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サイハテの救世主 PAPERII:黄金火山と幸福の少女 (角川スニーカー文庫) 感想

サイハテの救世主    PAPERII:黄金火山と幸福の少女 (角川スニーカー文庫)サイハテの救世主 PAPERII:黄金火山と幸福の少女 (角川スニーカー文庫)
(2013/01/31)
岩井 恭平

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不幸な人達が不幸な出来事を起こしたり解決したりする、お話



【簡略ネタバレストーリー】
 陸たちの幼なじみである又吉がひきこもっているので、それを解決してほしいと陸たちに依頼された葉だったが、説得に失敗し、又吉や陸たちに笑われてしまう。腹が立った葉は自宅に帰ってしまうのだが、そこへノーラが襲来し、葉を連れ去ってしまう。
 ノーラが葉を連れ去った理由は、以前に葉が書いた災厄論文の一つである黄金火山による世界滅亡の危険性が増したからだった。ノーラと葉を乗せた飛行機は北海まで飛行し、北海で停船していたイギリス艦ロイヤルパレスへ着地する。そこで葉の大学時代の級友でありアメリカ海軍の特殊部隊所属であるエリク・グッドオール・ジュニアが葉の護衛として派遣されていた。さらにロイヤルパレスには北海周辺諸国の代表者達や国連事務総長などが葉を待っていた。
 一行は海底にある中立研究機関のゴールド・ピッドへ、マンタと呼ばれる潜水艇に乗り込んで向かった。
 ゴールド・ピッドにはアンジェリンという少女がいた。彼女は黄金火山の危険性を危惧した天才だったころの葉が見つけた少女であり、特殊な脳波によって黄金火山の噴火の予兆を感じとる事がでた。そして彼女の指令によって、噴火を抑制するミサイルであるボトムズ・アンカーが黄金火山へ発射されることで、これまで噴火を抑制してきていた。もし噴火するようなことがあれば、周辺諸国はマグマに呑みこまれ、世界は火山灰で覆われ、大陸は海に呑みこまれてしまう。今回葉が呼び出された理由は、アンジェリンと面会し、黄金火山が噴火するのかしないのか、また被害はどれくらいになるのかを教えてもらうためだった。
 一行がゴールド・ピッドへ到着すると、基地長と案内人に導かれてアンジェリンの居住地へ連れて行かれたのだが、急にアンジェリンが葉と会いたくないと言ってきた。これは葉にとってありがたかった。葉は以前アンジェリンにひどい仕打ちをしたことがあり、それを悔いていたのだ。だから葉はその場から逃げ去りマンタに乗ることに成功したのだが、操縦席はジュニアに代わられてしまった。そんな二人を、謎の潜水艦が攻撃し、危うく死にかけたのだが、なんとか難を逃れ、ロイヤルパレスに拾われた。
 葉はロイヤルパレスの兵士たちを脅して沖縄へ帰って来た。陸や照瑠や海たちの水着姿を見たり、香織に殺されそうになったり、照瑠の勉強を教えようとしてあまりのレベルの低さに愕然としていたらバカ扱いされてしまったりした。その後、葉は再び又吉の家を訪れ、又吉を説得しようとするのだが、またしても失敗してしまう。あげくに沖縄にやってきたジュニアたちに捕獲されて再び北海へ戻ることになってしまった。
 ロイヤルパレスの甲板では、葉を襲った潜水艦がどこの国かでもめていた。さらにアンジェリンがいれば葉は必要ないはずだという話になり、どこかの国がアンジェリンのご機嫌を損ねてしまったのではないかという幼稚な口論が繰り広げられてしまうようになった。そんな時、アンジェリンから要請が入り、ボトムズ・アンカーを発射することになったのだが、その発射予定海域にオランダの潜水艦がいることが判明し、発射を躊躇ってしまう一同。しかし世界滅亡には代えられず、発射しようとするのだが、その潜水艦の船長の兄であるオランダ代表がロイヤルパレス船長へ銃口を向ける。それをイギリス海兵が発砲し止めるのだが、その場は騒然としてしまう。さらに葉はその海兵をアンジェリンだと幻視して艦内へ逃げてしまう。
 ジュニアはどうにか葉を確保するのだが、追ってきたイギリス海兵に襲われる。海兵は頭を吹っ飛ばされない限りゾンビのように挑みかかって来た。なんとかその場をしのいだジュニアだが、艦長から連絡で味方のイギリス海兵たちの幾人かがが攻撃してきていることをしる。そしてジュニアは葉が敵の海兵をアンジェリンと呼ぶことに気付き、敵の海兵だけを倒しながら、なんとか葉をノーラや事務総長たちの所へ送り届けた。しかし、その頃にはオランダの潜水艦にボトムズ・アンカーが撃ち込まれていた。
 これらの一件が落ち着くまで、葉は沖縄へ帰された。そこで陸に、次から遠出する時は行き先を教えて行けと注意される。そして葉はまたしても又吉のところへ赴き、説得を開始した。又吉は中学時代はバレーの優秀選手だったのだが、いくつもの不幸が重なり落ちぶれてしまい、自分が周りにバカにされている気がしていて、遠くへ行ってしまいたいと言った。葉はそんな彼女―又吉三三子の願いを叶えるべく、再び来襲したジュニアに彼女ともども連れさらわれてしまう。
 アンジェリンの許可が下りたため、彼らは再びゴールド・ピッドへ向かったのだが、その途中でまたしても謎の潜水艦に襲われる。危機の中、葉が天才だった頃の搾りかすである脳みそを振り絞ってなんとかゴールド・ピッドへ到着した。しかしそこは死体が点々とする地獄となっていた。3人は警戒しながら通路を進み、敵に出会うことなくノーラたちと合流する。しかし、敵は死体だと思っていたゴールド・ピッドの研究員たちであり、彼らに強襲されてしまう。研究員たちは以前の海兵たちのようにゾンビのように無敵だった。さらに彼らのリーダーのように、案内者が自分たちはアンジェリンを女王に戴くヴォルカノ公国の国民だと称し、黄金火山の噴火をもって地上へ浮上するのだと言った。
 そして、彼女は葉が天才ではなくノーラや事務総長たちを裏切るのなら歓迎すると言いだした。葉はその言葉に誘われそうになるが、陸の顔を思い出して踏みとどまった。その瞬間にジュニアが案内人の首を切り落としたのだが、彼女は平然と生きていた。それでもジュニアや兵士たちはなんとか退路を作り、葉たちは逃げ出した。そして皆でマンタのある格納庫へ向かおうとしたのだが、葉だけはアンジェリンを説得するためにゴールド・ピッドへ残されてしまう。葉はすでに天才ではないが、天才を信じて疑わない人間たちに突き放されたのだ。
 葉は護衛のジュニアと付いてきてしまった又吉を連れて、アンジェリンと邂逅した。
 アンジェリンは葉を歓迎した。それはアンジェリンが葉のことが大好きだったからだ。彼女は天才だったころの葉に憧れ、彼が天才でなくなることを願った。そして葉はそんな彼女に取り返しのつかない事をしてしまっていた。葉が彼女を見つけた時、彼女は未知の病に犯されていた。だから葉は彼女が生き永らえられるように、彼女を人造人間に作り替えた。それこそが新たな災厄「あまりにも我儘なアンジー」になることを知っていながら。アンジェリンは誰かが盗みだした災厄論文を読んで、今回の件を企てたのだ。そして葉に頼ることなく自らをメンテナンスしていく内に、その術を知り、研究員たちを人造人間に改造していった。そして今、葉は再びアンジェリンと対峙している。
 ジュニアは後を追ってきた案内人に敗れてしまい、葉と又吉は、葉がアンジェリンをメンテナンスしていた離れへ避難していた。そして、葉は自らが助かるために、天才の欠片を集めて又吉を改造人間に仕立て上げた。
 又吉は案内人よりも完成度が低かったが、復活したジュニアのサポートもあり、案内人を倒すことに成功した。そして彼女はアンジェリンを連れて海底に面したガラス壁のある場所へ行って、ガラス壁を破ってアンジェリンを水圧によって圧殺した。それらはすべて葉によってインプットされた行動だった。
 アンジェリンは葉のことを愛していた。そして葉も、もしかしたらアンジェリンを愛していたかもしれない。しかし、所詮彼女は葉のファンに過ぎなかったのだ。
 ロイヤルパレスに帰還した葉たちは、アンジェリンの脳に埋め込んでいた彼女の脳波を測定するチップを事務総長に渡し、これからはそのチップの演算をアンジェリンの代わりにさせた。
 沖縄に帰って来た葉は、陸に怒られるのだが、次からはちゃんと行き先を教えると約束した。そして、陸や香織や夏生がいるところへ又吉がやってきて、葉に向かって、汚されたから責任を取れと言い放ち、陸たちから折檻を受けるのだった。





