狸吉にストーカーができたり、ソフィアの学校訪問によって「エイチ禁止法」の投票日が入場規制解除の日と重なったりして、ピンチに陥る。そこで、乙女にドッキングシーンを描かせるために、狸吉がストーカーの愛を受け入れることになった。その翌晩、狸吉の家に侵入してきたストーカーによって狸吉はひん剥かれてヤラれそうになるが、そこに偶然綾女がやってきて、ストーカーの正体がアンナだとわかる。アンナはその異常な行為が狸吉への愛であり、それに気付いたのはあのストーカーから守ってもらった時だと言う。憧れの人の異常さを目の当たりにした狸吉は、普段の彼女とのギャップに理想を打ち砕かれた。
 しかし、それが乙女には好影響だった。PMに引っかからないために、彼女は口で筆をとり、それはそれは素晴らしいエロ絵を生み出した。この絵によって、全校生徒の間にドッキングとはなんたるかが広まった。それによって、エイチ禁止法がどれだけイカれた方策かが分かった生徒たちは、投票日に投票場所である学校へ行かず、お宝の眠る山へ向かって行った。それを扇動していたのは氷菓だ。ソフィアはそれを何とかしようとするのだが、綾女の妨害によってそれもできなくなっていた。
 綾女と狸吉は、怪しまれないように山に向かい、エロ本を探していた。しかしそこへ、アンナが追ってきたのだ。綾女は変装していたので綾女だとバレはしなかったが、アンナに軽々と追いつめられてしまう。そんな時、綾女に逃がされた狸吉は目的のお宝とガーターベルトに女性下着を発見した。そして綾女を助けるために、狸吉もまた変装してアンナに挑んだ。アンナは変装したため狸吉とは気付かず、でも狸吉のようにその変態に惹かれてしまう自分が嫌でその場から立ち去った。
 後日、生徒たちを罰しても旨味がないないため、生徒に罰が下ることはなかった。だが、学校側は生徒たちに強制的に法案賛成票を投じさせた。それに怒りを覚えた狸吉は、開票当日、全国中継でソフィアが開票する場所にテロを仕掛け、時岡学園の票を、大量のエロ本のコピーにすり替えたのだ。その逃げ道で、またしてもアンナに迫られる狸吉だったが、下ネタが大好きだった頃の自分のためにも、SOXの活動を続けようと決心するのだった。




 


【感想】
 この作品、イカレてやがる(褒め言葉)。
 下ネタが題材ながら、構成やキャラクターの濃さや世界観などなど、とても楽しめる設定と展開満載でした。いやー面白かった。 
 綾女が最高のイカレポ○チかと思いきや、その上を行くアンナの異常さ。そりゃ、ラブジュースクッキーとか二次ならご褒美だけど、リアルにやられるとドン引き確定ですよ。さらには逆レ○プかまされてるんだからトラウマものですよ。
 それに造語や言葉のセンスがいちいち面白いw。清廉指定都市てwSOXてw受け継がれるDの遺志w。青春画家が春画家になったあたりも好きです。そして言うに及ばず、ハエのドッキングシーンも!あそこが一番熱かった。
 こんなバカげた話なのに、話の流れが見事ですよね。キャラの行動がそのままストーリーをどんどん動かしていくんですから、楽しんで読めました。
 下ネタの物語を読んでいたはずなのに、読後感が清々しかったのはなんでだろう。これが賢者タイムなのか。
 すでに2巻も発売されているということなので、1巻の煮え切らない引きがどうなっているのか楽しみにしています。



 

棒があるなら突っ込めばいいじゃない!(某迷言風に)


  1. 2013/01/20(日) 18:47:16|
  2. ガガガ文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

ゴールデンタイム番外 百年後の夏もあたしたちは笑ってる (電撃文庫) 感想

ゴールデンタイム番外 百年後の夏もあたしたちは笑ってる (電撃文庫)ゴールデンタイム番外 百年後の夏もあたしたちは笑ってる (電撃文庫)
(2013/01/10)
竹宮ゆゆこ