【感想】
 いやー、今回もスケールがでっかかったですね。おかげでネタバレストーリーがものすごく長くなってしまいました。え?それはお前の文才がないからだって?細けえことは気にすんな!
 とりあえず、今回の見どころはたくさんありましたね。軍艦や国際情勢のもつれや二つの災厄論文に又吉の不幸。本当に又吉かわいそうです。もしかすると『とある魔術の~』上条さんよりも不幸なんじゃないだろうか。彼女は不幸の星の下に生まれてきたに違いない。
 そして同じく同情してしまうのはアンジェリン。改造人間にならないと助からないうえに、災厄を退けるための人類の道具にならないといけなかった運命にありながら、同時に自分が災厄自身になっちゃたという、もうドロドロの人生を送るしかなくなっているところがやりきれない気持ちにさせますね。そして彼女自身がそれを望んでいたことが拍車をかけます。
 そして葉もまた、凡人になってしまったが故の悲しさに溢れていました。ゴールド・ピッド脱出のときにノーラたちに突き飛ばされて絶望していたところが特にもの悲しかったですね。さらに誰かに愛されたいと、プライドの高い彼が本音を漏らしたのに又吉に容赦なく切って捨てられるところとかも胸が痛くなりました。他にも、ジュニアが案内人を口説こうと決めたのが、彼女を殺す時だった所とかも。
 いやー、今回は不幸自慢大会でも行われているのかと思うくらい不幸な人達ばかり出てきました。でも、そんな中で変わらず温かく迎えてくれる沖縄の人たちが、とても眩しい存在のように思えてなりませんでした。
 「天才」とは、もう人間扱いもできないくらいの規格外であり、だからこそ「英雄」になれるし、「人間」として扱われることができないんだな、と前回よりそのことが顕著に記されていたと思います。

 
 

 
香織を取り込むことができれば、嘉手納は葉の楽園になりそうだな



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  1. 2013/02/04(月) 00:33:51|
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ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫) 感想

ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)ベイビー、グッドモーニング (角川スニーカー文庫)
(2012/03/31)
河野 裕

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循環する生命の、お話



【簡略ネタバレストーリー】
○A life-size lie
 その少年は病死するはずだった。だけど少年は、少女の姿をした死神に3日分だけ生かされた。死神には月々に回収するべき魂のノルマがあるらしい。そして、少年が死ぬはずだった月のノルマは達成し、翌月のノルマは達成できそうになかった。だから、今月の余剰分の魂である少年が3日後の翌月まで生きられるようにしたのだと言う。
 少年は生かされたことに喜びはしなかった。少年は生きることに興味がなくなっていた。
 生き延びても、少年はこれまでとかわらずに小説を読む入院生活を続けた。そしてこれまでと変わらず、佐伯という少女がお見舞いにやって来た。少年は彼女に小説の内容を語った。人々のよわい心が寄り集まってできた怪物に、世界で一番残酷な言葉を詰め込んだミサイルを発射するお話だ。でも少年はその小説を読み切っていなかった。佐伯は少年と他愛ない会話を交わし、退室していった。
 ずっと病室にいた死神は少年に問いかけた。佐伯が嫌いなのかと。死神は魂の綺麗さを重視する。佐伯と話していた時の少年の魂は濁っていた。だから佐伯のことが嫌いなのかと問うたのだ。しかし少年は否定した。まだ少年が幼かった頃に、片親であると言う同じ境遇に同調し、いっしょに泣いてくれ、いっしょに悩みを共有してくれた彼女を嫌いになるはずがないのだと。
 翌日も佐伯はやって来た。少年は読み終わった小説の結末を彼女に聞かせた。小説の結末は、ミサイルは怪物を通り越して宇宙に発射され、世界は怪物に覆われ、世界は変わることなく続いて行った。ミサイルを発射した人が、よわい心を壊すことを躊躇したからだ。よくわからないけど、ちょっといい話だと、佐伯と少年は思った。
 実は、佐伯は翌日には引っ越しをすることになっていた。新しい家族の家へ行くのだ。だから彼女は引っ越しても少年に会いに来ると言った。だけど少年はその言葉を強く拒絶した。拒絶された彼女は涙を堪えながら帰って行った。
 そこで改めて、死神は少年に死は怖くないのかと問いかけた。少年は、本当は死ぬのは怖いと打ち明けた。
 嘘をついていたのは佐伯に嫉妬していたからだ。自分と同じはずの彼女は、健康体で学校へ行き、友達を作り、朗らかな性格で、新しい家族も見つけた。でも大好きな彼女を恨みたくはなかった。だから自分のすべてに嘘をついた。正直になった少年は自分の嘘に押しつぶされそうになった。その時、死神が、きちんと死と向き合ってほしいと言った。
 翌日も佐伯はやって来た。少年は昨日のことを佐伯に謝り、二人は仲直りをし、明るい未来について話し合った。その日死ぬとわかっていながらも、少年は佐伯といっしょに未来を語った。少年はそれでよかったと思った。よわい心の小説を読み返しながら、彼は世界が優しい言葉で包まれることを願った。
 そしてゆっくりと苦しみながら死んでいく中で、佐伯との明るい未来を夢想していた。


○ジョニー・トーカーの『僕が死ぬ本』
 ジョニー・トーカーというペンネームの作家は、数々の名作児童書を世に送り出していた。よわい心の本を書いたのも彼だ。だが、『僕が死ぬ本』という本を最後に3年ほど本を出してはいなかった。「僕が死ぬ本」は、ジョニー・トーカーが死んでいく様を描いただけの本だ。作家はそれを期に、ジョニー・トーカーであることをやめたかったのだ。
 彼は、商業作家としてテンプレートの物語を描き、多くの人に感動を与える小説を書くことに飽き飽きしていた。彼は夏目漱石の『草枕』のような、彼が感動できる小説を描きたかった。
 彼はアイデアを出すために水族館へ出掛けた。そこで、少女の姿をした死神に出会い、郵便物を受け取った。中身は彼の書いた『僕が死ぬ本』だった。死神はその本を読んだ方がいいと言い、それと同時に、彼に死の宣告をしたのだが、彼はまともに取り合わず、水族館をでて、公園でアイデアがやってくるのを待った。
 その時、女性の担当編集から電話がかかって来た。本を送ったのは彼女だ。正確には、読者から贈られた本を彼女が送ったのだ。そして彼女は作家にまた小説を書いてほしいと言った。だが、彼はいっこうに取り合おうとはしなかった。ジョニー・トーカーとして小説を書きたくはなかったのだ。最後には担当が折れて、電話は切られた。だが最後に彼女は、送った本を読んで気が変わったら連絡がほしいと言った。
 彼女や死神が読めといったことに興味を惹かれ、彼は本を読んだ。予想通り、本の中でジョニー・トーカーは死んでいた。しかし、最後のページに、読者であろう子どもの書いた文が載っていた。ジョニー・トーカーは復活し、これからも楽しい物語描いていくのだと。
 彼は、これまで書いた作品は、本当の意味で誰の心にも届いていないのだと思っていた。しかし、その文章を書いた子どもには、確かに届いていたのだ。その子供の文章は彼を感動させた。そしてこの感動させてくれた誰かのために、ジョニー・トーカーの物語を描こうと思い、携帯で文章を打ち込みながら家路を急いだ。
 そしてその帰路で、彼は事故にあった。傍らには死神がいた。物語を描きたい彼の望みを、死神はすげなく断った。だから、彼は書きあげたメールを、担当編集に送ってほしいとだけ頼んだ。
 そして担当編集の元に、メールは届いた。
 自分を蘇らせてくれた誰かへの感謝と、これからもジョニー・トーカーとして物語を描いていこうと思うといった、希望に満ちた文章が、そこにはあった。