商品詳細を見る


陽気なリア充たちの、お話



【簡略ネタバレストーリー】
○光男の部屋
 ディスコでバイトした話の後日談。
 もともとは超裕福な家庭に生まれたボンボンである柳澤は、香子から逃げるために万里たちの通う大学へ、親の制止を振り切って入学した。そのせいで、現在は学費と家賃以外は面倒を見てもらえない状態の柳澤。万里にしてみれば、それでも十分恵まれているものだ。
 そんな柳澤は、部屋の掃除をすることのない汚部屋の主だった。だが、そんな汚部屋からおさらばするために断捨離をすることを決意し、お助け役として万里をよんだ。
 万里は、その汚部屋(2次元くん曰く、魔窟)で巨大ゴキブリやハウスダストの唖然とさせられる中、サッシ越しに部屋を覗いている不審人物を発見した。その不審者はすぐにいなくなってしまったが、もしや空き巣ではないかと懸念し、柳澤に何か盗られたものはないかと確認すると、案の定小物がいくつかなくなっていた。さらに、不審人物の去った所に、なぜかボラギノールが置いてあった。
 万里は大学でそのことを香子に相談すると、ボラギノールは昔香子が立てた柳澤は痔だという噂を知っている人物の仕業ではないかと疑った。そこから香子はネットで情報網を広げることで、ディスコでのバイトで取られた写メを見かけた母校の後輩たちがその写メで盛り上がっていることが判明する。後輩たちはもともと柳澤に好意を寄せていたが、当時は香子が邪魔だったのだ。ネットには香子の悪口「スカルプB」などが連発されており、香子は後輩たちを血祭りに上げるべく、犯人検挙に乗り出した。
 万里と香子は魔窟の押し入れで隠れていると、なんと女子高生が古びたサッシからいとも簡単に侵入してきたかと思うと、さらに玄関からも大量の女子高生が侵入してきた。その現場を、万里と香子と柳澤で取り押さえて事情を聞いた。彼女たちはどうやらネットの噂で香子が柳澤から手を引いたことを知り、憧れの先輩の持ち物を拝借していたのだ。彼女たちから盗られていたものを取り返した柳澤は、警察に通報することもなく、彼女たちを解放した。
 盗られていた小物の中には、星型のキーホルダーがあった。それは、バイトの時にリンダが落としたものだった。
 事件も解決し、一件落着かと思いきや、柳澤の頭部に円形脱毛症が見つかり、柳澤が気絶。万里と香子は看病をしつつも、柳澤ダメだし大会を始めてしまう。目を覚まして、それを聞いていた柳澤は、確かにそうだけど、やる時はやるんだ、といったニュアンスの言葉をつぶやいた。
 この後に、5巻のリンダとの邂逅や付き合いの悪さに繋がっていく。


○百年後の夏もあたしたちは笑ってる
 5巻の海へ行く前日譚。
 香子は悩んでいた。良い雰囲気になっても万里は自分を求めてはくれない。さらには普段からどこか自分を卑下して香子と対等であろうとしていない気がする。それも、記憶喪失によって自分の入り込めないところがあるからなのではないかとも考えている。でも、それを覆せるほどのインパクトと愛情を見せるため、香子は水着で万里を悩殺しようとして、数少ない知り合いの中から、しぶしぶ天敵である千波に水着の相談することにしたのだ。 
 千波は最初は乗り気だったのだが、あまりの香子の派手なセンスに嫌気がさすのだが、「師匠」の件のせいで断ることができなかった。
 師匠とは、万里と外国語のクラスが同じ同級生のことだ。この師匠こと羽野紫生はとてつもない美男子であった。しかし万里が柳澤や香子に説明する時は師匠としか言わないので、厳つい兄ちゃんなのだと誤解されていた。
 そんなある日、彼女と別れようと思っている紫生を励ましている万里と千波が出くわす。その後で、千波は香子に紫生がとても美人で、さらには万里に恋愛相談をしていたと告げる。そこで香子は紫生が女性であり、万里は狙われているのだと勘違いした。
 後日、彼女と別れた紫生を励ます名目で万里が自分の部屋へ紫生を連れていくという話が出て、香子はそれに腹を立てた。そして万里の家の前で、万里と紫生を待ち伏せしていた。そして、その傍らには千波の姿があった。千波はオカメラで万里の不義を捉える役割だった。そしてついに万里と紫生が現れたのだが、そこで初めて紫生を見た香子は紫生が男だと言うことに気付き、千波を伴って逃走したのだ。
 この件で、きちんと紫生が男だと伝えなかった千波が悪いと自他ともに認めたことから、千波は香子に貸しを作ってしまったのだ。
 そんなこんなで水着ショーは続いていき、互いの派手な水着や地味すぎる水着で口論をしたり、酒を飲みながら万里と香子の恋愛話をしたりして、上機嫌のまま時は過ぎて行った。
 そんな二人の痴態を、オカメラはビデオカメラモードで撮り続けていた。普段は仲良しではないその二人の姿は、何年経とうとも、そこにあり続けるのだ。