○八月の雨が降らない場所
 ヒカリは死ぬつもりだった。彼女は小さい頃から父親という存在がいなかった。周囲はそのことに同情したが、父親がいない事が当たり前なヒカリにとって、同情は不愉快だった。彼女には優しい母親がいた。ある年のヒカリの誕生日には、彼女の名前の由来となった朝陽を見せてくれたこともあった。その朝陽を見てからは、毎年の誕生日は朝陽を見ることにしていた。そして、母親が亡くなるまで、彼女の誕生日に雨が降ることはなかった。しかし、母親が死んだ年の誕生日には雨が降った。そして母親が死んでからというもの、再び周囲からの同情に囲まれることとなり、そんな生活に彼女は疲れていた。だから、もし今年の誕生日―明日のことだ―に朝陽を見ることができなければ、死のうとする。そして今年の誕生日の天気予報は雨だ。
 そんな彼女の前に、原田という男が現れる。彼は本来ならば数日前に死ぬはずだった。そこを、少女のような死神に、ヒカリを助けることができるなら10日だけ延命させてあげると言われ、これを承諾した。原田はヒカリにネズミ講を使って世の中を良い人で埋め尽くす理想である幸福の連鎖を語った。もちろんそんなことは不可能だとわかっていた。だが、ヒカリの興味を引くためにこの話題を使った。そして、この連鎖の会員になってくれとヒカリに頼んだ。ヒカリは、明日この街で朝陽を見せてくれるのなら会員になると言い、原田はヒカリに朝陽を見せることになる。
 翌日の早朝。天気予報の通り、外は大荒れとなっていた。ヒカリは原田の車に乗せられ、彼が努める航空会社へ連れて行かれる。原田はヘリコプターの免許を持っており、ヒカリに雲の上から朝陽を見せようとしたのだ。大荒れの雲の中を突っ切って、陽が昇るちょうどの時間に、二人は朝陽を目にした。
 その時、原田はヒカリに、どうして朝陽が見たかったのかと問うた。ヒカリ自身、どうしてかわからない、自殺しようとした明確な理由も、でも、彼女は答えた。それは、自分の誕生日だからだと。
 こうして彼女が自殺することはなくなった。それと同時に、彼女は幸福の連鎖の会員となった。
 死神は原田に、これからどうするのかと訊いた。原田は、ネズミ講のために必要なもう一人の会員を探すのだと答えた。彼の小さい頃の夢である、教科書に載れるような人物になるため。未来の教科書で、世界を平和にした幸せの連鎖の始まりは、自分だと記されるような、夢物語を追うために。


○クラウン、泣かないで
 佐伯春香は新しくできた母親の実家で暮らしていた。そこには、クラウンをやっていたというお祖父さんがいた。これからは佐伯にとってのお祖父さんになるのだが、彼女にはどうにも実感できず、心の中ではクラウンと呼んでいた。引っ越し前にクラウンと会っていた佐伯は、彼の話しやジャグリングを楽しんでいた。
 佐伯は引っ越してきてから、以前まで仲の良かった少年が死んだことを知らされ、落ち込んでいた。父親は仕事で忙しく、母親は出産のために入院していた。だから、家には佐伯とクラウンしかいない。しかし、クラウンは以前のようにジャグリングもできなければ、佐伯を自分の子どもと間違えるようになっていた。それでも彼女には、クラウン以外の話相手がいなかった。
 そんな時、クラウンが少女のような死神とまともに話している所を盗み聞きしてしまう。その話の中には、彼はクラウンではなくピエロということや、自分のせいでクラウンは痴呆のようなマネをしているのだということを知る。
 すると、今度は佐伯の前に死神が現れ、クラウンを死なせるために、佐伯がかけた未練を解消してほしいとだけ言って消えてしまった。
 クラウンの未練とは何かを、佐伯はピエロとクラウンの違いから探り、彼女は以前見たクラウンの写真から、彼が実はピエロだったことを突き止めた。
 そのことを知らされたクラウンは白状した。佐伯は仲の良かった大切な友人を最近失くし落ち込んでいた。そこへ、現状で彼女の支えとなっている自分がこれ以上仲良くなっては、数日もせずに死んでしまうことで、再び彼女を落ち込ませてしまう。だから、これ以上彼女と深く関わろうとはしなかったのだと。
 そのことを知った佐伯は、当然悲しんだ。だけど、クラウンは佐伯こそが本当のクラウンだと言い、クラウンには泣かずに笑ってほしいのだと言った。そんな祖父のために、佐伯はこれまで祖父といっしょに食べることができなかった食事を、いっしょに食べてほしいのだとお願いした。
 その夜、彼女の元へ死神がお礼を言いにやって来た。そこで佐伯はクラウンを死なせないでほしいと言う。しかし、それは叶えられるはずもなかった。死神は、命は循環するものだと言った。佐伯の大切な人だった少年と、作家、ヘリコプターのパイロット、そしてクラウンの魂を使って、新たな魂を作るのだと。そしてその魂は、これから生まれてくる佐伯の新たな家族になるだろうと。
 

○プロローグ/再びプロローグ
 これから生まれてくる予定の生命が、様々な設問に答えていた。だけど答えはいつもわからない。そんな彼を突き動かす4つの光があった。4つの光は彼を前へ外へと押し出していく。彼はわけもわからず、ただ苦しみから逃げ出すように外へと生まれ出た。





【感想】
 どれもこれも最高にハッピーではないものの、どこか晴れ晴れとした気持ちにさせてくれるお話ばかりでした。
 死が訪れた人の誰もが死ぬことを恐れていた。だけど、彼らはただ死んでいくことを恐れていただけかもしれない。
 病気の少年は世界に優しい嘘を残すことで、明るい未来を夢想しながら死んだ。作家は生涯で最高の文章を見つけて、希望を胸に抱きながら死んでいった。パイロットは、小さな頃の夢を夢見ることを思い出して死んでいった。クラウンは、完璧であるクラウンを目指しながらも必ず失敗することで人を笑わせる事のできるピエロであることを誇りに思いながら死んでいった。
 誰もが死を迎えた時に、晴れやかな気持ちを迎えていた。そしてその晴れやかな気持ちは、死神が言うように綺麗な魂だったのだろう。そしてその綺麗な魂は、新たな魂となるために融合し、生命として誕生する。その目を覚ました赤ん坊を、人々は祝福するのだ。ここに、タイトルの由来があることに、驚嘆しました。なんて喜びに満ちたタイトルなのだろうかと。『サクラダリセット』もそうでしたが、タイトルのセンスがとても素晴らしいですよね。
 死神の少女はすべての話に登場しながら、すべての話の脇役でしかありませんでした。話の主人公は、やはり話の中心の人で「人生を生きる人に脇役はいない」という話を表現しているような気がしたのですが、おそらく考えすぎでしょう。
 また、それぞれの話が、ところどころでリンクしているところも、特徴ですね。こういうちょっとした点でも、すべてのお話はどれも同じ世界で起こる普通のことなのだと言っているような気がしたのですが、おそらく考えすぎでしょう。
 とにかく、『サクラダリセット』にも劣らない、晴れやかなお話でした。大変面白かったです。

 



次回作をとても楽しみにしております!


  1. 2013/01/27(日) 21:06:51|
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サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫) 感想

サクラダリセット7  BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA (角川スニーカー文庫)
(2012/03/31)
河野 裕

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子どものように我儘で純粋な願いを、大人のように複雑な手段で叶えた、お話



【簡略ネタバレストーリー】
 能力がなくなった世界で、ケイは学校に通った。そこには春埼の姿はなく、春埼のポジションには相麻が入れ替わるように存在していた。その世界の相麻は年相応に可愛げのある少女だった。それはケイが望む形に近い相麻の姿だった。
 一方で、春埼は持病で入退院を繰り返していたこととなっており、その日退院することとなった。その折に、ケイから電話で呼び出される。
 ケイは能力の制限がなくなったことから、外へ出て母親と再開する。母親の傍らには少女がいて、名を恵といった。ケイの本名も恵と書く。男女どちらの子どもが生まれてもそう名付けるつもりだったそうだ。
 春埼と再会したケイは、背負う者のなくなった相麻や、母親と会うことのできる世界を惜しみつつも、残された佐々野の写真に入りこむことで春埼にリセットの存在を思い出させ、リセットを使わせる。
 リセット後の世界で、相麻は会合するはずだった浦地たちから逃げ出すことにする。
 ケイは、リセット前の世界で相麻にアドバイスをされた通りに、相麻に代わって未来視を使うことにする。そのために、ケイは坂上と智樹と春埼を連れて相麻が映った写真の中に入り、未来視を行使した。
 相麻はケイが未来視を使うことで能力がなくなる未来を回避するまで、自分が捕まらないようにするつもりだった。しかし、ケイは相麻を助けることに時間を費やした。その結果、ケイの意志を智樹による伝言により村瀬へ伝えて相麻を救出した。
 ここからケイの計画が始まる。
 ケイはカラオケボックスへ、いっしょにいた春埼たちの他に岡絵里、宇川、を呼び出した。そして作戦会議が終わると、その場所へ浦地を呼び出した。
 浦地とケイは互いに自分の理想に準拠した現実的な方法を語りあったが、決裂した。浦地は加賀谷の能力でケイを捉えようとしたのだが、宇川と岡絵里の能力によって、逆に浦地はケイに捉えられることとなる。
 浦地に連れて来られた管理局員たちは宇川たちが引き付け、ケイは智樹と津川を同行させて再び浦地と対話を試みた。
 一方で、わざとカラオケボックスに残った春埼は、索引さんと加賀谷と相対していた。
 ケイは、坂上の能力で浦地の両親の能力を移し、永久起動させる方法を提案するも、浦地は能力の存在自体を否定することで、平行線をたどる。しかし、ケイが実際に呼び掛けていたのは浦地ではなく、智樹の能力を介して対話の内容を伝えられていた加賀谷であった。
 加賀谷は自らの能力で浦地の両親の時間を止めてしまったことに罪悪感を抱いていた。だから、浦地を説得するよりも加賀谷を説得するべきだと、ケイはふんだのだ。
 加賀谷はケイの思惑通りに能力の解除を望んだ。
 浦地との対立が集結した後、ケイの指示で咲楽田の外へ出ていた相麻が戻って来た。だが、彼女は咲楽田での記憶を取り戻すと同時に意識を失った。
 相麻は片桐穂乃歌の病室の隣に移されることで、彼女の夢の世界にいた。そこへ、ケイと春埼が現れる。春埼は夢の中に入る前に、ケイを盲信的に信じず、すべてを知った上でケイを信頼するために、坂上の能力を使ってケイの能力でリセットした過去を思い出していた。そして、それもでケイといっしょにいることを決意していた。
 夢の中のチルチルとミチルは相麻に協力し、ケイと春埼を分断させた。そして、相麻はケイへと自分は何者なのかと問いかけ、春埼にはケイは石になったのだと宣告し、それでも彼を愛せるのかと問いかけた。
 春埼はそれでも石を愛せると言った。そしてケイを助けるためにもリセットを自ら使おうとするのだが、相麻がケイを石にできるはずもないことに思い至り、自らがケイにとってどのような存在なのかを自覚するように相麻に言い渡されてから、二人は眠りから覚めた。
 ケイは「彼女」を「相麻菫」だと断言した。「彼女」である「相麻菫」には智樹の声が届いていたからだ。だが、そんなことより、「彼女」は「相麻菫」として「ある」のだ。それだけで、「彼女」はスワンプマンなどではなく、「相麻菫」たりえるのだろう。
 いつまでもケイのことだけを案じていた相麻に、ケイはこれからも自分を支えてくれるように頼むのだった。
 春埼より先に目覚めたケイと相麻は、互いに素直に胸の内を打ち明け、これからも手を取り合っていくことを約束し、相麻は病室を去った。
 途中から起きていた春埼は、改めてケイと会話する。春埼は相麻と友達にはなれそうになかったが、彼女を軽視することもない、対等な関係でありたいと望んだ。
 それから二人は買い物に出かける。あの雨の日に約束し、果たすことのできていなかった料理を二人で作るために。