○サマーナイトツアー
 香子が家から持ってきた太巻きを食べていた万里だが、その全部を食べきることはできなかった。そこで、最近元気のなさそうなNANAにおすそ分けにいった。
 ちょうど深夜の激安スーパーに出かけようとしていたNANAは、買い物要因としてそのまま万里を連れてスーパーへ向かった。
 行き道の途中で、NANAが現在作詩に行き詰っていることを聞かされる。そしてそうこうしているうちにスーパーへ着いたのだが、予想外の大行列が出来上がっていた。その行列のなかに、NANAのバンド仲間であるトモヤスとタクローがいた。その二人と合流したところで、万里は以前香子から聞かされていたNANAの彼氏ではないかと思われる男とトモヤスが似ていることに思い至り、トモヤスがNANAの彼氏かどうかを探るのだが、核心に触れることはできずにいた。
 一方でNANAは、腹が減ると腹を下すタクローを連れてラーメン屋に行っており、それを羨んだ万里はトモヤスに連れられてラーメン屋に向かったのだが、いつのまにやらどこぞの路地裏に連れ込まれてしまい、トモヤスからNANAの作詩の状況を脅迫まがいの行為で白状させられた。あまりの進行具合の遅さにキレたトモヤスだったのだが、NANAからの電話でタクローが下痢を下しそうなピンチだと伝えられ、急いでスーパーへ戻った。
 しかし、スーパーの行列が動き出しており、タクローを特定することが困難だった。それでも何とか万里がタクローを発見し、トモヤスとNANAの連携により、万里が持っていた太巻きをタクローに食べさせることに成功し、タクローは社会的死亡の危機を免れたのだった。
 後日、NANAたちのライブの日、万里は太巻きが腐っていたせいでタクローが演奏できないという嘘を吹きこまれ、その償いとしてパフォーマンスに出場するように言われる。それはマジックでよく見る人体貫通マジックで、なんの打ち合わせもなかったのだが、すんでのところで本当は無事のタクローからのサインを見てとり、なんとかマジックを成功させた。
 そのライブの打ち上げで、トモヤスの話を聞いていた万里は、実はトモヤスはNANAの兄なのではないかと思い、NANAに問い詰めたのだが、酔いつぶれたNANAがその質問に答えることはなかった。





【感想】
 今回もギャグ満載の内容でした。
 スカルプBとか「光男の部屋」とか、なんだか雨上がり決死隊関連のネタが多かったように感じたのは個人的な主観のせいですよね。万里とか香子、2次元くん辺りで光男の部屋芸人とかしてそうな気がするw
 それにしても、イケメンにはイケメンなりの悩みがあるものなんですね。円形脱毛症は本当に酷い。
 千波と香子に関しては、仲良しではないけれども良い関係のようにも見えますね。それというのも、やはり千波の人の良さがなせるわざなのでしょうか。ガールズトーク満載でしたが、酒が入ったあたりから何とも言えない残念さが漂っていました。それでも、とても楽しそうにしている二人の姿がとても微笑ましかったです。師匠については、叙述トリックというよりも、駒都えーじさんのイラストトリックだと思っています。
 NANA先輩の話に関しては、アンダースローで口に放り込む当たりの話が大好きです!そのシーンを想像したら笑いが止まりませんでした。NANA先輩スゲー。
 今回は番外ということでしたが、「光男の部屋」で見せた柳澤のリンダに対する価値観が変わっていそうな描写や、「百年後の夏も~」の香子の不安など、キャラクターたちの本編の心理を補足するようなお話が盛り込まれていたことが、次回への期待を膨らませてくれました。
 
 



あとがきにあったカワセミの話、NHKのダーウィンが来た!のことでは・・・!


  1. 2013/01/14(月) 19:41:09|
  2. 電撃文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金4 (ファミ通文庫) 感想