【感想】
 話の内容を忘れないために上記のように内容を書き留めているわけですが、この物語についてはこういうのを読んで内容を思い出すよりも、ちゃんと本編を読んだ方が何倍もいいんじゃないかと思ってみたりもしてます。
 この物語は本当に大好きなお話です。
 この巻では、ケイの考えるところの、能力という人に彩りを加えてくれる力を守るために、そして春埼と相麻二人の少女を守るための闘いが描かれていました。
 能力に関する闘いでは浦地さんの頑固さだったり、加賀谷がキーパーソンになってたり、登場人物大集合だったりと、クライマックスらしい怒涛の勢いと結果がとても面白かったです。
 そして、相麻と春埼とケイの関係のまとめ。2巻の頃くらいからこの3人の気持ちが揺らぐようなことはまったくと言っていいほどありませんでした。あるとすれば、春埼がケイへの信頼と恋心に折り合いつけて、改めてケイといっしょにいたいと思えるようになったことや、ケイを守るだけの考えをしていた相麻が、ケイに助けを求めたり素直な気持ちで向き合えるようになってたところくらいですかね。
 でもなにより、この物語はケイの物語でした。能力も、相麻も、春埼も、咲楽田と外の世界も、全部彼が望んだ形にあってほしいという気持ちがなければこのようなお話にはなっていません。彼は人の幸せな姿を見たいという究極の自己中的信念があったからこそ、ここまで行動を起こせたのでしょう。そして、その例外が春埼と相麻であり、その二人のためだからこそ、彼はここまで頑張ってこれたのではないかなと思いました。
 この物語については、読んでいる内に感じることや考えることや素敵な妄想が止めどなく溢れてしまって、全部を書き切ることができません。なので、この感想を読み返しても物足りないと思います。その時はまた、この物語を読み返して、ああ、昔はここ読んでてこう感じたけど、本当はこういうことなんじゃないかな、とか自問自答できるようになってみたいですね。
 こういう大作というかしっかりした物語の最後には、「愛」がキーワードになることが多いと、個人的には感じてます。
 本当に素敵で面白い物語でした!







最終巻にしてようやく二人の表紙になっているところがニクイです
  1. 2012/12/06(木) 17:44:05|
  2. 角川スニーカー文庫
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サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫) 感想

サクラダリセット6  BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)サクラダリセット6 BOY、GIRL and ‐‐ (角川スニーカー文庫)
(2011/11/30)
河野 裕

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自分のため、誰かのために行動をする、お話



【簡略ネタバレストーリー】
 学園祭で、智樹や皆実に背中を押されたケイと春埼は、自らの想いを語り合い、それでも二人一緒にいることを選択した。
 その帰り道、相麻からの伝言で、4つのお願いを聞くことになる二人。その頃の相麻はというと、浦地と索引さんと会談しており、相麻は管理局に捕らわれる。
 ケイと春埼は相麻のお願いとして、道路わきの掃除をしていると、能力の暴走による事故が起きた。次の相麻の指示に従ってスーパーへ買い出しに出かけた。そこで偶然宇川と出会い、またしてもなんらかの能力の暴走に襲われた。それらはすべて浦地の時間を巻き戻す能力によって、能力者が能力を最初に発現する時間まで巻き戻されたことで起こっていた。ケイはそのことを非通知くんからの情報から推測した。なぜそのような事件を起こすのか。それは、浦地が能力の暴走を管理局に危険視させることで、能力自体を失くさせようとしているからだ。
 そもそも管理局の出来上がりは、3人の能力者から創設された。一人は魔女、そしてもう二人が、世界中の人から特定の記憶を消しされる能力、指定したものを失わない能力。この二つの能力を駆使して、咲良田という範囲内でなら能力の記憶を失わないよう、境界線を設置した。そしてこの二人の子供こそが浦地であり、この二人の能力を永続させるために必要だったのが、加賀谷の能力だった。
 ケイは夢の世界の相麻に相談することで情報収集をしようとしたが、チルチルとミチルに相麻は加賀谷によって止められていた。
 ケイは浦地が宇川を使って能力の暴走の危険度を跳ねあげようとしていることを推理し、村瀬に頼んで宇川を探し始めた。結果、宇川は見つかったのだが、宇川は津島に説得され、能力の暴走に見せかけて能力を使用した。宇川のような危険な能力が暴走したように見せかけたことで、管理局は境界線を閉じることが決定するだろう。これが浦地の狙い。聖なる再生、サグラダリセット、と彼は呼んだ。
 どうしようもなくなったケイは家に帰った。そこへ相麻が尋ねてくる。相麻は浦地がどうしてこんな計画をしたのか話した。浦地は能力によって父親を止めたことに罪悪感を抱く加賀谷を見て、能力は必要ないものだ、こんなのがあるから悲しむ人がいるのだ、と考えた。さらに相麻は、なぜ自分が死んだのかを話した。それは、索引さんの能力から逃れるためだ。浦地の計画を阻止しようとしたのは2年前の相麻だ。だが、ここにいる相麻はスワンプマン。だから、ここにいる相麻は相麻でありながら相麻ではない。
 一方で、ケイの心配をしていた春埼の元へ、岡絵里と浦地が現れる。浦地は春埼をケイと出会う前の時間に戻し、岡絵里に能力の使い方を忘れさせるように指示して帰って行った。浦地はそれがケイに勝つ方法だというが、岡絵里はすでにケイに助けてくれと懇願されていた。敵に助けを求められる、これ以上に勝利の証はないだろう。
 相麻は話を終えると帰って行った。その頃、浦地は加賀谷を引き連れて両親が止まっている部屋へ赴き、両親にかかった能力を解除した。
 その瞬間、ケイは能力がなくなった世界のつじつま合わせをした世界の記憶と、これまでの能力があった世界の記憶が混濁し、混乱したが、なんとか持ち直す。そして、リセットをすべく、彼は春埼のもとへ向かった。


【感想】
 演劇でうまく笑えなかった春埼が、ケイの告白を受けて笑顔を身につけたところは感慨深いものがありました。表紙の春埼の笑顔がそことつながり、とてもいい表紙になっていたとも思います。
 クライマックスらしく、大盛り上がりの内容でした。相麻の死んだ理由もようやく明かされて、とても胸の痛くなる内容でした。しかし、彼女は本当にスワンプマンなのでしょうか。智樹の能力が届いているのかどうかがカギになりそうな気が。それに浦地と加賀谷の関係が予想以上に深刻なもので、驚きました。次で終わるのは残念ですが、最高潮のままで有終の美を飾って欲しいですね。










本当のタイトルの意味を知ることができてスッキリ!
  1. 2012/11/24(土) 15:27:14|
  2. 角川スニーカー文庫
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サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫) 感想

サクラダリセット5  ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)サクラダリセット5 ONE HAND EDEN (角川スニーカー文庫)
(2011/04/28)
河野 裕