龍ヶ嬢七々々の埋蔵金4 (ファミ通文庫)龍ヶ嬢七々々の埋蔵金4 (ファミ通文庫)
(2012/11/30)
鳳乃一真

商品詳細を見る


ハイパーラッキーガール列伝が綴られてる、お話



【簡略ネタバレストーリー】
○龍ヶ嬢七々々の華麗なる冒険/黒須参差の気苦労の多い野望
 3巻の後日に、重護と鉄が、七々々と参差それぞれに、なんで七々々コレクション集めをするようになったのかを聞いたことから回想が始まる。
 生前の七々々や他のG7が学生の頃、七々々島を作るための資金繰りに行き詰っていた。必要総額は100億円。七々々以外はそれぞれの分野で新進気鋭として注目されてはいるものの、どんな企業や投資家も学生の与太話には耳も貸さない。
 そこで、参差の怪しい金儲けの話に乗っかった七々々は、国外のとあるアジア系裏カジノへ連れられてしまい、さらには好というガイドだけを残して参差は消えてしまった。
 参差が裏カジノにきた目的は、裏社会のパイプを太くするため。そこでカジノの経営者である狼という人物との会談に臨んだ。そこには白孤と呼ばれる妖怪がいた。この白孤、海賊たちのお宝の在り処を知っているのだという。しかし、参差はそんなことは気にも留めずに会談を続けようとしたのだが、七々々が大勝していると言われて、焦って七々々を叱りに向かった。
 七々々はその豪運で、手持ちの2万円を何千倍にも膨らませていた。そこで参差は、七々々には金稼ぎよりも白孤の宝の情報を与えた方がいいと判断し、狼には七々々が狼への貢物だと説明した。さらに、余興として、狼に白孤を賭けて七々々と勝負してほしいと言う。
 かくして、七々々と狼はブラックジャックで勝負することになった。
 七々々は持ち前の強運でゲームを進めるも、狼のディーラーも巻き込んだイカサマの前に勝利することができない。しかし、プリンを食べたりなんかして、ギャラリーを使ったイカサマ防止法を実行したことで、優位に立つことができた。そして勝負を決めるためにも、七々々は神経衰弱形式のブラックジャック勝負を申し込んだ。
 ここでも狼はパーフェクトシャッフルというイカサマをするも、ギャラリーへの配慮と七々々のツキの良さによって敗北する。
 参差は参差で、狼の体面を傷つけないような勝ち方を七々々に指示していた。
 見事白孤を手に入れた二人は、ホテルで一泊した後、白孤(もとい七々々が命名したケテケテ)の宝の隠し場所へ連れて行かれる。そこには ケテケテを弱体化させている杭があった。その杭を抜けばケテケテと闘わなければならないが、宝を取るためにも、二人はケテケテとバトルをすることになる。
 とはいえ、妖怪に人間が勝てるはずもなく、窮地に陥るも、七々々が宝の一つである、相手の記憶を知ることができる剣により、ケテケテがチンファという友との約束で守っていた宝を、守ることに疲れ、わざと負けて死ぬことで宝を守る役割を終えようとしていることを知る。
 七々々たちはケテケテを殺さず、宝を手に入れ、さらにはケテケテをペットとして迎え入れた。そして剣の置いてあった場所に、武器にしていた金属バットを置いてきた。
 後日、参差はケテケテの宝の大半を狼に渡すことを条件に、狼とのパイプを求め、承諾された。
 それから二人と一匹は、ケテケテの宝みたいな宝はないかと、世界を飛び回るのであった。
 そんな昔話を聞き終えた重護の元へ、影虎から一心が負傷したというメールが入る。さらに、犯人は行方不明のゆんではないかとも書かれていた。


○星埜ダルクが日常的に抱える幾つかの悩みとささやかなる野望
 ダルクは恋愛小説が好きだった。学校の中庭で恋愛小説を読んでいると、同じクラスの学級委員長である夢路百合香に見つかる。実は百合香もダルクの読む小説が好きだと言って、意気投合するのだった。ちなみに、百合香はダルクのことを女だと思っている。
 ある日、ダルクは毎度購読している女性誌に載っていた、ある喫茶店に天災を連れて訪れていた。その喫茶店で出されるとあるマグカップでコーヒーを飲むと、カップル仲がうまくいくのだという記事を鵜呑みにして、天災に優しくなってもらおうとしたのだ。
 そこへ、同じ記事を読んだ百合香や茨が、重護と一心を連れてやって来て、3組は同席することになった。
 もちろんみんなコーヒーを注文した。そして、当たりのマグカップを引いたのは天災だったが、天災は重護とマグカップを交換してしまい、結果重護が当たりのマグカップでコーヒーを飲んだ。すると、同席していた他の5人全員が重護に惚れてしまい、ひと悶着があった。しかし、時間が経つとその効果も切れ、モテ期が来たのだと勘違いしていた重護は、調子に乗っていたところを茨にボコボコにされるのだった。
 天災はダルクがあのマグカップで何かをしようとしていたことを見抜いていた。だから重護とカップを交換したのだ。そして改めて、どうしてなのかダルクに尋ね、もっと優しくしてほしいと言われたことから、ぶっきらぼうにその要求に応えるのだった。
 ちなみに、喫茶店の店長はマグカップをフリマで購入したため、マグカップの効力は知りながらも、それがどんなモノなのかは見当もついていなかった。


○ZYU-GO 記憶喪失ゲーム
 ある日、肆季主催のパーティーが開かれる。参加者は七々々、重護、天災、ダルク、肆季だったのだが、肆季は酔っぱらって潰れてしまった。そこで天災が大富豪をしようと提案した。全員その提案に乗っかるも、七々々は自分の運の良さを自覚してか、ハンデをつけようと言う。それを挑発と捉えた重護と天災は、負けたら過酷な罰ゲームをすることを提案した。かくして、大富豪が始まるのだった。
 七々々の豪運の前に苦戦をしていた重護は、ダルクと共闘したり、イカサマを働いたりした。そのイカサマによって七々々を一度負かすことはできたが、代償としてブレーンバスターをお見舞いされて記憶喪失になってしまった。
 それでもゲームは続き、記憶喪失の重護はダルクを女だと思ったまま作戦会議で便所に詰めてドキドキしたりした。しかし、結局は七々々のビンタで記憶が戻って来た。その頃にはゲームも終盤を迎えており、天災が一発逆転の勝負を提案する。さらには、七々々が負ければ、天災が気に入る七々々コレクションの在り処を教えろと言う提案もなされる。しかし七々々はそれを承諾した。変わりに、天災が負ければ七々々の決めた罰ゲームをすることになる。
 天災と重護は作戦会議を始める。作戦はこうだ。ダルクと重護が連携したように、今度はそれに天災をくわえて、3人がかりで七々々と勝負するというものだった。さすがにこれなら勝てると思っていたのだが、上位カードばかり持っていた3人は、革命を起こされて七々々に敗北した。
 結果、天災は罰ゲームとして、これから週二日で七々々の部屋へご飯を食べに来なければならなくなる。
 加えて、大富豪のゲーム自体の敗者である重護は、街で半裸のまま声真似をするハメになったのだった。
 
 



【感想】
 今回は短編集ということながら、4巻にナンバリングされているというちょっと変わった巻でした。
 七々々と参差の昔話は面白かったですね。まだ出てきてないG7がチラっと出てきて、それぞれによって7人の集団の名称が違ってるところとか面白かったです。それに、参差のところにいた狐の話もあって、2巻の時に、この喋る狼?は何だよ、って思っていた疑問もなくなりました。ケテケテ、苦労してたんだな。
 ただ、パイプを求めていた参差は、狼のところへ会話するためだけに行ったのか?そんなんで会談させてもらえるの?宝の受け渡しも後出しだと思うし、その辺どうなんでしょうか、気になります。
 ダルクの話は、ピュアギャグなお話でした。重護のバカさがいかんなく発揮されているし、ダルクのおかしさが印象的でした。しかし最後に天災がすべてをかっさらっていくのはお約束。
 大富豪の話に関しては、どうみてもタイトルがカイジのパロです。本当にありがとうございました。
 あとは、記憶喪失よりも罰ゲームの行方や、七々々の異常な運気のほうが印象的でした。
 とりあえず、今巻のまとめとしては、七々々の異常な運の良さ、ってことですね。このせいでダルクの話が霞んでしまいます。あと、カジノでスリーセブンの話が出たあたりで、七々々の名前の由来はスリーセブンなんじゃないかということにようやく気付きました。遅いっての・・・。
 昔話のラストや、3巻のラストにもあった通り、これから一心のケガやゆんの行方、レプラコーンなどの話を楽しみにしています。




3巻の巻末イラスト見るまで、今回の表紙のキャラ誰?新キャラなの?って思ってました。すいませんでした茨先輩・・・


  1. 2013/01/13(日) 19:43:10|
  2. ファミ通文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