商品詳細を見る


正しい幸せを探る、お話



【ネタバレストーリー】
 ケイは、夢の中で咲良田をそっくり作りだす能力者、片桐穂乃歌を利用して、相麻を咲良田の外に連れ出したら相麻が普通の女の子に戻れるのかを検証しようとして、その能力者の情報と接触の許可を奉仕クラブとして申し入れた。対応してくれたのは索引さんという、言葉に映る色から感情や嘘を見分けられる管理局員から情報と二日間だけ夢に入る許可を得る。代わりに、夢の世界が現実世界とどう違うのかという調査を頼まれる。
 ケイと春埼は夢に入る前に、セーブをしたり学園祭の演劇の練習をしたりしていた。そこへ、野ノ尾が現れる。彼女は相麻から、夢の中には野ノ尾が会いたいと思っている人物、猫屋敷のおじいさんに会えると知らされて、自分も夢に入りたいと申し出た。ついでに相麻からの、NO.407のシナリオを読め、という伝言を受け取る。
 管理局の許可を得た3人は、片桐穂乃歌の能力の範囲内にはいり、眠りに就くことで彼女の夢の中へ入った。
 野ノ尾は早速別行動でお爺さんを探しに行ってしまったが。ケイと春埼の前に、ミチルと名乗る少女が現れて、この世界にはチルチルという神がいると教えてくれる。
 ミチルと別れた二人は待ちに出て、夢の世界には咲良田を取り囲むように白い靄が取り巻いているということと、現実の街並みとは上下左右が反転していることを感じ取る。
 一方で、相麻も夢に入っており、チルチルと会話を交わすことで、チルチルの未来を視ていた。彼女は会話をした相手の未来しか視れないのだ。
 街をうろついていたケイたちは、宇川沙々音と出会い、彼女も夢の調査をしていて、彼女が正しくないと判断した場合、彼女の生物以外を自由に操る力で夢の世界を破壊することを知らされる。
 宇川と別れた二人は夕食を食べていた。そこへチルチルから電話がかかり、夜中だからという理由で夢の中のケイの自室へ転送される。その理由は、窓の外を闊歩するモンスターだった。モンスターは街を次々と呑みこんでいった。それを見届けたケイは夢の中で眠りにつき、現実で目を覚ました。その日、野ノ尾はお爺さんに会えなかったという。
 翌日も夢に入ると、すぐにチルチルから電話が入る。彼はお爺さんの存在を知っていて、さらにチルチルが許可しなければお爺さんには会えないから、その許可と、お爺さんのいる場所を教えられる。さらに、お爺さんの能力はシナリオの写本を作ることだと教えられたケイは、相麻の伝言に関係があると思い、3人でチルチルに指定された猫屋敷へ向かった。
 しかし猫屋敷へ向かっているのはケイたちだけでなく、管理局の浦地と索引さん、加賀谷、そして宇川も向かっていた。
 一足先に猫屋敷についた3人は、お爺さんのシナリオの写本は時系列を問わず真実を書きだす能力だと教えられる。野ノ尾はそのままお爺さんと会話を続け、ケイと春埼はNO.407の写本を探しだした。しかし写本は見つからず、さらにそこで浦地たちと鉢合わせる。お爺さんはその能力から管理局の協力者になっていたのだ。その場は見逃してもらえたケイだったが、浦地はケイがなぜここにいたのか、そしてケイの目的を知ろうとするようになる。
 一方で、宇川は夢の世界がまやかしに過ぎず、そんなのは正しくないとして夢の世界の人工物をすべて消し去ってしまった。浦地たちは、収集した出来事をメモして、加賀谷の触ったものを変化させない能力で、リセットされてもメモを元に戻せないようにしてから、現実へ戻った。
 ケイは改めて白い靄と左右反転の理由を推理し、本当の夢の咲良田を白い靄の向こうに見出した。そこでチルチルによってケイと春埼は別れさせられて、ケイにはなぜこのような世界になったのかが語られた。それは、片桐穂乃歌は元々夢の世界の神様であり、夢に迷い込んだ人の願いを叶えて満足を得ていた。それだけが、現実では生きられなくなった彼女の他者との繋がりを実感できるものだった。しかし、猫屋敷のお爺さんには願いを叶えさせてはもらえずに、自分の存在の否定をしてしまい、彼女は自分をミチルと思い込むようになる。神ではなくなった彼女は、自分を襲うモンスターと偽物の神のチルチルを作り出し、偽物の他者と繋がり続けられる自分だけの楽園を作り出した。それを聞いたケイは、彼女に他者とのつながりを持たせる代わりに、相麻のシミュレーションと、シナリオをもらうことを要求し、受諾させた。シナリオには、咲良田が出来上がった過程が描かれていた。
 一方で春埼は、相麻を救おうとするケイを助けたい気持ちと、ケイに自分だけを見ていてほしい気持ちとの相対を、チルチルに突き付けられる。春埼はリセットも越えてケイに必要となる人物を目指すと言って、チルチルを退ける。
 一方で、野ノ尾はお爺さんがもう現実で生きられないことを知らされる。
 3人が現実に戻ると、片桐穂乃歌は能力の使用を止めそうになって、死にかけていた。そして、ケイと春埼はリセットをした。
 リセット後の未来で、ケイはミチルの友達になろうとした。逆にチルチルはミチルを突き放した。その頃、野ノ尾はお爺さんに頼みごととして、ミチルの友人になって欲しいと頼んだ。チルチルによってモンスターと対峙させられたケイとミチルは逃げ回っていたのだが、突然ケイがミチルを突き放した。彼女は誰からも必要とされなくなったのだと思ったが、そこでお爺さんという他者との繋がりを得た。それによって、再び彼女は神に戻った。
 その後、ケイは夢で相麻と出会い、相麻が咲良田の外へ出たくないことを知らされて、彼女を外に連れ出すことを断念する。また、今回ケイにシナリオを読ませるために、春に野ノ尾と出会わせていたのだとも言った。
 一方で、現実に戻っていた浦地へ相麻から電話が入る。それは、管理局との交渉と、ケイを調べることで自分を調べようとするのをやめさせるためだ。彼女は2代目魔女と名乗り、交渉させるために、浦地が咲良田自体のリセットを企んでいる事を知っていると言う。そして、三日後までに結論を出しておけと言って、電話を切った。




【感想】
 今回もまた素晴らしく綺麗な物語でした。
 この作者の、ワンハンドエデンや幸せの青い鳥などといった、比喩やモチーフを使った表現が本当に好きです。
 春埼がせっかく自分の進もうと思える道を見つけることができたのに、それをリセットせざるを得なかったところのジレンマがなんとも云えなかったですね。その代わり、相麻と春埼がライバル認定し合う結果となったので、これはこれで面白いかも。
 とはいえ、何といっても今回の主役は野ノ尾でしょう。
 なに、これ。超かわいいんだけど。1巻の時点で十分だったのに、短編はさんで今回の話しが来ると、もうたまりませんね。お爺さんにだけは積極的になる彼女がとても健気でした。
 これまでに、ケイが管理局にマークされる原因となった事件らしいのは、3巻の事件っぽいですが、あれには春川が関わってないので、それ以外にもあるのでしょうか。
 次回は管理局の出来上がりが描かれそうなので、相麻の目的と管理局の動きがどう絡み合うのか楽しみです。













村瀬がもう便利道具状態に…
  1. 2012/10/27(土) 23:01:15|
  2. 角川スニーカー文庫
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※備忘録としても使っているので、ネタバレを含む内容となっているところがあります。
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