まおゆう魔王勇者 エピソード2 花の国の女騎士 感想

まおゆう魔王勇者 エピソード2 花の国の女騎士まおゆう魔王勇者 エピソード2 花の国の女騎士
(2012/12/22)
橙乃ままれ

商品詳細を見る


正しいことが必ずしも正義ではない、というお話



【簡略ネタバレストーリー】
○花の国の女騎士
 勇者と女騎士が初めて出会った時の物語。
 賢者の爺が死んでから、勇者は何もせず、ただ爺が最後に見た星を見つけようと空ばかり見上げていた。
 そんな勇者の元へ老弓兵の爺さんがやってきて、勇者を外の世界へ連れ出した。
 その行き先の一つが、花の国だった。花の国は、今となっては湖の国の一部となっていた。それというのも、花の国の王さまが周辺の他国に喧嘩をふっかけたせいだ。花の国は小さな国で、周辺国による連合軍に勝てるはずもなかった。そして花の国のなった場所は、兵士と他国に婿入りした王さまの叔父である大公が支配する貧民街となった。
 その町で、怪しい行動をとっていた勇者は、自称正義の味方である桂花の騎士(後の女騎士であり、男装をしている)に、最近はやりの子どもを狙った人さらいだと勘違いされる。誤解はすぐに解けるのだが、桂花の騎士は勇者を戦災孤児だとさらに誤解してしまう。そして、修道院の騎士である桂花の騎士は、ほかの孤児の子どもたちといっしょに屋台経営をしようと提案する。爺さんと別行動をとっていた勇者は、断る理由もないので承諾する。
 一方で、爺さんは酒場や修道院で花の国の話を聞いていた。王さまの反乱によって、皇族は直系は皆殺しにされ、傍流である二人の姫はそれぞれ教会と修道院に預けられたことを知る。
 勇者たちの始めた屋台は、その低価格のおかげで大盛況となる。仕入れに関しては、勇者が狩りをするのでタダ同然で、ぼろ儲けである。そして営業後に、勇者と桂花の騎士は稽古に励む日々を送った。
 そんなある日、孤児たちの住む小屋に強盗が入る。その強盗たちは町に残留する戦争の際に派遣された兵士たちであり、人さらいの実行犯たちだった。桂花の騎士と勇者は直観的に兵士たちが人さらいだとわかったのだが、桂花の騎士によって騒動は起きなかった。桂花の騎士は、ここで兵士に立ち向かって子どもを助けても、今度は町の人々全員に被害が及ぶと考えて、兵士たちとの争いを避けたのだ。しかし、勇者は桂花の騎士が子どもたちを見捨てたのだと捉え、桂花の騎士に怒りをぶつけた後、単身子どもが捉えられているだろう城へ向かった。
 残された桂花の騎士の元へ、爺さんが通りがかる。爺さんが勇者の連れだとわかると、桂花の騎士は先程のことを独白した。すると、爺さんから大公や王さまの振る舞いの原因は城にある魔鏡のせいなのだという話を聞き、大公を止め、子どもを救うために、桂花の騎士は爺さんと共に城へ乗り込む。
 一方で勇者は屋台をしていた子どもたちを救った後、その魔鏡に魅入られていた。魔鏡によって、勇者は自分が強大な力を持つあまり、一生孤独であり続けるということを示唆され、苦しむ。しかし、その時思い出したのは爺さんと共に巡った諸国漫遊の日々だった。色んな人たちがいた貧富の格差や知らない土地を知った。それは賢者といた森や侮蔑された貴族しか知らない勇者にとっては驚きの連続で、この世は知らないことで満ちていることを知った。だから、魔鏡のいうことが必ずしも真実でないことを勇者は知っていた。
 勇者が目を覚ますと、傍らには潜入用にドレスアップした桂花の騎士がいた。そこで初めて勇者は桂花の騎士が女性であることを知る。しかし、そこへ魔鏡の声が聞こえる。貴族である桂花の騎士が平民の味方であるはずがないと囁くのだ。しかし勇者は騙されない。桂花の騎士は友であり、なにより魔鏡の言葉が真実であろうとも、真実以外が虚偽である保証はない。なら、真実じゃなく自分を信じるのだとし、魔鏡を破壊する。そして二人は互いの非を認め合い、大公の成敗に向かった。
 後日、大公の成敗とそれによる中央との調整を済ませた爺さんは、勇者を連れて再び旅に出かけた。その去り際、勇者は桂花の騎士に、自分が勇者であることを告げた。
 桂花の騎士は、本当は互角以上に稽古ができ、自分を友と認めてくれる勇者といっしょにいたかった。でも、これまで自分を守ってくれた町を去ることに罪悪感を感じていた。そこへ、修道院長による宣託によって、桂花の騎士は名実ともに騎士として認められた。騎士となった彼女は、修道院長に背中を押され、湖畔修道会の教えにより、友を助けることを良しとし、また世界を救うことがひいては町を救うことになるのだと信じて、女騎士として二人の後を追ったのだった。
 
○ドラマCD3巻
 メイド姉による人間宣言や、魔王VS歴代魔王といったところの内容です。耳が幸せになりますよ。




【感想】
 女騎士がテンプレリボンの騎士でしたが、そこがイイ!
 短いながらに結構なボリュームのお話でした。なんだか「ワンピース」の過去回みたいな感じがしましたし。
 本編でも、女騎士はお姫様っていう話がチラホラでていましたが、この巻でようやく補足されましたね。騎士だったり乙女だったりする場面は本編で何度も読んできましたが、そのせいか今回のお姫様バージョンがなかなか新鮮でした。もっとお姫様っぽい女騎士が読んでみたかったです。
 勇者に関しても、賢者が死んでからの話がダイジェスト風ながらも語られていたので、こうやってまた成長していったんだろうな、という妄想の助けになりました。
 白百合の姫のことがほとんど語られていませんでしたが、たぶん本編に出ているんでしょうね。登場人物多すぎて当たりがつきませんが、読み返すことになったら探してみようっと。
 この話によって、現勇者パーティーそれぞれの過去話というか、出会いがすべて描かれたように感じます。次回の番外からは魔王、魔界編になるのでしょうか?
 そして今回も必聴のドラマCDでした!




この話だけ読むと完全に女騎士が正ヒロインなんですけど、本編ではいつのまにかサブヒロインになってて悲しすぎる・・・
  1. 2013/01/09(水) 19:27:14|
  2. その他のレーベル
  3. | トラックバック:1
  4. | コメント:0

冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫) 感想

冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫)冴えない彼女の育てかた 2 (富士見ファンタジア文庫)
(2012/11/20)
丸戸 史明

商品詳細を見る


ゲーム制作はスロースタートだけど、ヒロインたちの好感度はほぼMAXスタート、というお話



【簡略ネタバレストーリー】
 英梨々と詩羽の協力を得ることができると思っていた倫也であったが、本業が忙しい彼女たちはなかなかノリ気ではなかった。さらには金銭的問題も指摘され、サークルはほぼ休止状態だ。
 そんな時、バイトをしていた倫也の前に、イケメン医大生の従兄を連れた恵と遭遇する。彼女は今度その従兄とショッピングモールへ出掛けるのだと倫也に話す。倫也はそれをフラグと捉えて、恵がデートに出かけるのを止めさせて、代わりに自分がいっしょに行くことを申し出て、恵と従兄もあっさり承諾した。
 結果、倫也は不慣れな場所へ行くために、徹夜でデートプランの予習をするハメになる。そのせいで、倫也は知恵熱を出して、デートをドタキャンしてしまった。
 そんな寝込んでいる倫也の元へ、恵の連絡を受けた英梨々がフルーツと原稿を持ってお見舞いにやってきた。特にお見舞いらしいこともしないが、会話の中で、二人は会っていなかった10年という空白の存在を思い知ることになる。
 するとそこへ今度は同じく恵から連絡を受けた詩羽がやって来た。英梨々は詩羽と会わないために部屋に隠れた。詩羽は恵から連絡が入った時に恵の特徴を捉える事が出来たから、執筆に入れることを倫也に報告した。そして英梨々の存在に気づきつつも、倫也の家を後にした。その後、英梨々も詩羽には負けじとキャラデザに取り組むことを約束した。
 倫也が復帰してから、4人は放課後に視聴覚室で作業に取り組んだ。英梨々は加藤をモデルにキャラデザを固めようとしたが、恵がなかなか英梨々の要求する表情をできないでいた。かたや詩羽は絶好調ながら、執筆中は作品に感情移入してしまうため、3人の前で醜態をさらしてしまう。倫也は舎弟だ。ともあれ、詩羽はプロットを瞬く間に完成させる。しかしディレクターである倫也は、そのプロットに形容しがたい違和感を覚えて、ボツにしてしまう。
 そんな時に、なにを思ったのか、倫也は恵をデートに誘う。場所はドタキャンしたショッピングモールだ。
 デートの初っ端は、慣れない場所のせいか倫也がグロッキー状態になってしまった。しかし、そこから回復した倫也は恵の要求する洋服・アクセサリーショップを効率よく回れる順路を提案して、恵とのデートをこなしていった。途中で恵からの不意打ちのプレゼントをされて心が揺らいでしまうこともあった。そしてビュッフェバイキングで食欲も満たし終わった時に、倫也は断りを入れて恵の元を去ってしまった。
 倫也が向かったのは詩羽の元だ。だが、彼女の行方が分からない。そんな中で、倫也は詩羽と出会った頃のことを思い出していた。
 詩羽がまだ売れっ子じゃなかった頃のサイン会で、二人はであった。同じ学校ということに気付いた二人はそれから意見交換を重ねる関係となった。さらには、倫也のブログが詩羽の作品をベタボメしたことから、詩羽の作品の売り上げは伸び、詩羽の担当である町田から、編集部でも倫也の存在が認められている話を聞かされる。
 その末に、倫也は詩羽の居場所をつきとめた。そこはかつて二人が口論をした場所だった。
 詩羽はそこで打ち合わせをしていた。打ち合せが終わると、詩羽は倫也を連れてホテルの部屋へ向かった。そこで倫也は詩羽のプロットをボツにした理由を語った。なぜボツにしたのかは、恵とのデートでわかった。詩羽のプロットでは、恵らしいキャラがハッピーエンドを迎えていなかった。理由を聞かされた詩羽は、倫也の想いの裏側に恵がいることに嫉妬しながらも、ディレクターの理想を追求するために、再度プロット制作を開始し、二人は徹夜で仕上げたのだった。
 一方で、デートの目的は詩羽のプロットの違和感を見つけるためだと言われ、取り残された恵の元へ、英梨々が現れていた。この時も、英梨々は恵のキャラデザを描こうとしいていた。そして、英梨々は求めていた「恵のムッとした顔」を描くことができたのだった。
 そして今回のオチとして、徹夜明けで眠ってしまった倫也の元に、どう見ても事後にしか見えない、詩羽が撮影した写メが送られたのだった。


【感想】
 前回よりもラノベらしくなっているところに少し驚きました。でも、やっぱりまだどこか立ち絵や背景を意識していそうな場面がちらほら見えた気がします。
 ヒロインたちに関しては、前回よりも倫也に対する好感度が分かりやすくなっていました。特に詩羽の想いと恵の変化がわかりやすくてよかったです。
 そして、ヒロインたちにそう思わせることができるような主人公の性格と振る舞いにけっこう好感がもてました。でも、恵とのデートを最後までこなさなかった所は、少しだけどうかとも思いましたが、そこは詩羽への思いが強かったということなんでしょうかね。今回は、表紙になるだけあってか詩羽にスポットが多く当たっていましたね。
 そんな詩羽と英梨々が普段は仲悪いのに、創作に関しては意気投合する場面が今回の一番のお気に入りでした。
 鈍感突発性難聴でない主人公ながらも、恋愛に消極的というか女性にそれほど幻想を抱いていないからこそ、倫也とヒロインたちの関係がどうなるのか楽しみではあります。
 あと、巻末の企画書が地味に興味をそそられました。
 そしてなにより深崎さんのイラストが素晴らしすぎます!






今のところ幼馴染不遇の法則が働いていて、英梨々のターンが少ない気がするよ・・・

  1. 2013/01/07(月) 22:06:02|
  2. 富士見ファンタジア文庫
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0

好きなライトノベルを投票しよう!! 2012年下期 に参加します

個人的に好きな8作品を挙げておきます。


好敵手オンリーワン3 至道流星 【12下期ラノベ投票/9784063752670】
好敵手オンリーワン3 (講談社ラノベ文庫)好敵手オンリーワン3 (講談社ラノベ文庫)
(2012/11/02)
至道 流星

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
好敵手オンリーワン3 (講談社ラノベ文庫) 感想




やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(6) 渡航 【12下期ラノベ投票/9784094513806】
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6 (ガガガ文庫)やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6 (ガガガ文庫)
(2012/11/20)
渡 航

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。6 (ガガガ文庫) 感想




ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 竹宮ゆゆこ 【12下期ラノベ投票/9784048868976】
ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 (電撃文庫)ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 (電撃文庫)
(2012/09/07)
竹宮 ゆゆこ

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
ゴールデンタイム5 ONRYOの夏 日本の夏 (電撃文庫) 感想




マグダラで眠れ 支倉凍砂 【12下期ラノベ投票/9784048867283】
マグダラで眠れ (電撃文庫)マグダラで眠れ (電撃文庫)
(2012/07/10)
支倉 凍砂

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
マグダラで眠れ (電撃文庫) 感想




ココロコネクト アスランダム 上 庵田定夏 【12下期ラノベ投票/9784047283503】
ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫)ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫)
(2012/09/29)
庵田定夏

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
ココロコネクト アスランダム 上 (ファミ通文庫) 感想




僕は友達が少ない CONNECT 平坂読 【12下期ラノベ投票/9784840143653】
僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J)僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J)
(2012/12/21)
平坂読

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
僕は友達が少ない CONNECT (MF文庫J) 感想




灼眼のシャナ S III 高橋弥七郎 【12下期ラノベ投票/9784048910859】

灼眼のシャナSIII (電撃文庫)灼眼のシャナSIII (電撃文庫)
(2012/11/09)
高橋弥七郎

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
灼眼のシャナSIII (電撃文庫) 感想




大日本サムライガール 1 至道 流星 【12下期ラノベ投票/9784061388321】
大日本サムライガール 1 (星海社FICTIONS)大日本サムライガール 1 (星海社FICTIONS)
(2012/07/13)
至道 流星

商品詳細を見る

こちらが感想です↓
大日本サムライガール 1 (星海社FICTIONS) 感想




10作品フルで投票できるだけの読書量がないのが悔しいです・・・

  1. 2013/01/04(金) 18:10:01|
  2. 未分類
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2

プロフィール

けーけんち

Author:けーけんち
→Twitter
→読書メーター
ラノベとゲームの感想を中心に気ままに更新しているブログです。
※備忘録としても使っているので、ネタバレを含む内容となっているところがあります。
文章がおかしな点が多々あるとは思いますが、勢いだけで書いているので見逃してください。

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

未分類 (4)
電撃文庫 (32)
ガガガ文庫 (17)
ファミ通文庫 (19)
富士見ファンタジア文庫 (8)
角川スニーカー文庫 (10)
集英社スーパーダッシュ文庫 (6)
講談社ラノベ文庫 (8)
GA文庫 (6)
星海社FICTIONS (9)
講談社BOX (3)
メディアワークス文庫 (4)
その他のレーベル (16)
ゲーム (7)
アニメ (2)
その他 (5)

カウンター

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

最新コメント

最新トラックバック

RSSリンクの表示

応援

ライトノベルBESTランキングウェブアンケート
『‘&’-空の向こうで咲きますように-』 真剣で私に恋しなさい!S

検索フォーム

リンク

このブログをリンクに追加する

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。